レジリエンスとは?折れない心で逆境もパワーに
逆境や困難を乗り越える力を指す「レジリエンス」というワードを、ご存知でしょうか。元々は物理学用語「ストレス(外部からの力による歪み)」の反対語。跳ね返りや弾力といった意味の用語でしたが、心理学でも同じ意味で使用されるようになりました。
ストレス対処にも有効とされるレジリエンスは近年、後天的に習得可能な能力として、ビジネスパーソンの能力開発にも活用されています。ここではレジリエンスによって期待できる効果や高める方法の一部を紹介します。
レジリエンスとは
ビジネスの世界でもトレンドとなっている、レジリエンスが持つ意味をおさらいします。
逆境を乗り越える力
レジリエンスとは逆境にさらされたり、新たな挑戦をするときに、強いストレスやプレッシャーを乗り越え、それを糧にして成長する力を指します。
日本語では「逆境力」「再起力」「折れない心」などと訳されことが多く、負荷がかかってもおれずに曲がりもとに戻る竹のようなしなやかさや、押しつぶされても復活するタンポポのような力強さをイメージするとわかりやすいかもしれません。
レジリエンスを高めることで、緩衝力や回復力、適応力、継続力などの性質が身につくと言われています。
ストレスに効果的な対処ができる力
ストレスや重圧は人の心身に悪影響を及ぼしますが、レジリエンスは、そのストレスとうまく付き合うことで自己効力感を向上させ、希望的・楽観的・生産的なスタイルをつくることができます。
レジリエンスを養うことで、柔軟な思考や試練に負けない逞しさが身につき、仕事でのトラブルやミス、責任の大きな局面にも適切な対応が可能になるでしょう。
各界から注目されるレジリエンス
逆境や困難への対処に効果的なレジリエンス。レジリエンスが高い人物はさまざまな場面での活躍が期待できるため、レジリエンスを社員の能力開発に取り入れる企業が増えています。
ビジネスの世界でも注目
ビジネスの世界ではここ数年、経済環境が目まぐるしく変化しており、企業間競争も激化しています。逆境や困難、重圧の中で高いパフォーマンスを発揮できる人材が求められるようになったことや、社員の心の健康問題に対する関心の高まりからレジリエンスへの注目度が高まってきました。
レジリエンストレーニングに脚光
最近はテレビや雑誌でもレジリエンスについての特集が組まれることも多くなりました。レジリエンスは学ぶことで習得可能であることが、長年の研究で明らかになっており、社員のレジリエンスを養うためのトレーニングや研修に積極的な企業も増えています。
レジリエンスが高い人の特徴的な思考は?
ではレジリエンスが高い人は、どのような思考のクセを持っているのでしょうか。
一喜一憂しない
喜怒哀楽が激しいと精神的疲労もたまりやすく、状況に応じた適切な行動をとるのが難しくなります。レジリエンスが高い人は結果がきちんと出るまで一喜一憂せず、はやる気持ちを抑えて適切な行動を取ることができます。
確信のないまま「成功した」などと思い込み、ぬか喜びに終わってしまったり、結果が出る前に「失敗した」と途中で投げ出してしまうことがありません。
自己効力感や楽観性がある
課題と向き合った時、自分はそれをうまく実行できるという自信や期待を自己効力感と言いますが、レジリエンスが高い人は自己効力感を充分に感じることができます。
うまくいかないことが続いても「もう無理だ」などとは考えず、失敗も次へ向けた糧としてしっかり向き合います。悲観的にならず「次は何とかなる」などと前を向く楽観的な思考も、レジリエンスを発揮する要素と言えます。
周囲の人を信頼している
周囲の応援や励ましに、ありがたみを強く感じているのもレジリエンスの高い人の特徴です。人が苦境を脱するのはなにより同じ価値観を持つ仲間の手助けによるところが大きいです。
レジリエンスを発揮している人は自分ひとりだけで困難に立ち向かうのは難しいことを理解し、日頃から信頼関係を構築するための行動をとっています。困難に直面してもサポートしてくれる仲間が現れるので、再起も容易となるわけです。
レジリエンスを高めるには
レジリエンスを高めるために、具体的にはどのような行動が必要なのでしょうか。レジリエンス研修やトレーニングなどに有効な手法の一部を紹介します。
思い込みをコントロールする
モチベーションの低下など感情の落ち込みは、早めに底打ちさせるのが重要です。ネガティブな感情は健康面に影響したり、役に立たない行動を誘発しやすいもの。
人の感情はおおよそが経験による「これはこうあるべきだ」などという思い込みをもとに形成される場合が多々あります。その思い込みに気付き、矯正したり捨てたりするなど感情をコントロールする術を身につければ、レジリエンスはおのずと高まっていきます。
レジリエンスを高める資源を増やす
レジリエンスを高める資源は主に「感情・情動コントロール力」「自己効力感」「自尊感情」「良い人間関係」「楽観性」の5つと言われています。仕事における失敗や職場環境の悪化などでこれらの資源が浪費され枯渇すると、行動は衝動的になり、感情をコントロールできません。
一方、失敗など感情の落ち込みがあっても、これらの資源が豊富な状態だと、「私にはこれだけ強みがある」「周囲にこんなにも支えられている」などと立ち止まって思い込みをコントロールしやすくなります。
現代社会に欠かせないレジリエンス
目まぐるしく変わる現代の社会環境で、逆境や困難を乗り越えるために有効なレジリエンスは、研修やトレーニングなどから身につけることができます。レジリエンスを身に着け体と心の健康を保てば、適切な行動やその後の成長にもつながるはず。ビジネスパーソンにとってレジリエンスの重要性は今後もますます高まってゆくでしょう。