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課題解決力はどう鍛える?基本の4プロセスと育成方法を解説

2025年08月20日更新


企業が目標を達成するためには、状況に応じた課題の発見と解決が欠かせません。そのため、社員には自ら課題を認識し、解決に向けて主体的に行動する能力が求められます。こうした能力は「課題解決力」と呼ばれます。企業が社員の課題解決力を鍛えるためには、どのような方法が有効なのでしょうか。

本記事では、課題解決力とはなにか、課題解決力が高い社員の特徴、課題解決力の高い社員が企業に求められる理由、課題解決に向けた4つのプロセス、課題解決に役立つフレームワーク、社員が課題解決力を身につける方法・手段を紹介します。

目次 【表示】

課題解決力とは


ビジネスにおける「課題」とは、目標と現状とのギャップのことを指し、課題を解決するということは、目標と現状とのギャップを埋めることを意味します。すなわち、課題解決力を一言で表すと、「目標と現状とのギャップを明確にしたうえで、そのギャップを埋めるために実効性の高い解決策を立案できる能力」を指します。

業務において抱えている課題の背景には、さまざまな原因や要因があるものです。そのなかで、表面的な原因の背後にある、真の原因(真因)を正しく認識することが課題解決の第一歩となるでしょう。

課題解決と問題解決との違い

課題解決と似た意味をもつ言葉に問題解決がありますが、そもそもビジネスにおける「問題」と「課題」は以下のように異なる概念です。

  • ・問題…自社への不利益や悪影響に直接つながる状況や事象
  • ・課題…目標(あるべき姿や理想)と現実のギャップ

問題解決では、現時点で顕在化しているネガティブな事象に対処するために、短期的かつ対症療法的なアプローチがとられることが多いです。一方、課題解決では、将来に向けてあるべき姿とのギャップを埋めるために、中長期的な変革が求められることが多いでしょう。

ビジネスでは、日々直面する現象が「問題」なのか「課題」なのかを正確に見極め、それぞれに適したアプローチを実行することが重要です。

課題解決力と課題発見力の違い

経済産業省が提唱する「社会人基礎力」の一つにも位置づけられている「課題発見力」は課題解決力と密接な関係にありますが、その能力は異なります。課題解決力とは、すでに明確になっている課題に対して、実行可能な解決策を考え、実行に移す力のことを指します。

一方、課題発見力とは、課題がないとされる状況でも、現状を分析し、未来を見据えて自ら新たな課題を見つけ出す力を指します。課題発見力は「解くべき問いを見つける力」、課題解決力は「問いに答える力」と表現でき、どちらも相互に補完し合う能力となります。

なお、課題解決のプロセスのなかで主体的に課題を見つけ出す場面もあるため、状況によっては課題発見力が課題解決力に含まれる場合もあります。そのため、両者は分けてとらえるだけでなく、一体的な関係性があることも意識する必要があるでしょう。

課題解決力が高い社員の特徴

パソコンを操作しながら考える様子
課題解決力の高い社員にはどういった特徴が見られるのでしょうか。大きく分けると以下のような特徴が挙げられます。

課題を客観的にとらえられる

現状と目標とのギャップを冷静に分析し、表面的な事象にとらわれず真因を見極める力があります。原因を的確に把握することで、原因に対する適切なアプローチができ、効果的な対策につながります。

解決策を論理的に考えられる

仮説と検証の視点を持ち、筋道を立てて解決策を構築します。感情や思い込みに左右されず、根拠やデータにもとづいて考えられるのが特徴です。

柔軟に実行し改善できる

解決策を計画的に実行しつつ、状況の変化や新たな課題に応じてPDCAサイクルを回す柔軟性を発揮します。結果を振り返り、次の改善につなげる姿勢も持ち合わせています。課題の真因を見極められることはもちろんですが、論理的かつ柔軟な思考で解決策を考え、実行できる社員こそが課題解決力が高い社員といえるのです。

課題解決力の高い社員が企業に求められる理由


人材採用や人材育成において、課題解決力を重視する企業は少なくありません。企業が採用候補者や社員に対して課題解決力を求める背景にはなにがあるのでしょうか。

将来の予測が困難な時代に突入したため

経済のグローバル化やIT技術の進歩などによって、将来の予測が困難な時代へと突入しています。加えて、時代の変化とともに人々のライフスタイルは多様化しており、商品やサービスのニーズも画一的なものではなくなってきている現状があります。

こうした変化から、企業ではこれまでに直面したことのない課題にぶつかることも少なくないでしょう。そのような事態に企業が臨機応変に対応していくためにも、課題の真因を正確にとらえ実効性の高い解決策を立案・実行できる課題解決力が求められています。

サービス品質向上のため

競争が激化する市場のなかで、自社が継続的に成長し続けるためには、サービス品質を高めることは重要なポイントといえるでしょう。そのためには、市場の潜在的なニーズを的確に把握し、要望に応えていく必要があります。

課題解決力が備わっていれば、現在提供している商品やサービスについて顧客からクレームや要望が直接届いていなくても、自発的に課題を見つけ、自社で品質改善に向けた検討ができるようになるでしょう。また、クレームが届いた場合にもその真因をスピーディーに突き止め、改善すべきポイントを絞り込んで素早く対応できるようになるはずです。

その結果、他社に先駆けてサービス品質の向上が実現でき、それによって顧客からの信頼を獲得し、売上アップにもつながっていくことが期待できます。

課題解決に向けた4つのプロセス


実際に課題解決に取り組む際、どのような手順を踏んでいけばよいのでしょうか。4つのプロセスに分けて解説します。

1. 課題の認識

まずは目標と現状とのギャップを把握し、課題を明確に認識します。たとえば、「営業成績が目標に到達できていない」といった漠然とした把握にとどまらず、「営業成績が目標に対して10%足りない」といったように、定量的・具体的に状況を把握することが重要です。

すでに発生している課題であれば認識しやすいですが、違和感やわずかな不具合など、あいまいでとらえきれていない課題であれば、はじめに課題を顕在化させ認識する必要があります。また、なにも課題が見えていない現状のなかから、より良い状態を目指すために主体的に課題を見つける場合もあります。

2. 原因(真因)の探求

なぜその課題があるのか、課題を構造化して真の原因を探求し突き止めます。たとえば、営業成績が目標に到達できていない原因としては、「訪問件数が少ない」「客単価が低い」「受注率が低い」といったことが考えられるでしょう。

課題を構造化するには、「MECE」、「ロジックツリー」、「帰納法と演繹法」などといった手法があります。それぞれの手法については後述の「課題の構造化に役立つフレームワーク」で紹介します。

3. 解決策の立案

課題の原因を解決するために、どういった方法を用いるべきか、具体的な方法や策を考えます。たとえば、提案後の受注率が低い原因として営業トークに問題があると考えられる場合には、営業トークの見直しや商品知識の強化といった解決策が考えられます。

なお、解決策の立案にあたっては、「ブレインストーミング」、「KJ法」などの手法が用いられます。それぞれの手法については後述の「課題の解決策を考えるときに役立つフレームワーク」で紹介します。また、立案した解決策には取り組む優先順位をつけていきましょう。時間や資源は限られているため、判断基準を設け、実行する解決策を絞り込んでいくことが重要です。

4. 解決策の実行・検証

解決策が立案できたら、PDCAサイクル(Plan・Do・Check・Act)にもとづいて、具体的な計画に落とし込み、実行、評価、改善のプロセスを通じて検証していきます。

とくに重要となるのが評価と改善のプロセスです。評価では、解決策の実行にあたって良かった点と悪かった点を客観的に分析する必要があります。また、改善では、新しい解決方法を発想することや、状況に応じて柔軟に軌道修正を図ることも重要です。

課題の構造化に役立つフレームワーク

パソコンを操作しながら考える様子
課題の構造化に役立てられるフレームワークを以下で紹介します。

MECE(ミーシー)

MECEとは、「Mutually Exclusive & Collectively Exhaustive」の頭文字をとったもので、「モレなくダブりなく」を意味します。

結論を出すにあたって、情報を重複や抜けのない状態でチェックする際に用いられるフレームワークです。課題の要素を分類・整理する際に、見落としや混同を防ぎ、課題の全体像を把握するための前提として活用されます。

ロジックツリー

ロジックツリーは、物事を論理的に整理し、表現するためのフレームワークです。

課題をツリー状に分解して整理することが特徴です。課題解決においては、主にWhatツリー、Whyツリー、Howツリーを使用します。課題の要因を深掘りして原因を特定したり、解決策の選択肢を構造的に洗い出したりする場面で効果的です。複雑な課題を段階的に整理し、論点の明確化を図るのに役立ちます。

帰納法と演繹法

課題を構造的にとらえるためのフレームワークとして、「帰納法」と「演繹法」があります。

帰納法は、個々の観察事項から共通点を見つけ出し、結論を出す思考法。多くの情報を観察・整理することで、課題の本質を浮かび上がらせるのに役立ちます。一方、演繹法は、一般的な観察事項をもとに、論理を順序立てて説明する方法です。課題に対する原因や必要な対応策を整理する際に有効です。

課題解決策を考えるときに役立つフレームワーク

新人に対して資料を指さして業務を指導する様子
課題解決策を考える際には、以下のフレームワークを用いると、より有効な解決策を導き出しやすくなります。

ブレインストーミング

課題解決策を考えるときに役立つフレームワークとして「ブレインストーミング」があります。

ブレインストーミングとは、複数人で自由に意見やアイデアを出し合う手法で、他人の意見を批判せず、多様なアイデアを集めることが特徴です。これにより、通常では気づかない新しい発想や解決策の発見につながります。

ブレインストーミングの詳細はこちらをご覧ください。

KJ法

KJ法は、複数のアイデアを関連性にもとづいて整理・統合し、課題解決のヒントを導き出すためのフレームワークです。アイデアをカードに書き出し、グルーピング・視覚化・文章化のステップを通じて構造化することで、多様な意見や視点を整理し、解決策の方向性を見出しやすくなります。

とくに、先述のブレインストーミング後のアイデア整理に有効です。

社員が課題解決力を身につける方法・手段


社員に課題解決力を身につけてもらうためには、どのような方法が有効なのでしょうか。一例を紹介します。

日常の業務への落とし込み

業務フローのなかでの課題を社員に意識してもらうことで、普段の業務を通して課題解決力を身につけられます。マニュアル通りに行っている業務も、より効率的な方法はないか、ムダはないかを意識的に考えることで現状の課題が見えてくることもあるでしょう。

また、業務のなかで課題を認識したとき、部署やチーム全体で課題の真因を考え、自分なりの解決策を提案してもらうことも課題解決力を身につける訓練として有効です。

コーチングによる主体性の促し

コーチングとは、相手の考えを引き出しながら、自発的な行動や成長を促す人材育成の手法です。指導者が一方的に教えるのではなく、対話を通じて気づきを与え、本人のなかにある答えや可能性を導き出します。

社員が自ら課題に向き合い、解決策を考え抜く力を育むには、指導者が答えを教えるのではなく、問いかけや観察を通じてサポートする姿勢が求められます。たとえば、「なぜそう考えたのか?」「他にどんな方法が考えられるか?」といった問いを重ねることで、思考の深掘りが促されます。

また、良い点を見つけて肯定的にフィードバックすることで、前向きに考える習慣が身につき、課題に対して積極的に考え、行動に移す主体性にもつながります。

挑戦しやすい風土づくり

課題解決力を実践的に育てるためには、社員が思い切って行動に移せる風土づくりも重要です。課題に対して仮説を立て、行動し、結果を見て次のアクションにつなげるというサイクルは、一定の挑戦と失敗を通じて磨かれていきます。そのためには、失敗を責めるのではなく、挑戦した姿勢やプロセスを評価する文化が必要です。

たとえば、意見を出すことを歓迎されるチームや、失敗してもサポートしあえるチームなど、改善に向けた振り返りの機会が定期的に設けられている職場では、社員は自らのアイデアを試しやすくなるでしょう。

課題解決に向けた計画力を身につけてもらう

課題解決に向けた計画を立てていても、想定外の事象やトラブルが発生し計画通りに対応できないこともあるでしょう。こうした事態に柔軟に対応するためには、「業務プロセスのなかで起こり得るリスクと対応策を具体的に考えるトレーニング」が有効です。

具体的には、社員に対し、日々の業務を以下の4つの観点で整理してもらいましょう。

  • ・人(関係者のスキルが足りているか・体制や連携の不備はないか)
  • ・設備やシステム(使用するツールは十分か、システムの不具合がないか)
  • ・モノや情報(必要な物や情報の遅れ、間違いがないか)
  • ・方法や手順(手順ミスや認識のズレがないか)

各フェーズにおいて、これらの視点から「どんなリスクがあるか」「それにどう備えるか」を検討し、整理してもらうことで、実践的な計画力が身につきやすくなります。このような訓練を重ねることで、予想外の事態にも落ち着いて対応できることにつながり、結果として課題解決に向けた行動力と判断力の向上も期待できます。

自律的な学習環境の整備

課題解決力に必要な考え方やプロセスを身につけるためには、社員自らが積極的に学び続けられる環境づくりが重要です。

その一環として、外部の研修会社が提供する研修・講座への参加は手段のひとつに挙げられます。これらのプログラムでは、新入社員から管理職まで幅広い層を対象とし、課題解決力を総合的に鍛える研修が提供されます。加えて、論理的思考力の強化、解決策実行のための段取り力など、受講者の状況に合わせて個々の能力を育成する研修を提供することも方法のひとつです。

また、企業側が書籍購入費の補助やオンライン講座といった選択肢を用意しておくことで、意欲のある社員が自主的な学びを深めることも可能となります。研修・講座の実施と自律的な学習支援は表裏一体の取り組みといえ、社員が自身の課題意識にもとづいて適した学習機会を得られる環境づくりが重要です。

VUCA時代に求められる課題解決力を鍛えよう


将来の予測が難しく変化が激しいVUCA時代において、企業の競争力向上には、状況を客観的に捉え、論理的に解決策を考え、柔軟に行動・改善できる、課題解決力の高い社員の存在が重要です。
課題解決に向けては、今回紹介した4つのプロセスを踏まえることが大切です。さらに、MECEやロジックツリーといったフレームワークを活用すれば、課題の構造化がしやすくなり、解決策の発想を広げられます。

こうしたスキルを身につけるためには日常業務のなかでの訓練はもちろん、コーチングや自律的な学習環境など、企業側が社員の課題解決力を高めるための環境を整えることが求められます。加えて、外部の研修や講座の活用も有効な手段となるので検討してみましょう。

著者プロフィールHR Trend Lab編集部
タレントマネジメントやエンゲージメントなどの最新トレンドから、組織や人事にまつわる基本知識までマイナビ独自の視点でお届けいたします。
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