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上司は「職場デザイナー」 新入社員の組織社会化を考える

2023年07月07日更新


甲南大学経営学部教授 尾形真実哉氏

組織社会化という言葉をご存じでしょうか。組織への新規参入者(新入社員・中途社員)が、その組織に対して社会化する(適応する)ことを指す学術用語です。

その身近な例が、新入社員の職場適応。学生から社会人になり、自分をとりまく環境も生活も一変してしまう彼らが、スムーズに職場に適応しその実力を発揮するためにはなにが必要なのでしょうか。また、人事部門や新入社員を受け入れる現場社員はなにができるのでしょうか。

甲南大学で若年就業者の職場適応などを専門に研究されている尾形真実哉教授にお話を伺いました。

目次 【表示】

新入社員の「組織社会化」とは?

― 今日はよろしくお願いします。まずは「新入社員の組織社会化とはなにか」から伺わせてください。一般的に「オンボーディング」や「戦力化」と呼ばれている概念とは異なるものなのでしょうか?

尾形真実哉(以下、尾形):「組織社会化」は、平たくいうと「個人が会社などの組織へ積極的に馴染んでいくこと」を指します。たとえば私たちは、「日本社会の一員として日本の文化(価値観や規範)を身につけることによって社会化されている」といえるわけですが、これを組織のレベルで考えるのが「組織社会化」です。

今回のテーマである新入社員の組織社会化を例にとれば、新入社員それぞれの組織社会化を手助けするために、企業がおこなう活動が「オンボーディング」で、その結果として得られるのが「戦力化」である。このように理解していただければ大丈夫です。

― なるほど。ありがとうございます。いま、企業は少子高齢化にともなって、人員確保と確保した人員の早期戦力化という2つの大きな課題を抱えています。

尾形:これからの日本は、どんどん少子高齢化が進んで若年の労働者が減り続けます。それにともなって、新入社員の採用コストもかさんでいくでしょう。企業がせっかく採用できた新入社員を離職させず、迅速に戦力化して採用・教育コストを回収したいと考えるのは自然なことです。

一方で、もう少しマクロな視点から見ると、各企業が新入社員の組織社会化を上手におこなって戦力化していくことは、日本の産業全体から見ても重要なことだと考えています。

新入社員を迎え入れ、自社に馴染ませて、社内で活躍できる人材へと育てていく。それを繰り返すことで企業は成長の永続性を手に入れ、経済活動を続けられるからです。

― 企業成長の永続性を担保することの重要性は、多くの企業が気づきながらも、新入社員の組織への定着に課題を感じていると思います。

尾形:転職が当たり前の時代になっているため、新入社員の定着にはどの企業も苦労しています。そのため、教育・研修に力を入れてオンボーディングを丁寧におこない、離職させずに戦力化しようと工夫を重ねているわけです。

そして、学生側も丁寧に育ててほしいと考えています。私のゼミ生に「会社を選ぶ基準」を聞いてみると、「教育制度がしっかりしている会社」という答えが多いんです。一昔前にはあまりなかった回答ですよね。

その意味では、「人を大切にしている会社」を重視する学生と、教育・研修に力を入れて人材の定着と早期戦力化を図りたい企業の思惑が一致しているともいえるでしょう。

「やさしい」学校教育と、「きびしい」社会

― たしかに、マイナビで集計している学生調査でも多くの学生が企業に「成長環境」を求め、その前提として「研修制度がしっかりしていること」を重視していることがわかります。

>>『上司は「職場デザイナー」新入社員の組織社会化を考える』の続きはこちら

監修者プロフィール尾形 真実哉(おがた まみや)
甲南大学 経営学部 教授
2007年、神戸大学大学院経営学研究博士後期課程を修了。博士(経営学)。 同年4月より甲南大学経営学部専任講師。その後、准教授を経て2015年より現職。専門は組織行動論、経営組織論。研究テーマは若年就業者の組織適応、中途採用者の組織再適応、育成上手の研究など。 (2023年1月時点)
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