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離職防止対策に重要なリテンションマネジメントとは?ポイントと手法を紹介

2021年07月07日更新

離職防止対策は、労働人口が不足する昨今において企業の大きな課題です。人材の流出は、事業機会の損失や採用コストの増加、既存社員のモチベーション低下などを招く可能性があります。

近年の離職防止対策のなかでは、優秀な人材の流出を防ぎ組織に定着させるための多角的な施策を展開する「リテンションマネジメント」が注目されています。「大卒の人材が入社3年以内に離職する割合が3割」といわれる労働市場で、離職防止のためにはなにをすればいいのでしょうか? ここでは、リテンションマネジメントの実施する際のポイントや手法について紹介します。

目次 【表示】

離職防止対策につながるリテンションマネジメントとは

リテンションとは、「維持・保持・引き留める」を意味し、人事分野では「人材を組織に定着させ、活躍し続けてもらうための施策」を「リテンションマネジメント」といいます。企業がリテンションマネジメントに取り組むことで、社員にとっても働きやすい環境になったり、キャリアへの見通しが立てやすくなったりといったメリットがあります。

リテンションマネジメントが効果的に行われる企業では、人材が組織内で成長し、ノウハウが蓄積され、新たな技術や事業が生まれます。人材流出によるマイナスの影響を抑え、社員と企業がよい方向に向かう一助となるのです。「研修」といった一つの手法によって達成されるものではなく、社員が離職する理由によって、複数の手法を用いて多角的に展開されます。

退職理由の上位は「労働条件」「給与」「成長実感」など

離職対策について考える際は、まず社員が離職する理由に目を向けます。社員を取り巻く状況によっても異なりますが、厚生労働省の「雇用動向調査」によれば、退職の主な理由としては「労働条件」「給与」「人間関係」が挙げられています。ほかにも、「働きがい」「自己実現」「成長実感」といった理由が退職原因になり得ます。

こうした退職理由は、単体で退職のトリガーになるわけではありません。たとえば「労働時間が長い」といった労働条件への不満に加え、「成長実感が持てない」というような不満が重なった際に、退職してしまう確率が高まります。

それゆえにリテンションマネジメントに取り組む際には、「給与アップ」や「残業時間削減」といった単体の対策だけでは不十分です。

社員の離職が企業にもたらす機会損失

従来の人事領域では、「離職は若手人材が主体」と考えられていました。そのためリテンションマネジメントも、若手に対して行われる研修やOJTの充実が主軸となっていました。

しかし、終身雇用制度の崩壊とともに労働市場が柔軟化し、転職によるキャリアアップが一般的に受け入れられるようになると、リテンションマネジメントの対象は若手社員に限らず全社員へと広がりました。とりわけスキルやノウハウを持つ中堅社員の離職や、結婚・出産をきっかけとした女性社員の退職は、企業の成長性・競争力にとって大きな痛手となります。

マネジメントを期待される中堅社員の層が失われるのは、事業にとって大きな成長機会の損失です。また優秀な人材の離職は、顧客関係の喪失にもつながり、売り上げに影響を与える可能性もあります。さらに社員の離職は、他の社員のモチベーションを低下させる恐れもあります。

転職が当たり前となった現代だからこそ、社員の離職理由に目を向け、現状を改善し定着を促すリテンションマネジメントが、企業の事業継続と成長のために必須となるでしょう。

社員が離職を思いとどまるリテンションマネジメントのポイントとは

報酬での離職防止対策には限界がある

近年、働き方改革によって「長時間労働の削減」や「同一労働同一賃金」などが推進されています。このような労働条件の改善につながる施策は、職場での働きやすさを向上させ、離職者を減らす効果が期待できるでしょう。

個人の職歴・スキル・業績によって支払われる「給与」や「賞与」は、社員のモチベーションを向上させます。高い給与は、それだけで「価値の高い仕事をしている」という満足感を社員にもたらします。また「月間MVP」など、業績達成者がボーナスを受け取る制度は、売上目標を達成する動機付けにもなるでしょう。

ただし、こうした報酬の効果は一時的なものです。金銭など外部からの報酬によってやる気を引き出す「外発的動機付け」は、「他社からの高額オファー」といったより魅力的な要因が発生した場合、すぐにとって代わられてしまう可能性が高いのです。リテンションマネジメントの実施にあたっては、給与などの報酬がもたらす影響の限界を知っておく必要があります。

ハード面だけではなくソフト面のアプローチも重要

給与といったハード面の改善だけではなく、「職場の人間関係」に代表されるソフト面の改善にも力をいれる必要があります。人間関係や成長機会など、本人の内側から行動が促される「内発的動機付け」を促すアプローチは、長期的視点で組織への定着を促す理由づけになるからです。

職場の人間関係の悪化は、仕事のパフォーマンスに大きな影響を与えます。逆にいえば、上司や先輩がフォローしたり、チーム間で業務をサポートしたりするなど、コミュニケーションが活性化し良好な人間関係が築けている組織では、個人の働くモチベーションも向上しやすいといえます。

また1on1といった上司と対話する機会は、業務に対するフィードバックを得るチャンスです。仕事の不安が解消されることはもちろん、職場がきちんと「評価してくれている」「気にかけてくれている」という実感が、企業に対するエンゲージメントを高め、モチベーションの向上につながる可能性があります。

人間関係や組織風土は目には見えませんが、社員が企業で働くモチベーションを大きく左右するものと認識し、リテンションマネジメントに組み込みましょう。

離職を防ぐリテンションマネジメントのポイント

上述したように、社員が離職するときには、複数の要因が絡んでいることが少なくありません。そのためリテンションマネジメントは、複数の離職理由にあわせて考え、実行することが大切です。

まず、すべての社員に対するリテンションマネジメントとして、働きやすい環境の実現と、働き方や能力に応じた報酬が支払われるよう、労働条件や給与を見直しましょう。

社員の意向にあわせた異動や人材配置は、働きがいの醸成につながるでしょう。研修などによってスキルアップの機会を提供することは、社員の成長実感を促します。適切で公正なフィードバックは、仕事を通じた自己実現の実感を社員に与えてくれます。

さらに離職防止の施策を実施する際は、誰に対しておこなうのか、対象者を明確にすることが大切です。たとえば若手人材の不安を取り除くために、先輩社員とのコミュニケーションを活性化させるなど、対象となるグループが抱きやすい不安・悩みにフォーカスした施策を実行しましょう。

離職防止のためにできるリテンションマネジメントの手法

離職防止のためのリテンションマネジメントの手法を紹介します。

エグジットインタビュー(退職理由の聞き取り)

退職を申し出た社員に対して、退職理由の聞き取りをすることを「エグジットインタビュー」といいます。エグジットインタビューの大きな目的は、退職理由を把握し、それ以降のリテンションマネジメントに活かすことです。

退職者に引き留められるのではと懸念を持たれないために、直属の上司ではない人事などが聞き取りを担当すること、退職手続きが終わった際におこなうことなどがポイントです。

ワーク・ライフ・バランスの重視

働きやすい職場環境づくりは、リテンションマネジメントに欠かせません。残業時間削減のために、ツールの導入や業務フローの見直しをおこなうのもよいでしょう。また、リモートワークや副業といった柔軟な働き方を取り入れることは、企業が多様な働き方を承認しているメッセージにもなります。

公正な評価と報酬制度の構築

業績に見合った評価と報酬制度の確立は、社員の働くモチベーション向上に大きく貢献します。たとえば「社員がどのような報酬ランクにいるのかを明確にする」「どんな役割を期待され、それに対してどのような評価を得られるのかを明確にする」など、透明度の高い制度構築をしましょう。

また、多面的に評価ができる「360度評価」の導入は、同僚やチームメイトからの評価も加わるため、公平性が増します。

コミュニケーション活性化

仕事の悩みを相談したり、業務をサポートしてもらえたりするような風通しのよい職場環境は、良好な人間関係を醸成します。

また1on1やメンター制度は、社員一人ひとりを取り巻く状況を把握するのに役立ち、労働問題や精神状態など、個人や職場の抱える問題に早い段階で気づくきっかけにもなります。「サンクスカード制」などは業績には直接関係ありませんが、お互いを認め合う文化は、働きやすい職場づくりにつながるでしょう。

キャリアパスに沿った研修制度の充実

若手人材に対するロールプレイング研修や、中堅社員向けのスキルアップ研修は、仕事において必要な能力を向上させます。企業がリテンションマネジメントとして研修に取り組む際は、どのような立場の社員にも対応できるように、研修制度を整えておくことが重要です。

部署ごとの業務内容にあわせた研修プランや、役職などの経験にあわせた研修プランなど、キャリアパスが見えるような研修体制にしておきましょう。それにより社員は、長期的にこの会社でスキルを伸ばせると実感できます。

離職防止対策には、社員のモチベーションを引き出す施策が重要

離職防止につながるリテンションマネジメントでは「なぜ社員が離職するのか」、を知ることが大切です。離職理由を調査し、その原因に対して、多角的にアプローチするような制度や仕組みを実施しましょう。このとき、離職理由となっている事柄は一つとは限りません。

また、給与アップといった報酬による引き留めは、長期的な人材定着への効果は薄いと考えられます。そのため、働きやすい環境づくり、公平な評価制度、社内コミュニケーションの活性化など、社員のモチベ―ションを引き出すような多角的な施策を行いましょう。

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