現代に求められる4つのマネジメントスキルと身につけ方や研修を解説
急速なITの進展やグローバル化により、企業を取り巻く環境は大きく変化しています。企業の持続的発展には、従業員一人ひとりの能力を活かし、組織力の強化を図る必要があるでしょう。
これらのことから、近年、多くの企業があらためてマネジメントスキルの重要性に着目しています。本記事では、マネジメントスキルとはなにか、マネジメントスキルの身につけ方や関連する資格一覧などについて解説します。
マネジメントとは
「マネジメント(management)」とは、経営や管理などを意味する言葉です。これがビジネスシーンに転用され、企業においては経営管理や組織運営などを意味する言葉として用いられるようになりました。
「マネジメント」の概念は、アメリカの経営学者、ピーター・ドラッカーが、1973年に刊行した著書『マネジメント』の中で言及したことから世界的に注目を集めました。
日本では、管理職層が部下や業務を管理することを指す言葉として一般的に使用されています。
つまり、日本におけるマネジメントとは「チームの目標を達成するために、経営資源を有効活用して、ステークホルダーから期待されている成果を挙げること」や「メンバー一人ひとりの個性や能力を把握して、動機付けをおこない、仕事を通して部下を成長させること」といえるでしょう。
マネジメントスキルとリーダーシップの違い
マネジメントスキルと混同されやすいものにリーダーシップがありますが、マネジメントスキルとリーダーシップでは役割が異なり、また互いをサポートする関係にあります。
リーダーシップとは、組織の中で目標を定め、組織を維持しながらメンバーを導いていくことを指します。指導力や統率力と表現されることの多いリーダーシップは、部下や業務を管理するマネジメントスキルとは似て非なるものです。
優れたマネージャーは「マネジメントスキル」と「リーダーシップ」の両方をバランスよく発揮しています。たとえば、計画をしっかり立ててチームを動かすだけでなく、「なぜこの仕事をするのか」という意味づけや動機づけもおこなうことで、チームの力を最大限に引き出すことができます。
マネジメントの役割
マネジメントの目的は、設定した目標に沿って組織を運営することにあります。このために、マネジメントは組織の目標や案件、プロセスを管理して、目標を達成するという役割を担います。
ドラッカーは、マネジメントの役割は具体的に次の3つとしています。
ミッションの達成
マネジメントは、各組織・チームで設定された目的とミッションに沿って、経営資源を有効活用しながらミッション達成を目指すことを役割としています。チームやメンバーを適切に管理することにより、組織力を高め、成果をあげて組織の持続的な発展に貢献します。
組織・チームのメンバーを活かす
組織で働くメンバーを活かすこともマネジメントの大きな役割の一つです。組織で働くメンバーが、組織内で活躍し自己実現に近づけるよう、場と業務を提供します。
そのためには、マネジメント層によるメンバーへの理解が不可欠です。メンバー一人ひとりの個性や能力を生かせるよう、それぞれに合わせた業務を割り振ります。
社会貢献
企業のミッション達成のために、組織やチームで設定した目標を、適切なマネジメントを通して達成することは、社会貢献にもつながります。
企業は、利益向上を図るためにも、その時々のニーズにマッチする商品やサービスの開発・提供をおこないます。それらに携わる組織・チームがよりよい商品やサービスを開発・提供することができれば、多くのユーザーに喜ばれるものをリリースできます。
個々人が能力を発揮できる組織・チームでは相互作用によってイノベーションが生まれ、社会に貢献する新しい事業を展開できる可能性もあります。
マネジメントに必要な4つのスキル
組織やチームの力を最大化するために、マネジメント層が身につけておきたいマネジメントスキルは次のとおりです。
意思決定力
マネジメント層には、重要な場面でも冷静かつ適切な判断と意思決定をおこなえるスキルを身につけることが求められます。物事の判断と意思決定をおこなう決定者の判断の軸がぶれてしまったり、あわてふためいてしまったりしては組織・チームを導くことは難しいでしょう。
組織の目標に沿った明確なビジョンを持ち、しっかりとした判断の軸を持つことも重要です。
コミュニケーションスキル
メンバーの管理においては、高いコミュニケーションスキルも求められます。メンバーに組織・チームの目標やミッションを提示し、それらに向かう方法を示す際には、一方的に伝えるのではなく双方向のコミュニケーションを意識することが大切です。
また、メンバー一人ひとりの個性や能力を把握して、動機付けをおこない、仕事を通してメンバーを成長させるためには、対話による相互理解が重要であることから、コミュニケーションスキルはマネジメント層に必須の能力といえるでしょう。
管理能力
マネジメント層は、目標に対して適宜効果測定をおこない、組織が適切に機能しているか、組織構成や業務の振り分けは適切か、業務の質を担保できているかなどの観点から検証をおこなう必要があります。
そのためには、メンバーや業務の状況を把握し、適切に管理することが求められます。また、効果測定の後はメンバーにフィードバックを実施して、それぞれが強みを発揮できる環境を整え、目標達成を目指します。
分析スキル
経験や勘といった定性的なデータのみに頼らず、定量的なデータを分析し、その結果をもとに戦略立案をおこなうスキルも必要です。目標達成に向かい、課題を解決していくためには、具体的にどのような課題があり、どう改善するのかを提示する必要があります。
成果を最大化させるために、データをもとに改善に取り組み、取り組みについてのデータを検証してPDCAを回しましょう。
マネジメントスキルの身につけ方
マネジメントスキルは、知識だけでなく「実践と経験」を通じて身に付けていくものです。ここからはマネジメントスキルを高めるために、段階的なアプローチ方法を紹介します。
基本知識の習得(インプット)
まずは「マネジメントとはなにか」を知るところからスタートです。ビジネス書・マネジメント本を読んで独学で知識を得ることのほか、社内外のオンライン講座・研修を受ける、フレームワークを学ぶが上げられます。
ここでのポイントとしては、マネジメントスキルの「理論を知ること」ではなく「現場で活かせる視点を得ること」を意識しましょう。
ただし、管理職になってから基礎知識をインプットし、自己の配下で実践する事は、最適な方法を取捨選択できない可能性があります。
特に、経験値がないなかで得た知識を利用する場合、配下のスタイルに合わせた管理・指導が行えない可能性があり、マネジメントラインの関係性構築に亀裂を生むでしょう。
マネジメントを経験する
先述したとおり、管理職になってから求められる知識習得や経験値を積んでいくことは、あまりお勧めできません。管理職にならなければマネジメントを経験できないわけではありません。
たとえば、プロジェクトリーダーを引き受ける、後輩のOJTを担当する、社内イベントの企画・進行を担う、部内で業務改善の進行役になるなど身近が所で小さな経験を積むことが可能です。
フィードバックを受ける
自分では気づきにくい「マネジメントのクセ」や「足りない視点」は、他者からの意見で見えてきます。
たとえば、直属の上司や同僚からアドバイスをもらう、1on1やレビューの場で意図的に質問する、評価面談のフィードバックを記録・分析するなどです。
「なにができたか」だけでなく「なぜうまくいった/いかなかったか」を深掘りすることが重要といえます。
マネジメントスキルの身につけ方
ある程度の経験値を身につけ、管理職となった場合は、組織内の役職や経験レベルに応じたマネジメント研修の実施も重要になってきます。マネジメント研修は、その目的や対象者、内容によって様々な種類に分けられており、管理職個人の能力開発だけでなく、組織全体のパフォーマンス向上に不可欠なものとなっています。
ここでは、管理職研修を「新任管理職向け研修」「既存管理職向け研修」「上級管理職向け研修」に分けてご紹介します。
新任管理職向け研修
新任管理職向けの研修は、初めて管理職やチームリーダーになる人、昇格したばかりの人などを対象にしており、プレイヤーからマネージャーへの意識転換を目的にしています。
新任管理職が陥りがちな状況として、「自分が成果を出そうとしてしまう」ことがあります。そのような状況では、生産性の低下や人材の流出、業績不振の可能性が高まるなど、組織へのマイナスな影響が出てしまうでしょう。研修では、「チームとして成果を出す」ために管理職が押さえておくべき役割について、座学やロールプレイング、ディスカッションなどを通じて実践的な練習の機会が設けられています。
既存管理職向け研修
既存管理職向けの研修は、管理職1〜5年目や管理職候補を対象にしており、管理職に求められるスキルや視座・視野・視点を実践に結びつける研修内容となっています。
こちらの研修では、管理職に求められる知見やスキルを理解し、自身がどれだけスキルを発揮できているのか自己認識させるほか、具体的なケーススタディや自部署の課題を持ち寄って議論する演習、他部署の管理職と交流を通じて、組織横断的な移転を養う機会にもなっています。
上級管理職向け研修
上級管理職向けの研修は、将来の経営幹部候補や新任役員を対象に、経営的視点の習得、組織全体の最適化などが学べる高度で戦略的な内容の研修です。具体的な内容は多岐にわたり、外部のビジネススクールや専門機関が提供するケースメソッド、シミュレーション、ディスカッション、著名な経営者による講演などが取り入れられています。
これからのマネジメント層に必要な3つの要素
企業を取り巻く環境が激変している昨今、マネジメント層へのニーズにも変化が見られます。ここからは、これからのマネジメントに必要な3つの要素について解説します。
1.部下一人ひとりにマッチする育成
マネジメント層の重要な業務の一つに、部下の指導と育成があります。従来、部下の育成においては、経営層の決定により育成方針が定められることが一般的でした。しかし、市場のグローバル化によって、画一的な育成だけでは企業の競争優位性を保つことが難しくなっているのが現状です。
そこで必要になるのが、部下一人ひとりに合わせた育成です。これにより、多様な人材を育成し、企業の成長につなげられる可能性があります。
部下一人ひとりに合わせた育成をおこなうためには、現状と将来のキャリアを見据えた指導・育成が重要です。
2.新事業の企画立案
外部環境やニーズが激しく変化している現代の状況に、企業は柔軟に対応していく必要があります。
その際に必要となるのが、新規事業の立案です。マネジメント層は、情報感度を高く持ち、これからの時代にマッチする新規事業や仕組みを企画・立案することが求められています。
3.働き方の多様化への対応
労働人口の減少が見込まれる中、ライフイベントによらず働き続ける環境を構築することは急務といえます。マネジメント層は、出産や介護によって休業したメンバーや、退職したシニア層が現場に復帰して活躍できる環境づくりに取り組むことが重要です。
このような対応をおこなえるマネジメント層を育成するために、企業はマネジメント研修の強化などを実施して、多様な人材が活躍できる組織作りを進めましょう。
マネジメント層への育成が組織力の向上につながる
適切なマネジメントによって従業員一人ひとりの力を引き出し、相互作用を生み出すことができれば、生産性向上や業績向上が期待できます。
そこで重要になるのが、マネジメント層の育成です。これからの時代に求められるマネジメントスキルを身につけてもらうために、マネジメント層向けの研修などの教育を検討してみましょう。