企業はどんな内定者フォローをすべき?実施時の3つのポイントも解説
内定者が思い描く社会人になるにあたってのさまざまな不安を期待や自信に変える目的で実施される「内定者フォロー」。昨今の売り手市場において、非常に重要な採用活動の一環です。
では具体的にどのような施策が効果的なのでしょうか。本記事ではマイナビが実施した「2025年卒内定者意識調査」の結果を踏まえつつ、企業がおこなうべき内定者フォローの実態やフォロー実施時のポイントなどを解説します。
内定者フォローとは
内定者フォローとは、内定を出した人材に対して講じるさまざまなサポート施策のことです。具体的には、内定者懇談会や人事担当者からの各種連絡、職業体験の機会の提供、内定者同士の早期コミュニティ形成の支援など多岐にわたります。
内定者フォローの目的
内定者フォローの目的は次の3つの不安を解消し、期待や自信に変えることが挙げられます。
- ・自身に対しての不安:「そもそも自分は仕事ができるのか」「この仕事に向いているのか」という不安
- ・仲間に対しての不安:同僚や先輩社員、上司との人間関係に対する不安
- ・会社・キャリアに対しての不安:「本当にこの会社に入社して良いのか」「実はこの会社についてよく知らないのではないか」という不安
実際に「マイナビ 2025年卒内定者意識調査」では、「入社予定先企業を決めた後、不安になったことはあるか」という質問に対して、「不安になったことがある」と回答した2025年卒の方は58.6%に上ることが明らかになっています。内定者フォローにより内定者の不安を期待や自信に変えることで、内定辞退はもとより、入社後の働くモチベーション向上や早期離職の防止にも繋がり得ます。
いま、内定者フォローが重要な理由
新入社員の即戦力化が叫ばれる昨今、企業は新たに入社する社員が組織に適応するプロセスである「組織社会化」を重視する傾向があります。組織社会化は早期戦力化や職務満足度向上、離職率の低下などとも相関関係があるといわれています。
この組織社会化ですが、内定者フォローによって入社前にも取り組むことが可能です(「予期的社会化」といいます)。具体的に人事部門としては、リアルな仕事情報の提供が予期的社会化に繋がります。つまり、企業の仕事情報を学生視点でわかりやすく発信することで、入社前から新入社員の即戦力化を図ることができるのです。
さらにリアルな仕事情報の提供は、副次的に、リアリティショック(入社前に抱いていた期待や理想が、入社後の現実で裏切られて受けるショック)の緩和にも寄与することでしょう。
調査結果からみる内定者フォローの実態
「マイナビ 2025年卒内定者意識調査」および「マイナビ2025年卒企業新卒内定状況調査」で明らかになった内定者フォローの実態について、企業の実施している内容と、内定者が求める内容について比較してみましょう。

上記結果より、企業が実施している内定者フォローの施策のなかで、とくに実施率が低かった項目が、「内定者同士のコミュニティサイト(SNS)」となります。
「マイナビ 2025年卒内定者意識調査」では実際に同施策を実施している企業は6.3%に留まる結果となりました。一方で、「マイナビ2025年卒企業新卒内定状況調査」によると、22.9%の内定者が同施策の実施を希望していることが明らかになりました。では、なぜ学生は入社前から内定者同士のコミュニティ形成を求めているのでしょうか。
それは先述した「3つの不安」のうちの「仲間に対しての不安」が関係していると考えられます。
多くの企業が実施している内定式や内定者懇親会では内定者同士が対面で会える一方で、数時間~終日と限られた時間でしかコミュニケーションができません。また、社内見学では入社後実際に働く環境を目にすることができる一方で、職場以外での生活までイメージすることは難しいでしょう。
したがって、内定者は社会人生活のなかでの日常的な人間関係の不安を事前に解消するために、デジタル上でのつながりを求めている可能性があると考えれます。
3つの不安に対する、内定者フォロー実施時の3つのポイント
先述した通り、内定者フォローの目的は「自身に対しての不安」「仲間に対しての不安」「会社・キャリアに対しての不安」という3つの不安を期待・自信に変えることです。ここでは内定者フォローのポイントとして、3つの不安を期待・自信に変えるために、人事部門が押さえたい3つのポイントを解説します。
【「自身に対しての不安」への対応】働くためのマインドセット・スキル習得
働く上で重要なマインドセットやスキルの習得支援を内定者フォローとして実施することで、内定者の「自分は仕事ができるのだろうか(仕事に向いているのだろうか)」という不安の軽減が期待できます。具体的には社会人としての基本的なマナー・マインドセットを教えたり、ジョブ型雇用の場合には配属先で求められる専門スキルの習得支援をおこなったりします。
入社前にマインドセットやスキルを少しでも身に付けておくことで、内定者は仕事に対する自信がつくことでしょう。
【「仲間に対しての不安」への対応】内定者や先輩社員とコミュニケーションを取る場を設ける
「仲間に対しての不安」を軽減するためには、内定式や内定者懇親会に加え、食事会や社内イベントなど、内定者同士や先輩社員とコミュニケーションを取る場を積極的に設けることがポイントです。最近では内定者のみが閲覧できるクローズドのアプリを活用する企業も見受けられます。
内定者同士や先輩社員と交流を深めてもらうことで、内定者同士の仲間意識が強くなり、また先輩社員への親近感が生まれるため、内定辞退を防げる可能性が高くなります。また内定者にとっても悩みや課題を共有できる貴重な仲間をつくる機会になることでしょう。
【「会社・キャリア対しての不安」への対応】会社や仕事内容への理解を深めてもらう
「これから入社する会社の社風や企業文化は自分に合っているのか」「入社後どのようなキャリアを描けるのだろうか」という会社やキャリアに対する不安を少なくするためには、内定者に会社や仕事内容について理解を深めてもらうことやキャリア形成支援が大切です。
前者の会社・仕事内容の理解促進の具体的な方法としては、先に挙げた「内定者懇親会」や「社内見学・工場見学・視察見学」などのほか、「内定者アルバイト」も有効です。内定者アルバイトでは長期休暇中や授業終わりなどに、アルバイトとして簡単な作業を内定者へ依頼します。内定者は実際に会社で働き、先輩社員とコミュニケーションを取ることで、会社や仕事内容に関する実践的な理解を深められるでしょう。
また後者のキャリア形成支援については、描けるキャリアの説明やキャリア相談なども有効です。キャリア形成支援というと入社後から取り組む施策というイメージがあるかもしれませんが、入社前から内定者のキャリアに対する考えを積極的にヒアリングすることで、内定者には「入社前からキャリアについて真剣に考えてくれているのだな」と感じてもらえることでしょう。
ポイントを絞った内定者フォローを実施し、内定者の不安を期待と自信に変えよう!
内定者フォローは「自身」「仲間」「会社・キャリア」の3つに対する不安を自信や期待に変えるために実施されます。内定者フォローの具体的な施策には内定者懇親会、社内見学・工場見学・施設見学などが挙げられますが、通り一遍な内容の施策を実施しても、内定者の不安を自信や期待に変える効果はあまり期待できません。
本記事で紹介したとおり「働くためのマインドセット・スキル習得」や「会社や仕事内容への理解を深めてもらう」などのポイントを踏まえた施策を実施し、内定者に自信と期待を持って入社式に臨んでもらいましょう。
出典:
マイナビキャリアリサーチLab|2025年卒内定者意識調査
マイナビキャリアリサーチLab|2025年卒企業新卒内定状況調査