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コーポレートガバナンスとは?強化するうえでの注意点や基本原則も解説

2023年06月21日更新

企業がステークホルダーの利益を考えながら経営をするためには、透明性の高い公正な判断が求められます。経営層がそういった判断ができているかどうかを客観的に監視する仕組みを「コーポレートガバナンス」とよびます。

本記事では、企業にとってコーポレートガバナンスが重要な理由、コーポレートガバナンスを強化する際にどういった点を押さえておくべきなのか、コーポレートガバナンス・コードの基本原則もあわせて詳しく解説します。

目次 【表示】

コーポレートガバナンスとは

コーポレートガバナンスは日本語で「企業統治」という意味に訳されます。

企業の経営を担う経営層は、株主や自社の社員、顧客、取引先など、あらゆるステークホルダーの利害を考えたうえで意思決定をしなければなりません。

そこで、組織での不正や不祥事を防ぎ、透明性が高く公正な経営をおこなうために、社外取締役の任命や対外に向けた適切な情報開示などをおこないます。このように、企業自らが自社の経営を監視・統制する仕組みのことをコーポレートガバナンスとよびます。

内部統制との違い

コーポレートガバナンスと混同しやすい言葉に内部統制があります。

組織での不正や不祥事を防ぐという部分では共通しますが、内部統制は社員が不正をおこなわないよう社内にて監視、管理するための仕組みであるのに対し、コーポレートガバナンスは株主や取締役会などが経営者の不正や暴走を防ぐための仕組みであるという違いがあります。

企業にとってコーポレートガバナンスが重要な理由

なぜ多くの企業ではコーポレートガバナンスの強化に取り組んでいるのでしょうか。その背景を見てみると、企業にとってコーポレートガバナンスが重要とされる理由が見えてきます。

企業の不祥事を未然に防ぐため

粉飾決算やリコール隠し、労働基準法を無視した長時間労働、ハラスメント行為の横行などが明らかになるケースが増えてきました。

このような行為は、管理体制の不備や行き過ぎた成果主義などによってもたらされていると考えられます。

また、企業が不祥事を起こすことで顧客や消費者などに不利益をもたらす、信頼性を失うといった社会的な影響を与えることがあります。それらは大きな損害となり、ステークホルダーの利益も損なってしまうでしょう。そのため、コーポレートガバナンスを強化し、わずかな不正も逃さない仕組みや管理体制を備えておく必要があるのです。

グローバル化が進む社会で企業の競争力を向上させるため

経済のグローバル化が進んだ現在、企業の株式は日本人投資家だけでなく海外の投資家にも多く売買されるようになりました。

しかし、透明性の高い公正な経営が行われていないと、企業として投資家からの信用を得られず、資金調達に苦労する可能性もあります。

グローバル化が進むなかで十分な資金を調達し、自社の競争力を高めていくためには、コーポレートガバナンスを強化し、投資家からの信用を得ることが企業に求められます。

金融庁と東京証券取引所が「コーポレートガバナンス・コード」を定めたため

企業統治を実現するための具体的な行動規範の原則・指針として、金融庁と東京証券取引所は上場企業を対象とした「コーポレートガバナンス・コード」を取りまとめました。
2015年6月から適用され、その後2018年および2021年に改訂されました。

コーポレートガバナンス・コードを定めた背景には、企業経営の透明性を確保し、日本全体の中長期的な経済成長を促進する狙いがあります。

現状、コーポレートガバナンスは法律によって定められているものではありませんが、大企業をはじめとして多くの企業が強化に取り組んでいます。

5つの基本原則から構成されるコーポレートガバナンス・コード

金融庁と東京証券取引所が取りまとめた「コーポレートガバナンス・コード」は5つの基本原則から構成されています。
これらは具体的にどういった内容なのか、詳しく解説しましょう。

1. 株主の権利・平等性の確保

株主には企業の利益分配を受ける権利や株主優待を受ける権利はもちろん、経営権や企業が保有する資産の所有権などもあります。これらの権利が実質的に確保され、適切に行使できるように環境を整備すべきとしています。

また、少数株主や外国人株主はに平等性が担保されにくい傾向があることから、十分に配慮することも定めています。

2. 株主以外のステークホルダーとの適切な協働

社員や顧客、取引先、債権者、地域社会などのステークホルダーの貢献によって、企業は持続的な成長と中長期的な企業価値の創出が実現できると認識し、ステークホルダーの権利を守りながら、お互いが利益をもたらすよう適切に協働していくことが求められます。

3. 適切な情報開示と透明性の確保

企業の財政状態や経営成績などの財務情報、リスクやガバナンスに関連する情報などの非財務情報についての法令に基づく開示をおこなうことに加えて、法令には定められていなくても投資の判断基準となる情報は株主に対して公開することが求められます。

特に、企業と株主との間で建設的な対話を行うためには、とりわけ非財務情報を正確かつ分かりやすく有用性が高いものとして開示することが重要としています。

4. 取締役会等の責務

取締役会は株主に代わって権利を行使する受託者責任と、株主に対する説明責任を負っています。そのため、企業の持続的成長と中長期的な企業価値の向上、資本効率の改善を図るために企業戦略の方向性を示すことや、経営陣を客観的な視点から監視すること、経営陣幹部による適切なリスクテイクを支える環境整備をおこなうことが求められます。

具体的には、監査役が権限を行使したり、適切な人材を社外取締役として選任し、経営陣を監視・監督したりといったことが挙げられます。

5. 株主との対話

株主総会以外においても株主の声に耳を傾け、建設的な対話を実施すべきとしています。また、経営者は自社の経営方針について、株主を含むステークホルダーに分かりやすく説明して理解してもらい、それを踏まえた適切な対応に努めるべきとしています。

具体的には、投資家向け説明会の実施やインターネットからの意見募集などが挙げられるでしょう。

コーポレートガバナンスを強化するうえでの課題と対策

コーポレートガバナンスを強化するにあたっては、どういった課題があるのでしょうか。また、それらを解決するための対策の一例も紹介します。

内部統制の強化が疎かになっている

冒頭でコーポレートガバナンスと内部統制は異なると説明しましたが、どちらも不正を防ぎ、公正な企業経営を目指すという点では共通します。

そのため、コーポレートガバナンスに注力しようとしても、内部統制の強化が疎かになっているとコーポレートガバナンスの強化にも影響を与えることが懸念されます。

内部統制の強化の方法としては、社員にコンプライアンスに沿って行動することやリスク管理の徹底を求めること、業務プロセスの可視化による社員の業務内容の把握など、不正を未然に防ぐ社内ルールや体制の構築が重要となります。

社内体制の構築に時間やコストを要す

意思決定プロセス・経営戦略などの情報開示には、専門の部署を設けるなど社内での体制を構築したうえで取り組む必要があります。

しかし、体制の構築には時間やコストがかかるほか、どのような指標で成果を測ればよいのか分からないケースも少なくありません。

それらの課題を認識したうえで、スモールスタートを心がけ、一つひとつの課題に向き合っていくことが重要といえます。

社外取締役や社外監査役の人材不足

社外取締役や社外監査役を新たに招き入れることも、コーポレートガバナンスの強化に向けて有効な方法のひとつです。

しかし、専門的な知識や経験を備えたふさわしい人材が見つからず苦労する企業も少なくありません。

ヘッドハンティングやマッチングサービスなど複数の採用方法を組み合わせるほか、多様な人材の採用にも目を向けてみましょう。

子会社や関連会社へコーポレートガバナンスが浸透しにくい

親会社のグループに含まれる子会社や関連会社が存在する場合、親会社のみがコーポレートガバナンスに取り組んでいてもグループ全体に浸透していかず、株主から求められるグループ企業としての価値向上という期待に応えられないことが考えられます。

グループ全体の企業価値を向上していくためには、会社ごとに独自でコーポレートガバナンスに取り組むのではなく、グループ全体として取り組むことが重要といえるでしょう。

グループ共通のコーポレートガバナンスを策定することはもちろん、必要に応じて子会社や関連会社へ権限を委譲したうえで監査を実施するなどの具体策も考えられます。

コーポレートガバナンスを強化し、競争力向上や持続的な成長を実現させよう

コーポレートガバナンスを強化することは、企業の不祥事を未然に防ぐためだけでなく、経営の透明性を確保し、ステークホルダーからの信頼を得るためにも重要な取り組みです。

投資家を含めてさまざまなステークホルダーからの信頼を得られれば、資金調達がしやすくなるなどのメリットがあります。

企業の競争力を高め、持続的な成長を実現するためにもコーポレートガバナンスを強化していきましょう。

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