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企業におけるMBO(目標管理制度)のメリットと運用上の注意点

2022年04月20日更新

企業の持続的な成長を実現するためには、社員が適切な目標を立て、それに向かって取り組むことが第一歩といえます。しかし、社員によって目標の方向性がばらばらだと、持続的な成長を実現することは難しいものです。また、経営層や上司からトップダウンで目標が課されてしまうと、社員の自立性・主体性が育たないといった問題もあります。そこで、このような問題をクリアするために有効なのが「MBO(目標管理制度)」です。

今回はMBOとはなにか、MBOの運用方法やメリット、運用にあたっての注意点も含めて詳しく解説します。

目次 【表示】

MBOとは

MBOとは「Management By Objectives and self-control」の略称で、日本語では「目標管理制度」ともよばれます。

MBOには「社員本人が目標を立てること」、「社員が立てる個人目標は、組織目標と関連していること」という2つの大きな原則があり、社員自身の目標達成が組織目標の達成にもつながることが大きな特徴といえます。

MBOを採用する企業が増えた背景・理由

MBOは1954年、経営学者のピーター・ドラッカーによって提唱されました。1960年代に入ると米国企業へ広まっていき、日本では1990年代から導入する企業が増え始めた歴史があります。

当時の日本は、バブル経済の崩壊直後であったこともあり、企業は業績の立て直しを図るため、従来型の年功序列を前提としながら社員の等級を分類し賃金を決定する「職能資格制度」のマネジメントを見直し、成果や能力に応じた成果主義へ移行したタイミングでもありました。そこで、社員の成果や能力を図るための指標として、MBOが導入されるようになったのです。

さらに現在は、将来の予測が難しいVUCA時代と言われ、ビジネス環境も状況が刻々と変化しています。このような時代においては、与えられた目標をこなすだけでなく、自ら目標を設定し、自律的・主体的に取り組んでいく力が必要とされます。そのような背景もあり、現在もMBOを採用する企業は少なくありません。

MBOの運用方法

MBOを導入し、運用するにあたっては、どのような手順・方法で進めるのでしょうか。今回は3つのフェーズに分けて紹介します、

1. 目標設定

はじめに、組織の経営戦略や経営ビジョンなどの方針や計画を上司が説明し、社員に理解してもらいます。そのうえで社員が組織の方針や計画に関連付けた個人目標を主体的に設定します。

また、社員が設定した個人目標は必ず上司が確認し、本人と上司との間で合意をとっておきましょう。このとき、目標を達成したと判断する基準や、設定した目標が現実的に達成できるレベルであるかも確認することが重要です。

2. 指導する

目標設定が完了した後は、目標の達成に向けて業務へ取り組みます。上司は、社員が設定した目標に向けての取り組みや、目標に対する進捗などを随時確認し、必要に応じてフォローをおこないます。

とくに進捗確認は重要であり、週ごと、または月ごとといったように定期的に確認しておきましょう。進捗確認がおこなわれないまま時間が過ぎてしまうと、期末などのタイミングで大幅な進捗の遅れに気付くこともあり、そこからの挽回が難しくなるケースがあるためです。

また、思うような成果が出ていない社員に対しては、上司がPDCAサイクルなどの活用や、業務の進め方を変えるなどのアドバイスをするのもおすすめです。

3. 振り返り

MBOは半期または全期ごとに目標に対する成果の振り返りをおこなうケースが一般的です。期末の段階で振り返りをおこなう際には、まず社員が自身の行動を振り返るために自己評価をおこないます。その後、あらかじめ設定された目標の達成基準に沿って上司が最終的な評価を決定します。

社員にとって納得感のある評価をおこなうためにも、客観的な基準に沿って評価することが重要です。業務を通してどのような成果が得られたのか、改善すべき点があればピックアップし、社員に対してアドバイスをするなどして成長に繋げていきます。

企業にとってのMBOのメリット

MBOを運用することで、企業はどのようなメリットが得られるのでしょうか。今回は3つのポイントを紹介します。

組織の課題解決や目標達成につながる

MBOで社員が設定する個人目標は、経営戦略や経営ビジョンと関連付けた内容を定めることが重要であると紹介しました。

組織目標と個人目標は密接にリンクしており、社員一人ひとりが個人目標に向かって業務に取り組むことで、組織の課題解決や目標達成につながる仕組みとなっています。

社員の自律性向上

MBOで設定する個人目標は、上司からトップダウンで指示されるものではなく、社員本人が主体的に設定するものです。

組織全体の目標達成に向けて自分自身はなにをすべきかを考える機会につながり、社員の自主性や自律性の向上が見込めます。自律的な社員が増えることにより、組織全体の活性化も期待できるでしょう。

社員のモチベーションが向上する

定性的な評価が中心だと、なにに対してどれくらいの数字を挙げればよいか量的に把握することが難しく、モチベーションが低下する社員も出てきます。

しかしMBOの場合は、目標を社員自ら設定すると同時に、目標を達成したと判断する基準もあらかじめ明確にしておくことで、モチベーションの向上が期待できます。その結果、社員一人ひとりが前向きに仕事に取り組むようになり、組織全体の目標達成もしやすくなるでしょう。

MBOの運用にあたっての注意点

MBOはメリットばかりとは限らず、さまざまな注意点もあります。押さえておきたい2つの重要なポイントを解説しましょう。

MBOの本来の目的を理解する

本来、MBOは社員のモチベーション向上やスキルの向上を目的としています。しかし日本では、MBOがノルマ達成の管理ツールとして運用されている傾向が見られます。

このような運用のもとでは、目標の設定や目標達成が組織や上司からの押し付けになってしまい、かえって社員のモチベーションを下げる原因となってしまうことも。誤った運用をすると、本来のMBOの目的から外れてしまう可能性もあるため、目的をしっかりと理解しておく必要があります。

設定した目標の妥当性をチェック

MBOでは社員が主体的に目標を設定できることから、なかには確実に目標を達成できるよう難易度の低い目標を設定してしまう社員も出てくるかもしれません。社員によって設定した目標の難易度がばらばらだと、同じ達成度であったとしても不公平が生じてしまいます。

そこで上司は、社員が設定した目標を確認し、難易度が低すぎないか・または高すぎないか妥当性をチェックすることが重要です。

MBOの目標として理想的な難易度は「努力をすれば達成できる」レベルのものです。上司が妥当と判断する目標の設定は難しいものですが、適切な難易度の目標を設定することにより組織全体で高い成果を得られます。

MBOは企業と社員個人の成長に有効

社員が自らの目標を立てるMBOは、自律性のある社員を育成するためにも有効な方法といえるでしょう。また自律性がある社員は、能動的に仕事に取り組むようになり、企業や組織全体の成長にも貢献します。

MBOの運用にあたっては目標を設定して終わりではなく、上司から社員へ指導や振り返りを適切におこなうことで高い成果に結びつきます。また、MBOはあくまでも社員のモチベーション向上やスキル向上を目的としたものであるため、本来の目的をしっかりと理解したうえで運用することが重要といえるでしょう。

MBOの運用は企業にとってメリットばかりとは限らず、注意しなければならないポイントも存在します。自社にとって最適な運用方法を検討し、組織と社員個人の成長に役立ててみてはいかがでしょうか。

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