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ボトムアップとは?トップダウンとの違いや導入メリットなどを解説

2025年10月29日更新

ミーティング
現場の従業員から意見や情報を集め、それを上層部の意思決定に反映させる「ボトムアップ」。現場のモチベーション向上やイノベーション創出などのさまざまな効果が期待できる意思決定モデルです。

一方で、意思決定のスピードの遅さや管理職の力量による成果の差など、導入にあたって考慮すべきポイントも存在します。本記事ではそのようなボトムアップの概要や導入メリット・デメリットなどを解説します。

目次 【表示】

ボトムアップとは

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「ボトムアップ(bottom up)」は、直訳すると「底上げする」という意味ですが、一般的には「下意上達」と訳されます。ビジネスにおいては「現場の従業員(ボトム)の意見や情報を吸い上げて、それらを参考に上層部が意思決定をおこなう」という意思決定モデルの1つになります。具体例は以下の通りです。

  • ●一般社員が「この営業ツールを導入して欲しい」という意見を上げ、その意見を踏まえて経営層がツールの導入を検討する
  • ●管理職が「若手人材の離職を防止するために1on1を全社的に導入したい」という声を上げ、経営層が同制度の導入を検討する

このようにボトムアップは現場の意見を活かした経営が可能になるという特徴があります。

トップダウンとの違いと共通点

トップダウン(Top Down)とは、日本語では「上意下達」と訳され、「上層部(トップ)が主導した意思決定を現場の従業員に展開・指示する」という意思決定モデルです。ボトムアップとは意見や情報の流れが逆になります。

  • ●ボトムアップ:意見や情報は下(ボトム)から上(トップ)へ流れる
  • ●トップダウン:意見や情報は上(トップ)から下(ボトム)へ流れる

トップダウンはボトムアップと比べて、現場の意見を収集する工程がないため、意思決定の迅速性が特徴です。ただし、現場の声が意思決定に反映されづらいというデメリットもあります。

一方で、両者ともに「管理職が現場と上層部をつなぐ橋渡し役になる」という点では共通しています。

<管理職の橋渡しとしての役割>

  • ●ボトムアップ:部下が上司に意見を言いやすい環境をつくる。また現場の意見を吸い上げて上層部へ上申する
  • ●トップダウン:経営層から下りてくる経営戦略や方針を理解する。さらに、それらを咀嚼した上で部下へ発信し、現場での浸透を図る

このようにボトムアップにせよ、トップダウンにせよ、橋渡しとなる管理職は非常に重要な役割を担っています。

ボトムアップの3つのメリット

メリット

ボトムアップがもたらす3つのメリットを解説します。

現場のリアルな声を意思決定に反映させやすい

ボトムアップでは日頃から課題や問題に直面している現場の従業員の声を収集するため、現場のリアルな声を踏まえた意思決定がしやすくなります。逆にいうと、現場の実態に沿わない意思決定をおこなうリスクを下げられるのがボトムアップの特徴です。

もっともお客様の声を聞き、そして実際に商品・サービスを使用・提案しているのは現場の従業員です。そのような現場の従業員の声を踏まえた意思決定ができれば、現場が抱える課題や問題の解決につながりやすいでしょう。

現場の従業員のモチベーションが向上する

ボトムアップが機能すれば、現場の従業員は「自分たちの声が上層部にも届いている」「自分たちが声を上げれば上層部も一考している」と感じやすくなり、仕事へのモチベーション向上につながるでしょう。

逆にボトムアップが機能しなければ(あるいは行きすぎたトップダウンになってしまえば)、現場の従業員は「現場が声を上げてもどうせ届かない」「上層部は現場のことを考えていない」と感じてしまい、現場に無気力感が蔓延してしまうリスクが高まります。

イノベーションを起こせる可能性が高まる

一般的に「現場の従業員の人数>上層部の人数」です。人数が多ければそれだけ多様な考え方・価値観・能力を持つ人材がいる可能性が高く、それぞれの視点から多様なアイデアが生まれやすくなるでしょう。異なるアイデアが交わることで新たな発想が生まれやすくなり、イノベーションが起きる土壌が育まれやすくなります。

ボトムアップの3つのデメリット


続いて、ボトムアップの導入がもたらす3つのデメリットを解説します。

意思決定のスピードは遅くなりやすい

意思決定をおこなう際、トップダウンは上層部内での意見調整だけで済みますが、ボトムアップでは「(現場)意見抽出→(上層部)意見の検討・精査→(上層部)意思決定」というステップを踏む必要があります。

トップダウンと比べてボトムアップは意思決定までの工程が多く、また各工程に一定の時間を要することから、意思決定のスピードは遅くなりがちです。とくに時間的猶予の少ない場面では、ボトムアップにより迅速な意思決定をおこなえずに、競合他社に出遅れてしまう可能性があります。

管理職の力量によって成果が左右されやすい

ボトムアップにおいて管理職は、現場の声を収集および編集して上層部に伝える役割を担います。現実的にはどうしても声の大きい個人やグループの意見が目立ちがちです。しかし、管理職は発言力の有無問わず多様な意見を拾い、それを上層部に刺さる形に編集して上申しなければなりません。仮に管理職が公平性の観点に乏しく、また上層部に伝えるスキルに乏しければ、現場の声が十分に届かないリスクが高くなってしまいます。

現場からの意見は全体最適の視点が欠けやすい

ボトムアップが重視する「現場からの意見」は、その従業員の身の回りの課題・問題に関するものが多くなります。そうした意見は個別の現場では最適解になり得るかもしれませんが、それが全体最適につながるかはまた別の話です。

現場の意見を意思決定に反映させることが企業全体にとって有効であるとは限らないため、上層部は全体最適の視点から現場の意見を判断する業務負担が新たに生じることにもなります。

ボトムアップが適している組織の特徴

メリット

ボトムアップが適している組織の特徴を3つ紹介します。

高度な専門性が必要な組織

高度な専門性を持つ組織が有効な意思決定をするには専門的な知見が必須です。逆に専門知識が不足したまま意思決定をおこなうと、現実との乖離により意思決定が機能しないリスクが高まります。その点、ボトムアップであれば、最新の技術動向や研究・開発の結果を最前線で聞いている現場の声を踏まえた意思決定が可能です。

そのため、たとえばITや医療など専門性が高い分野ではトップダウンよりもボトムアップの方がより適していると考えられます。

複数の事業や部門を持つ組織

複数の事業や部門を持つ組織の場合、上層部がそのすべての事業・部門に関する最新の技術動向や市場ニーズの変化などを把握するのは不可能です。そのため、複数の事業や部門を持つ企業こそ、現場で日々お客様と向き合っている従業員の声をすくい上げ、それを意思決定にうまく活用する必要があります。

現場の声が商品・サービスの開発・改善に直結する組織

たとえば新商品の開発部門やカスタマーサポート部門など、現場の意見や考えが商品開発やサービス改善に直結する組織は、よりボトムアップが有効です。そうした組織は現場の声こそが商品開発やサービス改善の重要なヒントになり得るためです。

逆に安全性や事故リスクの観点から、計画通りかつ着実に事業を進めることが重視される、政府系組織やインフラ関連事業を展開している組織はボトムアップよりも上層部で統率が取れるトップダウンの方が適しています。

ボトムアップで現場から意見を集められる組織にするためのポイント

POINT
意見の集まりやすい組織は「心理的安全性が高い」「管理職がボトムアップを意識したマネジメントをしている」などの特徴があります。最後にボトムアップで肝となる「現場からの意見収集」をおこなえる組織にするための3つのポイントを解説します。

心理的安全性を確保する

ボトムアップの肝は、現場の従業員からの率直な意見が聞けることにあります。現場の従業員こそが、現場のリアルな課題・改善点を知っているためです。そして、率直な意見が上層部に上げられる前提となるのが、従業員が安心して自身の意見や考えを発言できる環境、つまり「心理的安全性」です。

心理的安全性とは、組織において「他のメンバーが自分の発言を拒絶したり、罰を与えたりしない」という確信を持っている状態のこと。心理的安全性の高い組織であれば、現場の従業員は安心して上司に自身の意見・考えを伝えられます。逆にいうと、心理的安全性の低い組織では、現場は上司に正直な意見を伝えられずに、ボトムアップが有効に機能しない恐れがあります。

現場の従業員の交流を促す

ボトムアップには従業員同士のコミュニケーション活性化もポイントです。意見は何気ない会話から生まれることが多々あるためです。そして、コミュニケーション活性化に寄与する取り組みの一つが「チームビルディング」です。

チームビルディングとは従業員一人ひとりが持つスキルや積み重ねてきた経験を発揮できるような環境を整え、組織の目標を達成できるチームを作るための取り組みのこと。

チームビルディングは研修や社内交流イベントなど、多様な部門の従業員が集める場面でも実施されます。チームビルディングにより、従業員同士の交流から化学反応が起こることで、新たなアイデアが創出される可能性が高まります。

管理職がボトムアップを意識したマネジメントをおこなう

現場からより多くの意見が集まるかどうかは、橋渡し役となる管理職のマネジメントが分岐点になり得ます。とくに管理職は以下の2点を意識したマネジメントをおこないましょう。

  • ●役割や目標を明確にした上で「自ら現場を改善しよう」という当事者意識を醸成する
  • ●周囲を巻き込むスキルを持つ従業員を育成する

なお、管理職自身も上がってくる意見をしっかり聞く姿勢が求められます。自身の傾聴力の意識も含め、管理職はボトムアップを意識したマネジメントをおこなうことが大切です。

まずはボトムアップに向いているかどうか検討してみよう

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ボトムアップでの意思決定を機能させることで現場のリアルな声を意思決定に反映させやすくなり、またイノベーション創出への寄与も期待されます。さらには現場の従業員のモチベーションも向上し得ます。

一方で、ボトムアップに適している組織と適していない組織に分かれるのも事実です。たとえば複数の事業・部門を持つ組織はボトムアップが有効だと考えられますが、安全性や事故リスク軽減がより重視される組織は導入にあたって慎重な議論が必要でしょう。

本記事を参考に、まずは企業内の組織毎にボトムアップが適しているかどうか、検討することから始めてみてはいかがでしょうか。

著者プロフィールHR Trend Lab編集部
タレントマネジメントやエンゲージメントなどの最新トレンドから、組織や人事にまつわる基本知識までマイナビ独自の視点でお届けいたします。
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