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LMSとは?eラーニングとの違いや活用事例、導入時の注意点を解説

2025年07月24日更新

企業の研修としてeラーニングを検討すると、同時に目にすることが多いLMS。eラーニングと同じものだと誤解されがちですが、この2つの定義には違いがあります。LMSやeラーニングの導入を検討している企業のために、LMSとはなにか、eラーニングとの違い、LMSの機能、活用のメリットや活用事例、近年のトレンド、導入時の注意点を解説します。

LMSとは?

LMSとは、「Learning Management System」の略で、eラーニングなどの実施に必要な学習教材の配信や、人事部門が企画する人材育成プログラムのデータを管理できるシステムです。具体的には、従業員ごとの受講履歴や成績、eラーニングの進捗データなどがその一例です。管理できるデータは、eラーニングに関するものだけではなく、オフラインでの集合研修に関するデータも含まれます。データを統合的に管理することで、効果的な人材育成プログラムの実施を支援するツールといえます。

日本語では一般に「学習管理システム」と呼ばれますが、研修管理システム、教育管理システムなど、提供する企業によっても名称が異なります。

LMSの導入が進む背景

もともと企業研修は対面でおこなう集合型が中心でしたが、1990年代頃からCDやDVD教材が登場し、時間や場所の制約が少なくなりました。
2000年頃にはeラーニング(インターネットを通じた学習)が普及し、学習の自由度がさらに高まりました。

しかし、学習内容を指示するだけでは、受講率も低く、実際の学習効果も把握できないという問題も浮上し、管理も難しかったため、集合研修を継続している企業が多くありました。

こうした背景を受け、学習状況の可視化や一元管理を可能にする「LMS」が登場しました。
近年では、リモートワークやDX推進により、柔軟かつ効率的な教育体制の構築が求められるようになっていることも、LMSの導入を加速させている背景といえます。

LMSの種類

LMSの種類は、システムの導入方法の観点から、下記の2つがあります。

⮚ オンプレミス型:LMSを利用する企業が持っているサーバにLMSのソフトウェアを導入する

⮚ クラウド型:LMSのソフトウェアを販売している企業がサーバを管理し、外部からアクセスする

現在は、手軽に導入できコスト効率の高いクラウド型が主流となっていますが、社内でLMSを構築できるノウハウや体制があれば、長期的な視点で見たときに費用対効果が高い「オンプレミス型」も選択肢となるでしょう。


オンプレミス型 クラウド型
導入コスト
高い
低い
導入までの期間
長い
短い
運用コスト
高い
低い
セキュリティ対策 自社での構築・管理が前提だが、高度かつ厳格な設定が可能 ベンダー側でセキュリティが最新状態に保たれるが、カスタマイズには制限あり
カスタマイズの幅
広い
限定的

LMSとeラーニングの違い



LMS eラーニング
定義
eラーニングを含む学習を管理・運営するためのシステム・ソフトウェア
インターネットを通じた学習
主な目的
受講者の学習効果を高めるため
受講者が知識・スキルを習得すること
主な機能
・受講者の管理
・進捗状況の管理
・成績・受講履歴の管理
・ユーザー間のコミュニケーション
 など
学習コンテンツの受講
(動画、スライド、テキストなど)
・テストの受験
・学習履歴の保存など


LMSと混同されがちなeラーニング。eラーニングという言葉自体は、インターネットを通じて提供される学習コンテンツ・学習方法を示します。eラーニングシステムの中には、研修担当者や管理職の立場から、受講者のeラーニング受講状況を把握できるものもあります。

しかしeラーニングシステムでは、オフラインでの集合研修や社外で受講した研修の受講履歴が把握しづらいという課題がありました。そこで、その課題に対応するべく登場したのがLMSです。
LMSは、受講者と研修担当者、そして管理職と講師の橋渡し役を担います。受講者ごとの受講状況や理解度を総合的に管理することで、より効果的な学習機会の提供につながります。

また LMSを活用することで、たとえば「次世代のリーダーに」と考えている人材に、「現在活躍しているリーダー」がこれまで受けてきた開発プログラムを網羅的に受講させる、といったことが可能になります。

LMSの機能

LMSの機能は大きく分けて4つ。「受講者の管理」、「進捗状況の管理」、「成績・受講履歴の管理」、そして近年活用されている「ユーザー間のコミュニケーション」です。

受講者の管理

システム上で受講者を管理する機能として、主に以下の機能が備わっています。


アカウントの登録・削除 入社・退職などの変動に応じて、受講者の追加や削除をする
グループ管理 所属先や職位などでグループ化して受講者の管理をする
グループ別教材配信 グループごとに研修を展開する


進捗状況の管理

受講者に教材を割り当てた後に、受講者の進捗状況をLMS上で確認・管理する機能として、主に以下の機能が備わっています。


進捗一覧表示 誰がどの教材をどこまで学習したかを可視化する
レポート出力 進捗状況をExcelやPDFで出力する
メール通知機能 一斉通知・個別リマインドメールを送信する


成績・受講履歴の管理

受講後テストが用意されている教材については、LMS上でテストを受験してもらうことも可能です。成績・受講履歴を管理するために、主に以下の機能が備わっています。


テスト機能 教材に対する理解度確認テストを実施する
履歴の蓄積 過去に受講した教材・オフラインの研修履歴を記録して保存する
履歴活用による教材提案 成績や履歴に応じて次の学習内容を提示する


ユーザー間のコミュニケーション

コミュニケーションツールとしての機能を持つLMSでは、以下の機能を備えていることもあります。


メッセージ機能 講師や受講者同士の質疑応答が可能
アンケート集計 教材や研修に関する評価アンケートを実施できる
掲示板・日報機能 管理者からのお知らせや受講者の日報を共有できる


LMS活用のメリット

受講者のメリット

受講者は、LMSの進捗状況管理機能などを通じて「いつまでになにを受講すべきか」を一目で認識できます。それにより学習計画の見通しが立てやすくなり、モチベーションを維持しながら学習できます。また成績や受講履歴から、自身の知識や得意分野、逆に苦手分野を把握できることもメリットの一つです。それらの情報をもとに、今後学習していく分野を自発的に計画する受講者もいるでしょう。

研修担当者・管理職のメリット

研修担当者や管理職にとっては、受講者の情報や教材を一元管理できることによるさまざまなメリットがあります。研修の実施期間中に、LMS上にテスト結果が自動的に集計される機能がある場合は、添削や成績分布を分析する手間を省けます。また、受講者ごとの受講履歴や進捗状況を抽出し、一覧で表示できるため、個別フォローがしやすいです。

通年で感じられる効果としては、LMS上に集約されたデータを分析することで、研修計画を効率的に立てられるといったことがあります。たとえば、人材育成計画を企画する際に、ロールモデルとなる従業員の過去の受講履歴を参照して、次世代リーダー育成プログラムの検討に活用する方法なども考えられます。

長期的な視点では、複数の部署間で横連携をすることで、似たような研修の重複を避けられるなど、企業全体の教育制度の最適化も図れるでしょう。

LMSの活用事例

ここまで、LMSの機能や活用メリットを解説してきました。次は、受講者が単に教材を受講することに留まらない、LMSの活用事例を具体的にご紹介します。

社内ポータルとして活用

搭載されているお知らせ機能や報告機能を活用して、LMSは社内ポータルとしても幅広く利用することが可能です。受講者である社員向けに広く情報を提供することができ、新しい教材や受講の連絡を始めとする、日常的な連絡事項がその例です。

受講履歴を面談時に活用

LMSには、受講者ごとの受講履歴が蓄積されています。そのため、社員と管理職の間などで実施される定期的な面談の場で、社員の状況(受講履歴・進捗状況・テストのスコアなど)を把握する材料の一つとしても活用されます。LMSにある情報は、その社員がこれまでにどのような知識を身にけてきたか、理解度がどのくらいかを知る重要な情報源となりうるのです。

eラーニングだけではなく、集合研修のデータも集約

LMS上で管理できるのは、eラーニングの情報だけではありません。集合研修についても、受講履歴の登録やアンケートなどをLMS上で実施する方法もあります。そうすることで集計する手間が省け、受講者の教育に関するデータを一元管理できます。また、集合研修の実施前に、受講者に研修の一部をLMS上で配信するコンテンツで予習してきてもらう「ブレンディッドラーニング(Blended Learning)」の形式を取り入れる使い方もあります。

ブレンディッドラーニングとは、eラーニングと集合研修など複数の学習形態を組み合わせておこなう学習方法です。

この形式を活用すれば、講師は受講者ごとの進捗を把握した状態で研修を開始できるため、より効果的な進め方を考えられるほか、e-ラーニングでインプットしたものを、研修でアウトプットすることでより効率的に理解度や定着率を高めることができるでしょう。

LMSにおける近年のトレンド

LMSのトレンド イメージ画像
LMSは、管理者や受講者のニーズに合わせて進化を続けています。ここでは近年のトレンドを紹介します。

体験学習を通して学ぶ

従来の知識伝達中心の学習に加えて、LMS上で体験型コンテンツを提供し、「体験」を通じて学ぶ手法への注目が高まっています。

(一例)

  • ●トラブル発生時の対応をシミュレーション形式で学ぶプロジェクト研修
  • ●さまざまな顧客への接客対応をゲーム形式で疑似体験できる接遇トレーニング

こうした学習は没入感が高く、実践に近い形でスキルを身につけられるでしょう。
VRを活用した研修などは臨場感がある一方で、現場対応力の強化にもつながることが期待されるものもありますが、コストや技術の面から導入にはハードルもあります。

より手軽な取り組みとして、実際の失敗談やヒヤリハットをもとに構成されたストーリー形式の教材も注目されています。

AIを活用する活用

教材の作成から学習支援、学習状況の分析まで、LMSにおいてAIが担う領域は年々広がっており、教育の質や業務効率の向上が期待されています。

たとえば、既存の資料をAIに読み込ませることで、eラーニング用の教材やクイズを自動生成できる機能も登場しています。これは担当者が一から設問を考える手間を省き、短時間で質の高い教材を提供することが期待できます。

また、受講者一人ひとりの進捗や理解度に応じて、最適な教材の提案や、補足解説の提示、難易度調整などをおこなうアダプティブラーニング(Adaptive Learning)の仕組みも、AIによって実現されつつあります。このような受講者一人ひとりに合わせた学習体験を提供していくには、LMSだけでなく、LXP(Learning Experience Platform:学習体験プラットフォーム)も活用されるようになっています。

このように、学習体験の個別化と効率化が同時に進む一方で、AIが生成する教材には誤りや受講者に合わない内容が含まれる可能性もあるため、最終的な内容の確認は人の手でおこなう必要があります。また、AIによる過度な介入が学習意欲を損なうリスクも指摘されており、現状では、あくまで「受講者の支援役」としてAIを活用する動きが主流です。

LMS導入時の注意点

導入の目的を明確に

LMSの導入を検討する際には、「どんな課題を解決するために導入するのか」を明確にしましょう。LMS製品はさまざまな企業が提供しており、それぞれに特徴があります。導入の目的に合わせて、製品の選定や運用プロセスを検討しましょう。

たとえば、学習定着率を向上させたいのであれば、受講者のモチベーション維持を助ける機能が搭載されていることを重視。人事評価の評価軸として活用したいのであれば、受講履歴や成績を適正に管理・分析できるLMSを選ぶ、といったイメージです。

運用体制を整える

LMS導入後の運用においては、社内の数多くの部門・人との調整を要します。せっかく導入したにもかかわらず活用できなかった、という残念な結果に陥らないためにも、しっかりと運用体制を整えてから利用開始しましょう。

LMSの運用には、学習管理システムとして全体を管理する以外にも、システムの導入環境の整備、社内システムとの連携、研修を実施するためのコンテンツ作成など、付随する業務は多種多様です。スムーズに運用するため、LMSの管理担当者を中心に、関係者とのコミュニケーションを欠かさないようにします。

データをLMS外でも活用することでより効果を発揮する

LMSは、導入すれば勝手に受講者の学習効率が上がる「魔法の道具」ではありません。データを集約し、現状や傾向を把握することはできますが、そこから見えてきた課題にどう対処するかは、組織内での議論が必要です。場合によっては、受講者に直接声をかける、などのオフラインコミュニケーションも併用していくと有効です。

LMSの導入で柔軟で効率的な育成を

LMSを活用することで、進捗状況や受講履歴、成績などを可視化・集約でき、効果的な学習計画や個別フォローにつなげ、人材育成の質を高めます。

リモートワークやDX推進の流れの中で、学習の効率化と柔軟性を両立できる仕組みとして注目されており、より高い効果を発揮するためにも導入後の運用体制やデータ活用を考える必要があります。導入目的や求める効果を定め、オンプレミス型とクラウド型のどちらにするのか、運用プロセスを慎重に検討することが大切です。

著者プロフィールHR Trend Lab編集部
タレントマネジメントやエンゲージメントなどの最新トレンドから、組織や人事にまつわる基本知識までマイナビ独自の視点でお届けいたします。
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