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企業のマネジメント層におけるリーダーシップの課題と解決方法を解説

2021年03月04日更新

マネジメント層(管理職)は、組織の上層部と現場の橋渡しを担う重要なポジションです。しかし、マネジメント層やその候補者の育成において課題を抱えている企業は少なくありません。今回は、企業のマネジメント層に求められる役割や、マネジメント層におけるリーダーシップの課題、マネジメント層のリーダーシップを醸成するための取り組みについて解説します。

目次 【表示】

「マネジメント層」とは?

一般的に、マネジメント層は大きく3つの階層に分かれています。

・トップマネジメント:社長や経営者など、企業や組織における最上位の人物や、その層を指す。経営計画の策定や事業の方向性の決定など、組織の根幹となる部分を担う。
・ミドルマネジメント:部長や課長など「中間管理職」と呼ばれる立場にある人物の層を指す。部署・部門における業務の運営や、部下の管理・育成、トップマネジメント層との業務調整などの役割を担う。
・ロワーマネジメント:係長や主任など、現場にもっとも近い立場で指揮や管理をおこなう人物の層を指す。ミドルマネジメント層からの指示や目標を達成すべく、現場の実務を遂行する社員に対して指揮や管理をする役割を担う。

一般的に、日本の企業では部長や課長などの管理職が「マネジメント層」として挙げられることが多いと言えるでしょう。

リーダーシップとマネジメントの違い

リーダーシップとマネジメントは、それぞれの意味は異なりますが、両方とも「企業の経営力を向上させるために必要な能力」であるため混同されることも少なくありません。では、リーダーシップとマネジメントには、どのような点に違いがあるのでしょうか。

リーダーシップの定義

リーダーシップは「指導力」「統率力」などと表現されることが多く、一般的には「組織の中で目標を定め、成果を出す能力」を意味します。

「マネジメントの父」と称され、世界的に有名な経営学者であるピーター・F・ドラッカーは、リーダーシップを下記のように定義づけています。

「リーダーシップとは、組織の使命を考え抜き、それを目に見える形で明確に確立することである。リーダーとは目標を定め、優先順位を決め、基準を定め、それを維持する者である」

近年では、リーダーシップは先天的な才能や資質だけではなく、トレーニングなどによって後天的に身に付けられる要素もあるとされています。そして、リーダーシップはマネジメント層のみに求められるものではなく、従業員一人ひとりがそれぞれの立場で求められる能力でもあります。

マネジメントの定義

マネジメントとは、企業経営の目標や目的の達成を目指して企業を発展させるために、人的資源や経営資産、リスクなどを管理することを指します。

マネジメントという言葉は研究者によってさまざまに定義されていますが、マネジメントの概念を最初に提唱したのは、ピーター・F・ドラッカーといわれています。ドラッカーは、マネジメントを「組織に成果を上げさせるための道具、機能、機関」と定義しました。つまりは人員や資金などのツールを駆使し、組織が成果を上げるための戦略や仕組み作りを「マネジメント」といいます。

企業におけるマネジメントの具体例としては、「中長期的な戦略の立案」「現状の分析・改善」「従業員の業務などの管理」のように多岐に渡ります。

マネジメント層に求められる役割

企業や組織によって「マネジメント層」の捉え方は異なります。ここでは、一般的な企業において人数が多く、部長や課長などの管理職を指す「ミドルマネジメント」に焦点を当て、求められる役割について解説します。

業務の管理

現場の業務生産性を向上させることは、マネジメント層に求められる役割の一つです。現場で起きる可能性の高い業務上のリスクの把握と対策をおこなうことで、被害を最小限に抑えるためのリスク管理もマネジメント層に求められます。また、部下の能力や得意不得意を把握し、より適切な作業や部署への配置異動に携わることもあります。

人と組織の管理

トップマネジメント層の補佐や、部下の育成・業務管理など、複数人との間に入ることで業務の管理や上下の調整役としての役割がマネジメント層には求められます。リーダーの立場として結果を出すために、部下の能力や適性を把握することで組織における役割を意識づけ、目標達成へ向けて組織を活性化させることも、マネジメント層の重要な役割です。

マネジメント層のリーダーシップにおける課題

企業のマネジメント層のリーダーシップを向上させるにあたっては、どのような課題があるのでしょうか。

マネジメントスキルの向上

HR総研が2020年7月に実施した「人事の課題とキャリアに関する調査」(※1)によると、企業における「現在の採用・人材育成・配置・人材ポートフォリオに関する課題」としては、「次世代リーダー育成」が56%でもっとも多く、続いて「マネジメントスキル向上」が42%という結果が出ました。

「最重要課題」においても、上記の項目はそれぞれ「次世代リーダー育成」が28%、「マネジメントスキル向上」13%となり、企業の次世代を担うリーダーの育成と、それに伴うマネジメントスキルの向上が企業の大きな課題となっていることがわかります。

同調査によると、具体的な課題として「マネジメントスキルが低いため、人材の定着が悪いことや業務分担が偏っている」「現状のマネジメントに忙殺され、長期的観点から会社経営を考えられる社員が少ない」など、マネジメントスキルに関する課題は多く挙がっています。

目標達成能力の向上

マネジメント層には、メンバーをマネジメントする能力以外にも、組織全体の成果を上げて目標を達成させる能力が求められます。そのためには、組織内における人間関係を円滑にするだけではなく、組織の目標を明確にし、部下の力を引き出すことが大切です。

目標を明確化して達成を目指すには、組織全体の課題やメンバーごとの課題をマネジメント層が理解し、解決へと導く必要があります。課題解決を目指すためのリーダーシップにはいくつかの定義がありますが、その一つに、日本の社会学者である三隅二不二(みすみじゅうじ)が提唱した「PM理論」と呼ばれるものがあります。

PM理論は、リーダーシップは、やるべきことを部下に明示して達成する「目標達成能力(P機能)」と、人間関係を良好に保つ「集団維持能力(M機能)」の能力要素で構成されています。PとMそれぞれのアルファベットの大文字、小文字で強弱が表現され、PM理論におけるリーダーシップの組み合わせは4通りあります。

PM:P・Mともに高く維持されている理想のリーダー。目標を明確にしているだけではなく、人間関係にも気を配っている。
Pm:目標提示や達成への努力に重点を置くが、組織内の人間関係にあまり気を配れていないリーダー。目標をメンバーに意識してもらう機会を増やす努力が必要である。
pM:目標よりも、人間関係を重視するリーダー。組織の風通しはよくなるが、成果を上げるための具体的な施策を考える必要がある。
pm:P・Mともに消極的なリーダー。組織内での存在意義が薄く、組織として課題の多い状態。

リーダーシップの要素には、先天的な要素と後からスキルとして獲得可能な後天的な要素の両方があります。加えて、目標達成能力と集団維持能力とでは、目標達成能力の方が、適切なトレーニングなどの仕組みで後天的に開発が可能であるといわれています。マネジメント層のリーダーシップ向上のためには、後天的に獲得が可能な目標達成能力の向上を目指すことも一つの課題といえるでしょう。

マネジメント層のリーダーシップにおける課題の解決方法

マネジメント層におけるリーダーシップの課題を解決するためには、どのような取り組みが求められるのでしょうか。

ジョン・アデアの掲げた「8つの行動」の実践

リーダーシップ論の第一人者であるジョン・アデアのリーダーシップモデルでは、「リーダーシップは先天的なものではなく、学ぶことで身に付けられる後天的なもの」と定義されています。リーダーとは「なにか」ではなく「なにをするか」という「行動」に焦点を当てていることが特徴であり、職種や環境を問わず、リーダーシップを醸成するために活用しやすいといえるでしょう。

リーダーが取るべき具体的な行動としては、以下の8つが挙げられています。

1.仕事を明確にする:「なぜこの仕事をするのか?」を、リーダー自らが組織や部下に示すことが求められます。
2.計画する:「どのように仕事を進めていくのか」を明確に示します。仕事を計画するときは、万が一の事態に備えた代替案の用意も欠かせません。
3.説明する:業務に取り掛かる前に、目的や計画を部下に説明します。組織に共通の目的意識を持たせることで、従業員個々の役割を明確にします。
4.統制する:業務を効率的に進められるように、個々のエネルギーを目標へと向けます。そのためには部下への効果的な指示や、規制ができる能力が必要です。
5.評価する:組織や部下の業績を見極め、正しい評価や査定をおこなうことが求められます。
6.動機づけをする:組織や部下が内在的、外在的にモチベーションを維持できるような動機付けを行います。
7.組織化する:組織の一貫性を保てるように、部下を育成します。
8.模範化する:リーダーは、常に部下から見られていることを意識し、「自らが模範となる行動」をすることが求められます。

これらの、「リーダーの核となる8つの行動」を実践することで、リーダーシップを発揮することにつながるとジョン・アデアは述べています。

「8つの行動」を実践するための具体的なアクション

上記の「リーダーの核となる8つの行動」のうち、ここではいくつかの項目をピックアップして、「8つの行動」を実践するための具体的なアクションについて紹介します。

「計画する」ためのアクション

マネジメント層には、自らの業務だけではなく、部下や組織内の業務の管理も求められます。部下の仕事を計画する際には、経営方針に沿った目標を立てた後に明確な期限を設定し、どのように仕事を進めたらよいのかを、部下へわかりやすく伝えることが必要です。

仕事の計画を管理する際には、その仕事のスタートから目標達成までの流れや詳細な業務内容を記載した「プロジェクト管理のための計画書」を使うことで、部下との仕事のすり合わせがスムーズに行えます。

「統制する」ためのアクション

同じ目標に向けて組織を統制する(一つにまとめる)ことは、業務効率化や目標達成に必要です。組織を統制するためには、部下からの信頼が欠かせないため、「約束を守る」など常日頃から相手の信頼を得る行動を積み重ねることが大切です。

部下に指示を出す際にも、「なぜこの指示を出したのか」について論理的に伝えることで相手の理解が得られ、納得してもらいやすくなります。部下がミスをしてしまった際には、感情的にならず、まずは論理的に話すことを意識してみましょう。

「評価する」ためのアクション

部下の行動や業績を見極めて公正な評価をおこなうことも、マネジメント層に求められる役割です。公正な評価のためには、自社の人事評価制度を理解し、評価基準を明確化することが重要です。また、人が人を評価する際に起こり得る「評価エラー」について事前に理解しておくことで、より客観的な評価をおこなえるでしょう。

部下を評価した後も定期的にフィードバックをおこなうことで、部下は評価に納得しやすくなり、今後の目標設定をより具体化することにもつながります。

研修を通じた人材育成

リーダーシップを醸成するための研修の機会を提供することで、企業のマネジメント層、あるいはそのポジションの候補層への人材育成をおこなうことができます。研修を受けることで、基本的なマネジメントの知識を深められ、実践でも活用できるリーダーシップやスキルの習得へとつながるでしょう。

まとめ

マネジメント層の捉え方は企業によって異なりますが、今回は、企業の中でも人数が多く、求められる役割も多い「ミドルマネジメント」に焦点を当て、求められる役割やリーダーシップの醸成について解説しました。

マネジメント層は企業の今後を担う重要なポジションであることから、企業における人材教育の課題の一つとしても挙げられています。マネジメント層を対象とした研修や人材教育を実施し、マネジメント層のスキルやリーダーシップの向上を目指すことで、企業のさらなる経営力向上へとつながるでしょう。

<出典>
※1. HR総研:人事の課題とキャリアに関する調査

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