ケイパビリティとは?VUCA時代を生き抜くために必要な自社のケイパビリティを把握して高める方法
不確実で将来の予測が難しいVUCA時代において、企業は競合他社との差別化をおこない、独自の価値を出しながら事業を安定させていくことが求められています。しかし、優れた製品やサービス、技術といった一つの強みだけでは、世間の価値そのものが変化したときに、従来通りの優位性を保持し続けるのは難しいでしょう。
そこで大事なのが、組織全体が持つ強み・能力であるケイパビリティです。価値そのものの変化といった外的要因に左右されづらく、他社からも模倣されにくいビジネスプロセスを持ちあわせることが、安定性の高い、持続可能な事業をおこなうために必要とされています。
本記事では、ケイパビリティの概要や高めるメリット、ケイパビリティの把握と高める方法、戦略について紹介します。
ケイパビリティとは
ケイパビリティ(capability)は、「能力」「機能」といった意味を持つ言葉で、ビジネスにおいては、組織として保有する強みや能力を指します。
誤解されがちですが、自社の優れた製品やサービス、技術、設備、市場でのポジションといった個々の要素はケイパビリティではありません。製品を生み出すための研究力や開発力、販売力なども含めた、組織全体における強みが、企業のケイパビリティといえます。
グローバル化が進み、これまでよりも国内外の多くの企業との競争にさらされやすくなっている現代、競争力を維持していくためにケイパビリティが注目されています。
ケイパビリティの具体例として、写真フィルムの生産販売において世界的なシェアを誇り、高度な技術や知的財産を有していた日本企業が挙げられます。1990年代にデジタルカメラが急速に普及したことにより、写真フィルムの需要が激減しました。しかし、同社はそれをきっかけに既存の技術を再利用して、液晶保護フィルムや化粧品といったまったく新しい分野に進出し成功を収めました。
このように、需要の変化を捉え、競争優位性を生み出せる製品を開発する開発力、また、そのベースとなる組織力は同社のケイパビリティといえるでしょう。
コアコンピタンスとの違い
ケイパビリティと類似した言葉にコアコンピタンスがあります。コアコンピタンス(core competence)とは、他社には真似できない自社の核となる能力を指します。ケイパビリティがビジネスプロセス全体における強みであるのに対して、コアコンピタンスは自社の競争優位性を維持するうえで要となる特定の技術や、ビジネスプロセスにおける一部の能力を指すものです。
たとえば、優れた製品を生み出す技術力といったひとつの強みはコアコンピタンスです。しかし、それを世に流通させて安定的に多くの人の手に届けるためには、企画力や生産力、サプライチェーン、販売力、それを支える現場のチームワークなどまで含めた組織力の高さが重要になります。このように、さまざまな能力が合わさった組織としての総合的な強みがケイパビリティといえます。
ケイパビリティを高めるメリット
企業がケイパビリティを高めることによるメリットはさまざまですが、ここでは2つ紹介します。
・事業の安定性・持続性に繋がる
・競合他社との差別化に繋がる
ケイパビリティは企業の内面的な能力の高さであるため、外的要因の影響を受けづらく、予測の難しいVUCA時代においても事業の安定性・持続性を確保するうえで役立つ要素です。
また、現代は技術革新のスピードが早いことから、独自技術であってもコモディティ化してしまう可能性があります。加えて、消費者ニーズの変化も早いことから、製品ライフサイクルも短期化する傾向にあります。
ケイパビリティは、企業が独自に発展させた能力の高さであるため、「技術」や「製品」よりも他社に模倣されづらく、競合他社との差別化要因になります。
自社のケイパビリティを把握する方法
自社のケイパビリティを把握する方法の一つに「SWOT分析」があります。
SWOT分析とは、Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の4つの分析の切り口から構成された言葉です。自社の内部環境と、自社を取り巻く外部環境について、それぞれのプラス面、マイナス面を分析する手法です。
外部環境……競合や法律、市場トレンド
内部環境……資産やブランド力、価格や品質
SWOT分析は自社事業の強みや弱み、自社にとっての機会や脅威(リスク)について把握し、相対的に評価できます。
分析結果を競合他社と比較することで、自社の組織全体が持つ能力や強み、立ち位置が明確になり、ケイパビリティが把握できるでしょう。それによって、ケイパビリティを生かした事業戦略の策定や、マーケティングにおける意思決定などに役立ち、リソースの最適化を図ることができます。
企業のケイパビリティを高める方法
企業のケイパビリティを高めるにはどのような方法があるのか、2つの方法を紹介します。
人材育成の強化
企業のビジネスプロセス全体を支えるのは人材です。そのため、ケイパビリティを高めるうえでは人材育成が欠かせません。
人材育成の基礎となる「OFF-JT」「OJT」のほか、仕事のやりがいを高める取り組みやエンゲージメント向上にも取り組むことが大切です。エンゲージメントが高まると、情報やアイデアがより円滑に共有されるようになり、イノベーションが促進されます。
あわせて、「問題解決力」「クリティカルシンキング」といったビジネススキルを高める機会を社員に提供することで、不確実性の高いVUCA時代においても広い視野で問題解決できる人材が育成され、自社のケイパビリティを高めることにつながります。
業務プロセスの改善
自社の持つ強みを最大限に発揮するためには、既存の業務の手順や工程を見直し、業務プロセスの改善を図ることが重要です。具体的には、既存の業務の一部を自動化するツールを取り入れるといった方法があります。
また、外部のコンサルティングサービスなどを活用して自社分析・競合分析を客観的におこない、それをもとに業務プロセスを見なおすことも有効です。
業務プロセスにおける自社の強みや弱み、潜在的なリスクについて分析することで、強みを活かし、弱みを補強するための改善案を検討できます。また、競合分析をおこなうことで、自社の業務プロセスに応用したり、差別化を図ったりするためのアイデアが生まれる可能性もあります。
ケイパビリティを取り入れた2つの戦略
ケイパビリティを有効活用する、ケイパビリティを取り入れた戦略を2つ解説します。
ケイパビリティ・ベース競争戦略
自社の競争優位性を確保するために、明確化した自社のケイパビリティを最大限生かして戦略を立てることを「ケイパビリティ・ベース競争戦略」と呼びます。
以下の4つの原則を実践しながら策定・実行していくことで、競合他社に模倣されにくい自社ならではの強みとなり、競争優位性を生み出すことができます。
【4つの原則】
・経営戦略を担うトップ(経営陣)が推進する
・製品や市場よりもビジネスプロセスを重視する
・自社の中心的なビジネスプロセスを戦略的な強みとなるように変換する
・部門同士を結ぶインフラ整備に投資し、各部門の強みを最大化する
ダイナミック・ケイパビリティ
事業を取り巻く環境が目まぐるしく変化する現代においては、外部環境や状況の変化次第では、自社の「強み」が「弱み」に転じてしまう恐れもあります。
そこで注目されているのが、カリフォルニア大学バークレー校ハース・ビジネススクール教授であるデイヴィッド・J・ティース氏によって提唱された「ダイナミック・ケイパビリティ」です。
ダイナミック・ケイパビリティとは、企業が変革によって競争優位性を獲得し、持続できるような能力であり「企業変革力」ともいわれています。具体的には以下3つの能力が含まれています。
・感知(センシング)……危機やリスクを素早く察知する
・捕捉(シージング)……チャンスを捉え、今あるリソース(資産・知識・技術)を再構成して競争力を獲得する
・変容(トランスフォーミング)……競争力を持続させるために、組織全体を刷新する
ダイナミック・ケイパビリティを高めることで、顧客ニーズの変化や新しい環境、新しいビジネスチャンスへの適応力を高めることができます。
ケイパビリティを高めてVUCA時代を生き抜ける企業になる
ケイパビリティを高めることは、他社から模倣されにくいビジネスプロセスを築くことといえます。変化が多いVUCA時代を生き抜くためにも、企業にとって必要な能力の一つといえるでしょう。
本記事を参考に、人材育成や業務プロセスの改善をおこない、ケイパビリティを高めてみてはいかがでしょうか。