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ケイパビリティとは?意味やビジネスでの有効な戦略を解説

2025年06月26日更新

手を合わせている様子

不確実で将来の予測が難しいVUCA時代において、企業は競合他社との差別化をおこない、独自の価値を出しながら事業を安定させていくことが求められています。しかし、優れた製品やサービス、技術といった一つの強みだけでは、世間の価値そのものが変化したときに、従来通りの優位性を保持し続けるのは難しいでしょう。

そこで大事なのが、組織全体が持つ強み・能力であるケイパビリティです。価値そのものの変化といった外的要因に左右されづらく、他社からも模倣されにくいビジネスプロセスを持ちあわせることが、安定性の高い、持続可能な事業をおこなうために必要とされています。

本記事では、ケイパビリティの概要や高めるメリット、ケイパビリティの把握と高める方法、戦略について紹介します。

目次 【表示】

ケイパビリティとは

ケイパビリティ(capability)は、「能力」「機能」といった意味を持つ言葉で、ビジネスにおいては、組織として保有する強みや能力を指します。

誤解されがちですが、自社の優れた製品やサービス、技術、設備、市場でのポジションといった個々の要素はケイパビリティではありません。製品を生み出すための研究力や開発力、販売力なども含めた、組織全体における強みが、企業のケイパビリティといえます。

グローバル化が進み、これまでよりも国内外の多くの企業との競争にさらされやすくなっている現代、競争力を維持していくためにケイパビリティが注目されています。

ケイパビリティの具体例として、写真フィルムの生産販売において世界的なシェアを誇り、高度な技術や知的財産を有していた日本企業が挙げられます。1990年代にデジタルカメラが急速に普及したことにより、写真フィルムの需要が激減しました。しかし、同社はそれをきっかけに既存の技術を再利用して、液晶保護フィルムや化粧品といったまったく新しい分野に進出し成功を収めました。

このように、需要の変化を捉え、競争優位性を生み出せる製品を開発する開発力、また、そのベースとなる組織力は同社のケイパビリティといえるでしょう。

コアコンピタンスとの違い

ケイパビリティと類似した言葉にコアコンピタンスがあります。コアコンピタンス(core competence)とは、他社には真似できない自社の核となる能力を指します。ケイパビリティがビジネスプロセス全体における強みであるのに対して、コアコンピタンスは自社の競争優位性を維持するうえで要となる特定の技術や、ビジネスプロセスにおける一部の能力を指すものです。

たとえば、優れた製品を生み出す技術力といったひとつの強みはコアコンピタンスです。しかし、それを世に流通させて安定的に多くの人の手に届けるためには、企画力や生産力、サプライチェーン、販売力、それを支える現場のチームワークなどまで含めた組織力の高さが重要になります。このように、さまざまな能力が合わさった組織としての総合的な強みがケイパビリティといえます。

ケイパビリティを高めるメリット

業績があがっている様子
企業がケイパビリティを高めることによるメリットはさまざまです。主な2つのメリットについて解説しましょう。

・事業の安定性・持続性に繋がる
・競合他社との差別化に繋がる

ケイパビリティは企業の内面的な能力の高さであるため、外的要因の影響を受けづらく、予測の難しいVUCA時代においても事業の安定性・持続性を確保するうえで役立つ要素です。

また、現代は技術革新のスピードが早いことから、独自技術であってもコモディティ化してしまう可能性があります。加えて、消費者ニーズの変化も早いことから、製品ライフサイクルも短期化する傾向にあります。

ケイパビリティは、企業が独自に発展させた能力の高さであるため、「技術」や「製品」よりも他社に模倣されづらく、競合他社との差別化要因になります。
ではどのように差別化を図ればよいのでしょうか。自社のケイパビリティを高める戦略についても見ていきましょう。

企業のケイパビリティを高めるポイント

企業のケイパビリティを高めるにはどのような方法があるのか、2つの方法を紹介します。

人材育成の強化

企業のビジネスプロセス全体を支えるのは人材です。そのため、ケイパビリティを高めるうえでは人材育成が欠かせません。

人材育成の基礎となる「OFF-JT」「OJT」のほか、仕事のやりがいを高める取り組みやエンゲージメント向上にも取り組むことが大切です。エンゲージメントが高まると、情報やアイデアがより円滑に共有されるようになり、イノベーションが促進されます。

あわせて、「問題解決力」「クリティカルシンキング」といったビジネススキルを高める機会を社員に提供することで、不確実性の高いVUCA時代においても広い視野で問題解決できる人材が育成され、自社のケイパビリティを高めることにつながります。

業務プロセスの改善

自社の持つ強みを最大限に発揮するためには、既存の業務の手順や工程を見直し、業務プロセスの改善を図ることが重要です。具体的には、既存の業務の一部を自動化するツールを取り入れるといった方法があります。

また、外部のコンサルティングサービスなどを活用して自社分析・競合分析を客観的におこない、それをもとに業務プロセスを見なおすことも有効です。

業務プロセスにおける自社の強みや弱み、潜在的なリスクについて分析することで、強みを活かし、弱みを補強するための改善案を検討できます。また、競合分析をおこなうことで、自社の業務プロセスに応用したり、差別化を図ったりするためのアイデアが生まれる可能性もあります。

ケイパビリティを把握するフレームワークと活かし方

自社のケイパビリティを把握するフレームワークとして「SWOT分析」と「クロスSWOT分析」「バリューチェーン分析」、それぞれの活用ポイントについて紹介します。

SWOT分析

SWOT分析とは、Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の4つの分析の切り口から構成された言葉です。自社の内部環境と、自社を取り巻く外部環境について、それぞれのプラス面、マイナス面を分析する手法です。

[内部環境]
強み:資産やブランド力、価格や品質、技術力、サービス、社員数など
弱み:自社の弱点

[外部環境]
機会:競合や法律、市場規模やトレンド、市場の成長性、社会の経済状況など
脅威 市場に起こり得る脅威

SWOT分析

SWOT分析は自社事業の強みや弱み、自社にとっての機会や脅威(リスク)について把握し、相対的に評価できます。
分析結果を競合他社と比較することで、自社の組織全体が持つ能力や強み、立ち位置が明確になり、ケイパビリティが把握できるでしょう。それによって、ケイパビリティを生かした事業戦略の策定や、マーケティングにおける意思決定などに役立ち、リソースの最適化を図ることができます。

SWOT分析を戦略に活用するポイント

SWOT分析は経営戦略を立てる際に有効なフレームワークとして活用される手法ですが、主観的判断や分析の甘さがあると、分析結果そのものが実態とずれる可能性があります。
以下の3つのポイントに注意を払うことで、より効果的な活用を目指せます。

  • ・目的・目的意識の明確化:SWOT分析をおこなう理由が明瞭でなければ分析自体が甘くなるため、目指す事業のビジョン、経営状況を明確に描く
  • ・自社の状況や顧客層、ターゲットとする市場の明確化:外部環境に対して内部環境の強みと弱みを的確に把握するため、分析する要素を抽出し、徹底して細かく分析する
  • ・分析に適した人材による状況分析と現状把握:分析する人の主観を混ぜない。SWOT分析は企業全体の状況を把握する必要があるため、各部署から分析に適した人材を選出する

クロスSWOT分析

クロスSWOT分析とは、SWOT分析の4つの項目を掛け合わせてマーケティング戦略に活用するものです。クロスSWOT分析を用いることで、SWOT分析で明確化した強みと弱みを具体的に戦略に落とし込むことが可能になります。

[強み×機会=SO戦略]
自社の強みと外部のプラス要因である機会(チャンス)がかけ合わさった状態。市場に対し強みを有意に発信し、シェア拡大を狙うための戦略
[強み×脅威=ST戦略]
自社の強みに対して外部のマイナス要因である脅威(リスク)がある状態。強みを活かして状況を改善する、もしくは他社との差別化を図るなど、脅威を機会に変えるための戦略
[弱み×機会=WO戦略]
自社の弱みに対して外部のプラス要因である機会がかけ合わさった状態。他社との差別化など、弱みを克服しチャンスを獲得するための戦略
[弱み×脅威=WT戦略]
自社の弱みと脅威がかけ合わさった状態で、最悪のシナリオを回避するための戦略。撤退もしくは事業の縮小化といった大きな決断が求められる領域

クロスSWOT分析を戦略に活用するポイント

クロスSWOT分析は、4つの手順で進めます。

  1. SWOT分析を行う目的を明確にする
  2. 2:SWOT分析によって、強み、弱み、機会、脅威を洗い出す
  3. 3:SWOT分析によって洗い出した要素をクロスSWOT分析に当てはめる
  4. 4:どの戦略オプションを実行するか、優先順位をつけて絞り込む

クロスSWOT分析で効果的な戦略を立案するためには、SWOT分析が確実に行われていることが前提となります。個人の主観で判断されることのないよう部署や立場の異なる複数人で実行し、議論の迷走を避けるためにクロスSWOT分析を行う目的を明確にし、共有することが重要です。

バリューチェーン分析

バリューチェーンとは、企業の事業活動全体を、最終的な付加価値につながる一連の流れとして捉える「価値連鎖」のフレームワークです。

他社にない強みや、自社内の弱みもすべて連鎖して価値が創出されることを踏まえ、販売後のアフターサービスまでを包括した分析を行います。バリューチェーン分析により、目に見えていた強みや弱みに対して、違う角度から評価することも可能になるでしょう。

バリューチェーン分析は、事業活動を「主活動」と「支援活動」の2つに分け、付加価値が生まれている活動を見極めます。業種によって活動の細分化が異なるため、それぞれの活動を細かく洗い出すことから始めます。

主活動(Primary Activities)

主活動とは、製品やサービスを販売するための活動を指します。

【主活動の主な分類】

  • ・原材料や部品の購買、保管、在庫管理など
  • ・原材料を用いた製造、加工、組み立てなど
  • ・完成した製品の保管・貯蔵、出荷、配送など
  • ・マーケティングと販売、購買活動の促進など
  • ・顧客に向けたサービスやサポートなど

支援活動(Support Activities)

支援活動とは、主活動を支援・補完する活動を指します。

【支援活動の主な分類】

  • ・原材料や部品、機器の調達に関する活動
  • ・製品の製造を効率化するための技術開発
  • ・人材の採用、研修やマネジメント、人事管理など人的資源についての管理
  • ・経営、財務、法務など企業運営を支える基盤となるインフラ

バリューチェーン分析を戦略に活用するポイント

バリューチェーン分析は、高い精度で分析をおこなうことで、競争優位性の源泉がどこにあるかを特定するものです。一般的に、以下のフローを用いて進め、戦略に活用します。

  1. 「主活動」「支援活動」を洗い出し、自社のバリューチェーンを把握
  2. 活動ごとにかかるコストの算出・分析
  3. 自社の強み・弱みの分析、競合比較
  4. VRIO(ブリオ)分析

1〜3の分析・比較によって競争優位の源泉が特定できれば、戦略の設計に活用できます。4の「VRIO分析」では、各活動の質の見極めを行います。

VRIO分析とは、内部リソースを評価・分析するフレームワークです。

  • ・Value(経済的価値)……製品やサービスが顧客の求める価値を提供できているかを評価する
  • ・Rarity(希少性)……市場において、自社の能力やリソースがどれほどユニークな位置にあるかを評価する
  • ・Imitability(模倣可能性)……自社の能力やリソースが、競合他社にとってどれほど模倣しづらいかを評価する
  • ・Organization(組織)……保有する経営資源を維持し、活用し続けるための組織能力を評価する

競合優位性や強みに対してVRIOそれぞれの視点でYes/No評価を行い、Yesの数で競争優位の有無を判定します。VRIO分析は、経営戦略を立てる際にカバーしたい弱みの把握に活用できます。

SWOT分析、クロスSWOT分析、バリューチェーン分析、VRIO分析を重ねることで、より精緻な分析が可能となります。他社にとって模倣が困難な自社の価値や希少性を深い部分まで明確にすることで、市場優位性の維持に必要な要素が見極められます。

ケイパビリティ効果を高める2つの戦略

グラフとそれを指す指
ケイパビリティを有効活用する、ケイパビリティを取り入れた戦略を2つ解説します。

ケイパビリティ・ベース企業戦略

自社の競争優位性を確保するために、明確化した自社のケイパビリティを最大限生かして戦略を立てることを「ケイパビリティ・ベース競争戦略」と呼びます。

以下の4つの原則を実践しながら策定・実行していくことで、競合他社に模倣されにくい自社ならではの強みとなり、競争優位性を生み出すことができます。

【4つの原則】

  • ・経営戦略を担うトップ(経営陣)が推進する
  • ・製品や市場よりもビジネスプロセスを重視する
  • ・自社の中心的なビジネスプロセスを戦略的な強みとなるように変換する
  • ・部門同士を結ぶインフラ整備に投資し、各部門の強みを最大化する

ダイナミック・ケイパビリティ戦略

自社の持つ強みを最大限に発揮するためには、既存の業務の手順や工程を見直し、業務プロセスの改善を図ることが重要です。具体的には、既存の業務の一部を自動化するツールを取り入れるといった方法があります。

また、外部のコンサルティングサービスなどを活用して自社分析・競合分析を客観的におこない、それをもとに業務プロセスを見なおすことも有効です。

業務プロセスにおける自社の強みや弱み、潜在的なリスクについて分析することで、強みを活かし、弱みを補強するための改善案を検討できます。また、競合分析をおこなうことで、自社の業務プロセスに応用したり、差別化を図ったりするためのアイデアが生まれる可能性もあります。

ケイパビリティを取り入れた2つの戦略

打ち合わせをしている様子
ケイパビリティを有効活用する、ケイパビリティを取り入れた戦略を2つ解説します。

ケイパビリティ・ベース競争戦略

自社の競争優位性を確保するために、明確化した自社のケイパビリティを最大限生かして戦略を立てることを「ケイパビリティ・ベース競争戦略」と呼びます。

以下の4つの原則を実践しながら策定・実行していくことで、競合他社に模倣されにくい自社ならではの強みとなり、競争優位性を生み出すことができます。

【4つの原則】

  • ・経営戦略を担うトップ(経営陣)が推進する
  • ・製品や市場よりもビジネスプロセスを重視する
  • ・自社の中心的なビジネスプロセスを戦略的な強みとなるように変換する
  • ・部門同士を結ぶインフラ整備に投資し、各部門の強みを最大化する

ダイナミック・ケイパビリティ

事業を取り巻く環境が目まぐるしく変化する現代においては、外部環境や状況の変化次第では、自社の「強み」が「弱み」に転じてしまう恐れもあります。

そこで注目されているのが、カリフォルニア大学バークレー校ハース・ビジネススクール教授であるデイヴィッド・J・ティース氏によって提唱された「ダイナミック・ケイパビリティ」です。

ダイナミック・ケイパビリティとは、企業が変革によって競争優位性を獲得し、持続できるような能力であり「企業変革力」ともいわれています。具体的には以下3つの能力が含まれています。

感知(センシング)……危機やリスクを素早く察知する
捕捉(シージング)……チャンスを捉え、今あるリソース(資産・知識・技術)を再構成して競争力を獲得する
変容(トランスフォーミング)……競争力を持続させるために、組織全体を刷新する

ダイナミック・ケイパビリティを高めることで、顧客ニーズの変化や新しい環境、新しいビジネスチャンスへの適応力を高めることができます。

ケイパビリティを高めてVUCA時代を生き抜ける企業になる

ケイパビリティを高めることは、他社から模倣されにくいビジネスプロセスを築くことといえます。変化が多いVUCA時代を生き抜くためにも、企業にとって必要な能力の一つといえるでしょう。

本記事を参考に、人材育成や業務プロセスの改善をおこない、ケイパビリティを高めてみてはいかがでしょうか。

著者プロフィールHR Trend Lab編集部
タレントマネジメントやエンゲージメントなどの最新トレンドから、組織や人事にまつわる基本知識までマイナビ独自の視点でお届けいたします。
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