セルフリーダーシップとは?身につけるメリットや高め方を解説

現場の社員に対して、「もっと主体的に動いてほしい」「自発的に周囲を巻き込んでほしい」と感じることはないでしょうか。しかし、本人に働きかけ、改善してもらうのは簡単ではありません。そこで注目されているのが「セルフリーダーシップ」という概念です。
これは自らの価値観にもとづいて自分自身を導く力を指します。社員がこのスキルを習得することは、個人のパフォーマンス向上だけでなく、ひいては、組織全体の活性化や次世代リーダーの育成にも繋がります。本記事では、セルフリーダーシップとは、セルフリーダーシップが求められる理由、身につけるメリット、セルフリーダーシップの高め方と高める施策を紹介します。
セルフリーダーシップとは

セルフリーダーシップとは、米国の経営学者であるチャールズ・C・マンツ氏とヘンリー・P・シムズ・ジュニア氏によって提唱された概念です。「自分自身を導き、自らに影響を与える包括的な視点から考えること(a comprehensive self-influence perspective that concerns leading oneself)」と定義されています。
これは、上司や組織からの指示を待つのではなく、自分自身に意図的に影響を与えながら動機づけ、自らの価値観や判断にもとづいて行動を方向づけていくことを意味します。特に、業務の幅が広がり周囲への影響も増えていく中堅社員にとっては、自分で考え、自分を動かす力が欠かせません。
セルフリーダーシップとセルフマネジメントの違い
セルフリーダーシップと似たものとして、セルフマネジメントがあります。セルフマネジメントとは、与えられた業務や状況に流されるのではなく自ら状況を整理し、調整しながら、安定した成果を出し続ける力を指します。一方で、セルフリーダーシップは行動の方向性に踏み込む考え方を指します。
セルフマネジメントは目の前の業務や自分の状態、いわば土台を整えるための力です。セルフリーダーシップは、そこから未来を考えて自らの価値観や目的意識を軸に、どこへ向かい、どのように行動していくかを定める力だといえるでしょう。
両者はいずれも自律的に働くために欠かせない要素です。安定したセルフマネジメントという土台があるからこそ、セルフリーダーシップによって行動を前に進められるため、両者は補完し合う関係になります。セルフリーダーシップとセルフマネジメントの両方があることで、自身のキャリアや周囲により大きな影響を与えられるようになります。
| セルフリーダーシップ | セルフマネジメント | |
|---|---|---|
| 目的 | 行動の方向性を定めていく | 状況を整理・調整し、安定した成果を出す |
| 時間軸 | 未来(どこへ向かうか) | 現在(目の前の業務や状態) |
| 対象 | 自らの価値観や目的意識(軸) | 業務、環境、自己の状態(土台) |
| 役割 | 行動を前に進める力 | 土台を整える力 |
セルフリーダーシップが求められる理由

近年の組織では、事業環境や業務内容の変化が速くなっています。上司や経営層がすべてを判断し、細かく指示を出すだけでは環境の変化に対応できず、ビジネスチャンスを逃してしまう可能性があります。
その結果、「指示されたことを正確にこなす」ことを前提とした働き方から、社員一人ひとりが状況を見極め、自ら判断しながら行動することが求められるようになっています。
そのなかでも中堅社員は、現場の中心として後輩を支えて上司を補佐し、ときには部門を越えた調整や連携をして自ら前に進めていくため、セルフリーダーシップが特に求められます。自らの意志で動き、周囲を巻き込みながら物事を前に進める力は、将来、管理職として組織を率いる場合にも専門職として分野を牽引する場合にも必要とされる能力です。
このような背景から、主体的に自分を導き、前向きな影響を組織で発揮するセルフリーダーシップが強く求められています。
セルフリーダーシップを身につけるメリット

セルフリーダーシップを身につけるメリットを紹介します。
パフォーマンスの向上
セルフリーダーシップを身につけることで、自分がどのような行動をとるべきか、そしてなぜその行動が必要なのかという「目的意識」が明確になります。将来のありたい姿を見据えて、自らの価値観を軸に判断を下せるため、仕事に対して「やらされている感覚」が薄れ、主体的に取り組む姿勢が養われます。
自分の行動や必要性を考えられるようになり、結果として生産性やパフォーマンスの向上が期待できます。
任せられる業務の幅が広がる
セルフリーダーシップが高まると、仕事を他人事ではなく「自分ごと」として捉えられるようになります。そのため、指示待ちではなく、自ら考えて動く姿勢が身につき、新しい業務にも主体的に対応できるようになります。必要な知識やスキルのアップデートも自分で判断して進められるため、環境やトレンドの変化にも適応しやすくなり、任せられる業務の幅が広がっていくでしょう。
仕事へのモチベーションが内側から高まる
セルフリーダーシップが身につくと、業務上の課題や成果を自分自身と結びつけて捉えられるようになります。その結果、自分の発言や行動に対する責任感が強まり、「よりいい結果を出したい」「改善したい」という前向きな意欲が生まれやすくなります。
こうした内発的な動機づけによって、仕事へのモチベーションが高まり、外からの評価によってモチベーションが左右されにくくなります。
周囲との関係性や影響力が向上する
自分自身を律し、行動をコントロールできる人は感情に流されにくく、周囲とも良好な人間関係を築きやすくなります。セルフリーダーシップが高まることで、発言や行動に一貫性が生まれ、周囲からの信頼も得やすくなります。
その結果、自然と周囲にいい影響を与えられるようになり、他者をリードするリーダーシップの向上も期待できます。
セルフリーダーシップの高め方

セルフリーダーシップを高めるには、それを構成する「ビジョン思考」「関係性志向」「影響力発揮」という3つの要素をバランスよく意識することが重要です。それぞれの力を日々の業務のなかでどのように高めていくべきか、実践のヒントとともに解説します。
ビジョン思考
ビジョン思考とは、目の前の忙しさに流されるのではなく、「自分はどうありたいか」「どのような価値を提供したいか」という将来の姿を見据えて行動を選択する力です。
ビジョン思考を身につけるには、目の前の業務をこなすだけでなく、中長期的にどのようなスキルを持ち、どのような役割を担っていたいかを想像することが重要です。「今のこの仕事が、将来のどの力に繋がるか」を月に一度振り返るだけで、日々の業務が「成長のためのステップ」へと変わります。
また、「自分はなににやりがいを感じるのか」を言語化することも有効です。「人の役に立ちたい」「専門性を極めたい」など、大切にしている価値観を定期的にメモしましょう。
関係性志向
関係性志向とは、周囲の人々と良好な繋がりを築き、組織に対してポジティブな影響を与える姿勢や能力のことを指します。そのためには、役職や権限に関係なく、自らの言動を通じて周囲を動かし、チームを活性化させる「インフォーマルリーダーシップ」を発揮することが重要です。
関係性志向で大事なことは「期限を守る」「丁寧なレスポンスをする」といった当たり前の積み重ねによる、周囲との信頼関係の構築です。感情的になりそうな場面で一呼吸置き、客観的な伝え方を選ぶ「感情のコントロール」も、安定した関係性を保つために重要です。
そのほか挨拶に一言添えたり、困っている後輩に自ら声をかけたりするなど、受け身ではなく自分から動くことが関係性を育てます。
影響力発揮
自分一人の努力で出せる成果には限界があります。他者の立場を理解し、相手の納得を得ながら協力を引き出す力が「影響力」です。これには「どうすれば協力してもらえるか」という視点が重要になります。なにかを依頼する際は、相手の業務状況や関心を事前に確認し、「どう伝えれば相手が受け取りやすいか」を考えます。相手目線の伝え方を選ぶだけで、協力の得やすさは大きく変わります。
また、協力を得た後は、感謝を伝えるだけでなく、その後の進捗や結果を必ず共有しましょう。「自分の協力が役に立った」という実感を与えることが、次回のスムーズな連携に繋がります。
セルフリーダーシップを高める施策

セルフリーダーシップを高める施策を紹介します。
セルフリーダーシップの重要性を組織として明確に伝える
企業がまず取り組むべきなのは、「なぜセルフリーダーシップが必要なのか」を社員に明確に伝えることです。先を見通しにくい時代において、個人が主体的に考え、行動できることがなぜ重要なのかを、会社の方針や期待と結びつけて説明しましょう。あわせて、会社としてどのような状態をセルフリーダーシップが発揮されていると捉えるかを共有することで、社員の理解を揃えやすくなります。
個人に対する期待や役割を伝える
社員が主体的に行動するためには、「自分がどのように期待されているのか」を理解していることも重要です。会社や上司が、その社員に期待している役割や成長の方向性、評価している点を具体的に伝えることで、社員は自分の意思と会社の期待を重ね合わせて考えやすくなります。
これにより、行動の目的意識が明確になり、自発的な取り組みに繋がるでしょう。
1on1を通じて主体性を引き出す
社員のセルフリーダーシップを高めるには上司が部下を育成することも重要です。とくに上司と社員が定期的に対話する1on1は、セルフリーダーシップを育てる有効な施策でしょう。
その際に重要なのは、1on1を業務指示や評価の場に終始させるのではなく、社員自身の考えや意欲を引き出す場にすることです。上司が答えを与えるのではなく、問いかけを通じて社員が自分の意思で考え、選択する余地をつくることで、セルフリーダーシップにおける「自分はどうありたいか」といった目指したい姿を考え、自律的な姿勢が育ちやすくなります。
こうした「気づき」を与え、これまでの経験や強み、仕事を通じて得ているものに目を向けさせることで、社員の内側にある動機や目標が言語化されやすくなります。ただし、このような1on1をおこなうためには、上司側にも1on1をおこなうスキルの育成が求められます。
主体性を発揮できる環境を整える
セルフリーダーシップを引き出すには、社員が自分の役割を正しく認識し、自らの意思で行動できる環境づくりが欠かせません。そのためには、個々の仕事の目的や組織への影響を明確にし、「当事者意識」を持ってもらうことが重要です。
自分の業務が全体の目標にどう貢献しているかを把握することは、社員が主体的に考え、動くための土台となります。あわせて、権限委譲もおこない、意思決定の機会を増やすことも大切です。失敗を恐れずに挑戦できる文化を育み、適切なフィードバックをすることで、主体的に動ける環境に繋がります。
研修を通じて理解と実践を深める
セルフリーダーシップを体系的に学ぶ機会として、研修の活用も有効です。セルフリーダーシップ研修であれば、概念の理解に加えて、目標設定や行動の振り返りといった実践的な内容を学ぶことで、社員は自分自身にどう向き合えばよいのかを具体的にイメージできるようになります。
また、セルフリーダーシップは自己理解や目標設定、他者との関わり方など、多様な要素が組み合わさって成り立つものです。そのため、専門の研修だけでなく、キャリアデザイン研修やコミュニケーション研修などを通じて、多角的にアプローチすることも有効です。
自己流では身につけにくい考え方を整理する場として、研修はセルフリーダーシップの底上げに繋がります。
セルフリーダーシップの醸成が組織の自律性を高める

セルフリーダーシップは、変化の激しい現代において、社員が自律的に働くための重要なスキルです。「自分はどうありたいか」というビジョンを持ち、周囲にポジティブな影響を与えながら行動できるようになれば、組織の成果が向上することが期待できます。
また主体性の発揮を社員個人だけに委ねるのではなく、1on1での対話や環境整備、体系的な研修といった「組織的な施策」を通じてサポートしていくことが、自律性を高める組織へと繋がるでしょう。

















