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RJP理論の4つの効果とは?ミスマッチを防ぐ情報発信の方法を紹介

2023年03月08日更新

人材不足による採用の困難化や転職市場の活発化による離職の増加など、採用と定着に関する課題が増している近年、大きな損失につながる早期離職は避けたいものです。せっかく入社した人材を流出させないために、企業は採用時のミスマッチを軽減する必要があります。

そこで注目されているのが、「RJP」です。本記事では、RJP理論とはなにか、活用によって得られる4つの効果と導入方法についても解説します。

目次 【表示】

RJP理論・RJPとは

RJP(Realistic Job Preview)理論とは、企業に関するリアルな情報を求職者の方に提供することにより、求職者の方自らが企業を選択することを促そうという理論です。RJPを日本語に訳すと「現実的な仕事情報の事前開示」となります。

RJP理論自体は新しいものではなく、1970年代のアメリカで提唱されたものです。日本では、企業が抱える早期離職という課題を解消する一助になるとして近年注目されています。

日本では、就職後3年以内に離職する新規学卒就職者の割合が3割を超えている現状があります。

<2020年新規学卒就職者の就職後3年以内離職率>
■ 中学 55.0%
■ 高校 36.9%
■ 短大など 41.4%
■ 大学 31.2%

出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況を公表します」

時間とコストをかけて採用と育成をおこなっても、就職から3年以内に3割以上が離職するとなればその損失は計り知れません。少子高齢化による労働人口の減少が止まらぬなか、定着率の向上はすぐに解決を目指したい課題の一つです。

厚生労働省の「平成30年若年者雇用実態調査の概況」によると、若年労働者の離職理由には「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった 30.3%」「人間関係がよくなかった 26.9%」「賃金の条件がよくなかった23.4%」「仕事が自分に合わない 20.1%」などが挙げられています。

企業側が採用の際に現実に即した情報を提供していれば、このようなミスマッチは避けられる可能性があります。RJPは、国内企業の早期離職対策につながるとして導入されはじめているのです。

従来型の採用手法とRJPの違い

従来の採用手法とRJPを用いた採用にはどのような違いがあるのでしょうか。

従来の採用手法では、会社や仕事についての期待度を高めるために、比較的よい部分を切り取って求職者の方に情報を与えていました。求職者の方は、そのような情報から魅力的な企業であると認識して、内定を承諾します。

ところが、実際に仕事を経験してみると、事前情報とは異なる部分もあり、入社前の期待と現実のギャップに気づくこともあるでしょう。そして、仕事へのモチベーションが低下し、結果として転職を希望するようになり、離職にいたってしまうことがあります。

この方法では、採用時にはより多くの人材を獲得できる可能性が高まりますが、一方でミスマッチによる離職率を高める可能性もあるのです。

RJPを用いた採用手法では、会社や仕事内容について現実に即した情報を求職者の方に提供します。現実的な情報を提供すると、従来の手法であれば応募や内定に至った可能性のある求職者の方でも、自分の求める条件にマッチしないと感じてその企業を選択しない可能性があります。

しかし、すべての求職者の方がそうなるわけではありません。提供した情報に魅力を感じた求職者の方は、応募をしたり内定を承諾したりします。このようなケースでは、事前情報による期待と入社後の実態の齟齬がなく、入社した方が企業や仕事内容が自分にマッチしていると感じ、定着する可能性が高まります。

RJPの導入で得られる4つの効果

RJPを導入することで、定着率向上に寄与する次の4つの効果が得られるといわれています。

セルフスクリーニング効果

セルフスクリーニング効果とは、企業や仕事内容に関するリアルな情報によって、求職者の方自身が企業との適合性を判断できるようになることです。求職者の方自らが適合性を判断してから入社することにより、仕事内容や社風のミスマッチによる早期離職を防ぐ効果が期待できます。

ワクチン効果

ワクチン効果とは、応募先企業への過度な期待を、リアルな情報により事前にクールダウンできる効果のことです。現実的な情報を提供することで、過度な期待から起こる入社後のイメージダウン、いわゆるリアリティショックを軽減できます。

コミットメント効果

コミットメント効果とは、誠実な情報発信によって、採用者の企業への帰属意識や愛着を深める効果のことです。採用者は入社後の体験と入社前の情報が同様であることに気づき、従業員エンゲージメントが高まり、離職を防止できる可能性があります。

役割明確化効果

役割明確化効果とは、企業が求める人材要件を明確に伝えることにより、採用者が入社後に事前情報と同じ役割・業務に従事できている実感を得られやすくなる効果のことです。入社前に想定していた役割・業務を実現できたことが、モチベーションの向上につながります。

RJPの導入方法

ここからは、RJPの導入方法をご紹介します。導入を検討している企業は、研究者らが示している次の5つのガイドラインに沿い実践を進めていきましょう。

RJP実践のための5つのガイドライン

次の5つのガイドラインに沿って導入を進めることで、RJPによる効果の最大化を見込めます。

1.目的の説明と情報提供をおこなう
求職者の方にRJPの目的を説明したうえで情報提供をおこない、求職者の方自身が応募や入社を十分に検討し決定することを促します。情報提供については、より効果的なタイミングを模索しながら、いつ、どこで、だれがおこなうのかを定めましょう。

2.情報にマッチするメディアを用いて、信用できる情報を提供する
次に、情報を開示するメディアを決定します。メディアには、求人広告やSNS、パンフレットなどがあり、企業は提供する情報に見合ったメディアを選択するようにします。加えて、これら媒体に関係なく、信用できる情報を提供するよう心がけましょう。

3.客観的な情報に加え、リアルな声を発信する
給与や休日日数などの待遇に関する情報や、政府による各種認定など外部からの評価のような客観的事実にもとづいた情報だけでなく、現役社員のリアルな声も発信するようにします。実際に働く人がどのようにして業務にあたっているのか、会社をどのようにして見ているのかといった情報も発信しましょう。

4.組織の実態にあわせ、よい情報と悪い情報のバランスを考慮し発信する
とくに、これまでよい情報のみを発信していた企業は、どのような情報を出すのか検討し、情報のバランスを考える必要があります。よい情報、悪い情報どちらかに偏らないよう注意が必要です。

5.採用プロセスの早い段階で情報を開示する
求職者の方が十分に検討する時間を持てるように、情報開示はなるべく早い段階からおこないましょう。たとえば、応募前から会社の状況を把握できるように、動画配信プラットフォームに業務の様子を投稿する方法もあります。近年では、SNSで積極的に情報発信をしている企業も多くあります。

RJP理論を用いた情報提供の方法には、インターンシップや現役社員・管理職との面談なども考えられます。採用プロセスによって情報提供の手法を変え、よりリアルな情報を伝えられるよう工夫しましょう。

RJPを用いてミスマッチを軽減

早期離職につながる入社後のミスマッチを防ぐためには、求職者の方にリアルな情報を誠実に伝えることが重要です。従来型の採用手法を用いており、早期離職を防止したい企業や定着率を上げたい企業はRJPを導入するのも一つの方法です。

ただし、新入社員の定着率が高すぎる・低すぎる企業ではRJP理論の効果が小さくなります。自社の採用状況を洗い出し、適する採用手法を模索していきましょう。

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