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リスクマネジメントの基本!リスクの種類と具体的な対策を解説

2023年09月27日更新

リスクマネジメントとは、リスクを適切に評価し組織全体として損失を回避したり、軽減したりするためのプロセスです。事業や社会環境が複雑化するなかで、企業はさまざまなリスクにさらされています。そのためリスクマネジメントの必要性は年々増しており、顧客やステークホルダーからの信頼を獲得するためにも欠かせない取り組みといえるでしょう。

一方で、具体的にどう対応をすればよいかわからない、という企業は少なくありません。本記事では、リスクマネジメントの概要やポイントを解説しながら、企業内でどのようにリスクマネジメントに取り組めばいいのかをご紹介します。

目次 【表示】

リスクマネジメントとは

リスクマネジメントは、組織におけるリスクの管理(マネジメント)を通じて、損失の回避や軽減をするプロセスです。とくに重要なのは、企業価値を維持・向上させるために、経営上の障害となるリスクおよびその影響を正確に把握し、事前に対策を立てることです。これによりリスクの発生を避け、万が一実害が発生した場合でも損失を最小限に抑えられます。

近年では、ビジネス環境のさまざまな変化により、新たなリスクも出てきています。具体的には、業務の複雑化による意思決定ミス、アウトソーシングの増加に関連する品質管理の問題、デジタル化によるサイバーセキュリティの脅威などが考えられます。

これらの新たなリスクに対応するためにも、リスクマネジメントの重要性は今まで以上に高まり、企業には積極的なリスクマネジメントが求められているのです。

企業を取り巻くリスクとはなにか?想定されるリスクの種類

リスクは一般的に、「純粋リスク(マイナスのリスク)」と「投機的リスク(プラスとマイナスのリスク)」の2つに分類されます。純粋リスクは損失のみを発生させるリスクのことで、安全対策の強化や緊急時の対応計画作りなどを通じて管理しやすいため、従来のリスクマネジメントでは主に純粋リスクに焦点が当てられていました。

しかし、組織は純粋リスクだけでなく、投機的リスクにも直面しています。これは損失だけでなく、利益を生む可能性があるリスクを指します。昨今の経済環境の変動、技術進歩、競争環境の激化などに伴い、投機的リスクへの対応の重要性が高まっているのです。

したがって、リスクマネジメントに取り組む際には、これら両方のリスクを対象として扱わなくてはなりません。

純粋リスク:損失のみを発生させるリスク。大きく以下の4つに分類される。

財産リスク 物質的な資産が被害を受けるリスク。火災により工場が全焼し、製造機械や在庫が損失するなど。
費用・利益リスク 予期しない追加の費用が発生したり、見込んでいた利益が得られなかったりするリスク。大規模な機器の故障で製造が止まり、見込んでいた利益が得られなくなるなど。
人的リスク 組織の人材に関連するリスク。主要な従業員が急に退職する、または重要なスキルを持つ従業員が長期の病欠をとるなど。
賠償責任リスク 製品の欠陥や業務上の過失により、他者に対する賠償責任が発生するリスク。製品の設計欠陥により顧客が怪我をし、その結果、企業が大きな賠償金を支払わなければならないケースなど。

 

投機的リスク:損失だけでなく、利益を生む可能性のあるリスク。大きく以下の4つに分類される。

経済的情勢変動リスク マクロ経済の変動によって生じるリスク。金利変動や為替変動により損失を被る可能性がある一方で、有利な金利や為替レートを活用した場合、投資や貿易から利益を得る可能性もある。
政治的情勢変動リスク 政治の不安定性や政策の変更により生じるリスク。企業が海外に工場を持っている場合、その国の政治的不安定性や戦争、政策の変更により、生産活動に影響が出る可能性がある。
法的規制の変更に関するリスク 法律や規制の変更によって生じるリスク。環境規制の強化により、製造プロセスを変更しなければならなくなったケースや、規制緩和により取り扱えるサービスが増え、利益の増加が見込めるケースなど。
技術的情勢変動リスク 新しい技術の進歩や技術革新によって生じるリスク。企業が現在生産している製品が、新たな技術によって陳腐化し売上が大幅に減少する場合などが該当する。一方、新技術をいち早く採用し、市場に先駆けて新製品を投入できれば大きな利益を得られる可能性もある。

 

リスクマネジメントの必要性

リスクマネジメントは現代の企業経営において不可欠な要素であり、企業が直面する多種多様なリスクから企業を保護します。リスクマネジメントに真剣に取り組まなければ、企業の財務的な損失はもちろん、企業の信頼やブランド価値に大打撃を与え、経営そのものが危機に瀕する可能性も否定できません。

反対に、積極的なリスクマネジメントをおこなうことで、事前にリスクを特定し、評価できます。それにより対策を策定することが可能となり、リスクが現実化した際もその影響を最小限に抑えられます。

さらに、リスク管理の体制を整えることで、企業の意思決定や業務プロセスが効率化されます。具体的には、リスクの評価と順位付けにより、企業資源を効果的に分配し、問題解決の優先順位を明確にできます。これは、結果的に業績の向上にも寄与するでしょう。

そしてリスクマネジメントは、ステークホルダーからの信頼獲得にも重要な役割を果たします。近年、投資家は企業の評価基準としてESG(環境、社会、ガバナンス)の要素を重視する傾向が強まっており、リスクマネジメントはとくにガバナンスの観点から評価されます。

こうした状況に鑑み、リスクマネジメントに積極的に取り組むことで、投資家からの信頼を得ることができます。そのため、リスクマネジメントは企業の持続可能な成長を支える重要な要素にもなります。

リスクマネジメントのプロセス

リスクマネジメントのプロセスは、「JIS Q 31000:2010」という日本工業規格として規格化されています。この規格は国際規格ISO31000をもとにつくられており、組織経営の取り組みプロセスを明確化し、企業がリスクマネジメントを推進するにあたり有用な指針となることが期待されています。

JIS Q 31000:2010に沿って、リスクマネジメントの流れを紹介します。

コミュニケーションと協議

組織内外のステークホルダーとの対話を通じて、リスクマネジメントの理解を深めるとともに、それらのステークホルダーの期待を明確にする重要なプロセスです。ステークホルダーの期待や社会環境は日々変化するため、このプロセスはリスクマネジメントの各ステージで継続的に実施する必要があります。

組織の状況の確定

組織の現状を明らかにし、リスクマネジメントの範囲や重要なリスクの基準を設定します。たとえば、グループ会社のどこまでをリスクマネジメントの対象とするのか、どの程度のリスクが組織にとって重大であるかを前もって定義します。これらのルールや基準は組織の個別の状況により設定され、リスクマネジメントをおこなうための基盤となります。

リスクアセスメント

この段階では、外部環境や内部環境から潜在的なリスク要因を洗い出し、リスクの源泉を明らかにします。リスクの特定には、ブレインストーミング、業務プロセス分析、インタビュー、ワークショップ、過去の事例分析などの方法が活用されます。そしてリスクを特定したら、その事象の起こりやすさや影響などを分析します。

最後に「発生確率×影響度」によってリスクを評価し、対応の重要度を算定します。

リスク対策を検討・実施する

次に、特定されたリスクに対して適切な対策を検討し、実施します。リスク対策には「リスクコントロール」と「リスクファイナンシング」の2つのアプローチがあります。

前者はリスクを予防したり被害が拡大するのを防いだりするためのリスク対策です。一方、後者のリスクファイナンシングは、損害発生を見越したうえで資金的な手当を事前にすることを指します。

両者を組み合わせながら、リスクの性質や企業の戦略に応じて効果的なリソース配分をおこないます。

モニタリングとレビュー

このプロセスでは、リスク対策の成果を定期的にモニタリングし、新たなリスクの発生や変化に対応できるよう、リスクマネジメントのプロセスを継続的に見直します。効果測定や是正の実施により、リスクマネジメントの体制が改善し、組織のリスク耐性が向上していきます。

リスクマネジメントの具体的な取り組み

リスクマネジメントは組織にとって避けては通れない重要な課題です。ここでは、リスクマネジメントを具体的に進めるための手法を2つご紹介します。

トップダウン型のリスクマネジメント体制の構築

経営層からスタートするトップダウン型のアプローチは、組織全体にリスクマネジメントの方針と方法を明確に伝えるための重要な手段です。経営層が直接、リスクマネジメントの意義を強調し、その重要性を全社員に理解させることで、組織全体でリスクマネジメントに取り組めます。

社員教育や研修によるリスク意識の向上

社員一人ひとりがリスクに対する意識を持つことが、リスクマネジメントを組織全体で推進する上で不可欠です。研修や教育プログラムを通じて、社員が日々の業務中にリスクを見つけ、適切に対応できる能力を身につけることを目指します。これにより、リスクの早期発見・対応が可能となり、組織としてのリスク回避力が強化されます。

まとめ

リスクマネジメントは、企業が直面するリスクを適切に管理し、未来の不確実性に対応する手法です。これらのリスクは財産、費用、人的、賠償責任などさまざまであり、またマクロ経済や政治情勢によっても左右されます。

リスクマネジメントは企業が持続的に成長するための重要な取り組みであり、近年においてはビジネス環境の変化に伴い、積極的なリスクマネジメントが求められていることは本文で説明した通りです。

そのためには、社員一人ひとりがリスクに関する知識を深め、リスクマネジメントに対する意識を持ち、全社で対応していくことが重要です。

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