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HRBPとは?求められるスキルや人事との違い、導入成功のポイントも解説

2023年10月04日更新

労働環境の急速な変化を背景に、昨今注目を集めている役割「HRBP」。HRBPとは「人事戦略の構築および実行を通じて事業成長を目指す、経営者・事業責任者のビジネスパートナー」です。

HRBPは人事機能の一つですが、人事とは明確に役割が異なります。この記事では、HRBPの役割や人事との違い、導入のポイントなどを解説します。

目次 【表示】

HRBPとは?

HRBP(Human Resource Business Partner)とは、経営者・事業責任者のビジネスパートナーとして、両者と同じ視点に立ち人事戦略を構築・実行することで、人的資源の側面から事業の成長を実現する役割を指します。HRBPは、経営戦略と人的資源管理の連携・連動により企業の競争力向上を目指す考え方である「戦略人事」を実現するための人事機能の一つです。

具体的には、事業成長に向けて人事課題を捉え、採用活動や人事制度設計、組織設計、現場社員の声を踏まえた職場改善提案などをおこなうのがHRBPの仕事です。「HRビジネスパートナー」とも呼ばれることがあります。

人事との違い

人事との大きな違いは「役割」です。人事は、社員に関わる仕組みや制度の整備および運用管理など、主にオペレーション業務を担います。具体的には人事制度の設計や採用活動、労務管理、人材育成、人材配置などが主な業務になります。総じて人事の仕事は、既存の規則を管理・維持する「守り」の姿勢が強いといえるでしょう。

一方で、HRBPはオペレーション業務も担いますが、主に経営者の視点を持って、人事戦略の立案およびその戦略に則った人材採用や育成、それに必要なタレントマネジメントなどを実行するのが仕事です。人事と比較すると、新たな動き・取り組みを進める「攻め」の姿勢が強いといえます。

CHROとの違い

人事以外にもHRBPとよく似た役割に、「CHRO(Cheif Human Resorce Officerの略。最高人事責任者)」があります。CHROとは、人事領域における執行責任を持つ人材を指します。

HRBPとCHROとの違いは「立場」です。HRBPがあくまでビジネスパートナーという立場で業務を遂行する一方、CHROは人事における執行役として、会社に対して経営責任を負う立場になります。

つまり、HRBPはコンサルタントのような立ち位置である一方、CHROは経営の意思決定にも携わる立場である、という違いがあるのです。

HRBPが求められている背景

日本でHRBPが求められている背景には、「労働を取り巻く環境の急速な変化」が挙げられます。

昨今は、テレワークの普及や生産労働人口の減少による人材獲得競争の激化、グローバル化に伴うグローバル人材やDX推進によるデジタル人材の需要増加など、労働に関する環境は大きく変化しています。こうした目まぐるしく変化する労働環境に対し、企業においてもスキルや経験など求められる人材要件が変化してきており、また企業の成長や経営目標達成における人材の重要性は増しています。

しかし、従来の人事では変化の激しい労働環境や企業の動きのなかで、企業の成長および経営目標の達成につながる組織開発や人材開発、人材採用などの人事戦略まで踏み込むことは難しいでしょう。このような背景のもと、変化の激しい労働環境や企業の動きに柔軟に対応し、必要な人事戦略を実行できるHRBPが求められているのです。

HRBPに求められる能力・スキル

HRBPには「経営者の視点で戦略・事業を考える力」および「コミュニケーション能力」が必須のスキルとなります。ここでは両スキルについて解説します。

経営者の視点で戦略・事業を考える力

HRBPは現場の声や業界動向などをもとに、経営者や事業責任者と議論を交わし、事業成長のために戦略を練る必要があります。そのため、HRBPには「ビジネスに関する深い知見」や「自社の事業に関する現在の市場感」、「競合や自社の状況の客観的な把握」が不可欠です。

これら3つの要素は、まさに“経営者の視点”が必須と言えるでしょう。またHRBPには経営者・事業責任者のビジネスパートナーという側面があるため、その意味でも経営者視点で戦略・事業を考えることが重要になります。

コミュニケーション能力

HRBPは「経営層との議論・連携」や「現場の実情(業務プロセスや部署間の連携など)を理解し、組織全体の状態を把握すること」が求められます。また現場の実情を理解するためには、「現場の社員と信頼関係を構築」し、現場の社員の本音を引き出す必要があるでしょう。

これら3つの要素に共通して求められるスキルが「コミュニケーション能力」です。HRBPは現場の社員から経営層まで、コミュニケーション能力を駆使して幅広いレイヤーの社員と関係を築き、本音を言い合える関係を構築しなければなりません。

HRBPの導入を成功させる3つのポイント

続いて、HRBPの導入を成功させる3つのポイントを解説します。

適切なHRBP人材を選定する

まずHRBPに適した人材を選定する必要があります。求められる専門性の高さから、多くの企業ではHRBP人材は社内で育成する場合が多いでしょう。その際、前述したHRBPに求められる以下2つのスキルの有無を軸に人物を選抜します。

●経営者の視点で戦略・事業を考える力
●コミュニケーション能力

HRBPというと「人事領域に関する経験」が重要だと考える人も多いかと思いますが、むしろ「現場経験が豊富で、現場の実情をどれだけ理解できているか」の方が重要だといわれています。

なぜなら、現場の実情と目標のギャップを正確に把握し、より効果的で実現可能な戦略を構築し、実行できるからです。また、現場を理解できている人物であれば、現場社員からの信頼を集め、現場視点と経営者視点の双方から戦略構築ができるでしょう。

このように、HRBP人材については、HRBPに求められる2つのスキルを軸としつつも、人事領域に関する経験にとらわれずに選抜することが大切です。

部分的なテスト導入から始める

HRBP導入時は部分的なテスト導入から始めるのがポイントです。

先述のとおり、HRBP人材は社内で育成する企業が多くなるでしょう。

とはいえ、HRBPの専門性や担当領域の広さから、任命された社員がいきなり結果を出し、機能することは難しいことが予想されます。そのため、HRBPが自社で機能しているのか、機能していない場合はなにを改善すればいいのかなど、逐次運用の修正・改善が必要になることでしょう。

また、HRBPは現場の実情を把握するために、現場の社員と信頼関係を構築する必要があります。そこで、まずは小回りの利く規模で、部分的かつテスト的に導入するのがおすすめです。小規模での運用であれば、適宜運用の修正・改善をしつつも、各部門の小さな悩み事からヒアリングをしていき、現場社員との信頼関係を構築しやすくなるためです。

HRBPが現場の知識のアップデートをおこなえる機会を整える

HRBPは経営者や事業責任者へ、現場社員の声を踏まえた職場改善提案をおこないます。したがって、HRBPに有効な提案をしてもらうためには、現場の雰囲気や実情、細かい要望など、現場の声を把握してもらう必要があります。

しかし、HRBPが通常業務の中で現場の声を十分に拾うことは、簡単なことではありません。そこで「顧客との商談にHRBPが同行する」「HRBPも部門会議に参加する」など、HRBPが現場の知識をアップデートできる機会を意図的に設けることがポイントです。

またこのような機会は、HRBPと現場との信頼関係構築にもつながり、現場の声がHRBPに届きやすくなるでしょう。

HRBPの導入企業事例

最後にHRBPの導入企業事例を2社紹介していきます。

株式会社ディー・エヌ・エー

株式会社ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)は、2014年にHRBPを導入しました。DeNAのHRBPは、人材の登用やマネジメント強化、チームビルディング、事業課題解決のための壁打ちなど、人事と経営をつなぐ戦略人事としての役割を担っています。

「戦略人事を実践するHRゼネラリスト」とも呼ばれるDeNAのHRBPは、チームで戦略人事をおこなうことでアウトプットの質を高める工夫をしている点が特徴です。

LINE株式会社

LINE株式会社(以下、LINE)のHRBPチームは、LINEの人・組織に関する課題解決に向けた企画立案・マネジメントをメインの役割としています。組織開発を主な役割としつつも、業務範囲を限定しすぎずに、課題解決に向けてできることはすべておこなう点がLINEのHRBPの特徴です。

HRBP導入を検討しよう

HRBPとは経営視点で人事戦略の立案・実行をおこない、事業成長を実現する役割のことです。

本記事で見てきたとおり、生産労働人口の減少やDX推進、テレワーク普及による労働観の変化など、日本における労働環境は現在、大きな転換点にあります。

そして、このような労働環境の変化に伴い、今後もHRBPを導入する企業が増えてくることが予想されます。本記事を参考にHRBPの理解を深め、HRBP導入に向けた検討を始めてみてはいかがでしょうか。

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