2025年問題とは?超高齢化社会がもたらす影響や企業が取るべき施策を徹底解説
2007年問題と呼ばれていた団塊世代の大量退職では、労働力の急激な減少・技術やナレッジの継承不安・退職金の支払いによる企業の負担の増加などから、企業の生産性の低下が懸念されました。2025年には団塊世代が後期高齢者になるため、新たな社会問題が指摘されています。
そこで今回は、「2025年問題の基本概要」「2025年問題が社会に与える影響」「2025年問題と2025年の崖について」「乗り切るために必要な企業の施策」を解説します。
そもそも「2025年問題」とはなにか?
2025年問題とは、いわゆる「団塊世代」が75歳以上の後期高齢者となり、日本が超高齢化社会になることに附随して起こる問題を指します。団塊世代とは、1947~1949年に生まれた世代を示し、総務省『令和2年国勢調査』の実施時点(2020年)で596万人が該当することがわかっています。また同調査では、75歳以上の人口が1,860万人で総人口の14.7%にあたることがわかりました。
2025年には、75歳以上の人口が3,677万人に達する見込みで、これは「日本人の3.9人に1人が75歳以上」という社会になることを指しています。このことにより、高齢者のいる世帯のうち、7割が高齢者の独居・高齢者のみの世帯となります。また、認知症を患う高齢者が急増することも懸念されているのです。
日本では「高齢化社会に達する速度」が問題視されてきました。しかし、現在は「高い高齢化率」が問題になってきています。
出典:「令和2年国勢調査 | 総務省」「今後の高齢化の進展 ~2025年の超高齢社会像 | 厚生労働省」
2025年問題が社会に与える影響
2025年問題は主に「高い高齢化率」によってさまざまな影響が懸念されることをいいますが、具体的にはどのような影響が想定されるのでしょうか。ここでは、2025年問題が社会に与える影響として、以下3点を解説します。
1つずつ見ていきましょう。
医療費や介護費の増大
2025年問題が社会に与える影響の1つ目は、医療費や介護費の増大です。高齢者が増えるということは、医療・介護を必要とする人口の増加につながります。2018年度の医療給付費が約39兆円に対して、2025年度は約48兆円になるといわれており、およそ1.2倍まで膨れあがると予想されています。
これらの問題に対して政府はさまざまな対策を打ち出しています。医療費の問題に対しては、生活習慣病予防への取り組みの拡大、地域包括ケアシステムによる医療と介護の連携、在宅医療の促進などが挙げられます。また、介護費の増大に対しては、介護保険制度による介護サービスの自己負担分の軽減などがあります。
しかし、高齢者の増加と同時に、働く世代の人口減少が続いていることから、今後も財源不足が懸念されます。
出典:「2040年を見据えた社会保障の将来見通しについて | 厚生労働省」
現役世代の社会保険料負担の増大
2025年問題が社会に与える影響の2つ目は、現役世代の社会保険料負担の増大です。日本の「人口ピラミッド」は、1990年の統計以降その形が逆ピラミッド型へと変化しています社会保障を受ける層の人口が増え、社会保険料を負担する側の労働人口が減っていることから、今後も現役世代が負担する社会保険料の増大が続くことが懸念されます。
この問題に対して政府は、2019年10月に消費税10%まで引き上げをおこなうことで、財源確保に対する対策を実施しました。また、「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」を設立し、厚生年金と国民年金の積立金の管理・運用をすることで年金積立額を増やす取り組みも行われています。
慢性的な人材不足
2025年問題が社会に与える影響の3つ目は、慢性的な人材不足です。出生率の低下が継続していることにともない、日本の人口は減少傾向にあり、2053年には1億人を割ることが予想されています。労働人口が減ることで日本における経済成長率が鈍化します。また、税収の減少にもつながるため、社会保障費の不足なども懸念されます。
すでに、医療・介護業界をはじめ、製造業・建設業など特別な技能を必要とする業界で、人材不足が明白になってきています。2025年問題の中で、最も企業に影響を与える問題といえるでしょう。
出典:「令和2年版高齢社会白書(全体版)| 内閣府」
2025年問題と2025年の崖
2025年問題により、医療費や介護費の増大、現役世代の社会保険料の負担の増大、慢性的な人材不足が懸念されており、それと同時に「2025年の崖」という問題も浮上してきています。
2025年の崖とは、経済産業省のまとめによると「既存システムに、技術面の老朽化、システムの肥大化・複雑化、ブラックボックス化などの問題があり、その結果として経営・事業戦略上の足かせや維持管理費の高騰、セキュリティリスクなどが高まる原因となる”レガシーシステム(老朽化、肥大化・複雑化、ブラックボックス化したシステム)”となり、DXの足かせになっている状態」によって生じる問題を指します。
この問題には、日本の企業で活用されている基幹システムが老化し、そのシステムの運用・保守を担うIT人材の減少や、多くの企業が導入している大手企業のERP(Enterprise Resource Planning)のサポートが終了することが起因しています。
仮にこの問題を克服できない場合、DXが実現できないだけでなく、2025年以降、日本において年間12兆円の経済損失が生じる可能性があるとされています。
「2025年問題」と「2025年の崖」では本質的に問題は異なりますが、2025年の崖に企業が対応できないと、日本の企業は海外企業に対抗できず衰退する恐れがあり、将来の社会保障費の財源不足に拍車をかける可能性があります。
出典:「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~ | 経済産業省」
2025年問題を乗り切るために企業が取り組むべきこと
2025年問題に対して、企業においてはとくに「慢性的な人材不足」への対策を考える必要があります。ここでは、2025年問題を乗り切るために企業が取り組むべきことを、以下の2つの点から解説します。
1つずつ見ていきましょう。
DX推進
2025年問題を乗り切るために必要な企業の施策の1つ目は、DX推進です。DXを推進する第一歩としてデジタル化が進み業務の効率化が可能になります。そのため、作業時間の短縮・ヒューマンエラーの消失による業務の正確性の向上が期待できます。また、業務のムダが削減され業務効率が上がることから収益向上につながります。
加えて、DXによってビジネスモデルや企業文化を根本から改革していくことで、企業の競争上の優位性を確立できる可能性もあります。
ただし、2025年の崖で指摘されているように、企業がDX推進を掲げても、古いシステムを利用していることによって推進の足かせになっている可能性があります。DX推進のためには、IT人材を育成し、2025年以降にも安定して利用ができるシステムの構築を早急に進める必要があります。
ダイバーシティ経営の推進
2025年問題を乗り切るために必要な企業の施策の2つ目は、ダイバーシティ経営の推進です。2025年問題により、現役世代への「介護」に対する負担の増加も懸念されます。親や家族のために介護休暇を取得するという選択が視野に入る従業員も少なくないでしょう。企業は、少子化による人口減少から人材確保に対しても対策が必要になります。
このような問題に対して企業は、多様な人材を活用するというダイバーシティ経営が注目されています。「多様な人材」を経済産業省では、「性別、年齢、人種や国籍、障がいの有無、性的指向、宗教・信条、価値観などの多様性だけでなく、キャリアや経験、働き方などの多様性」も含んで解釈しています。
ダイバーシティ経営では、多様な人材の能力を最大限発揮できる環境づくりに取り組むことで、人材確保はもちろん、イノベーションを生み価値創造につながることが期待できます。
2025年問題に対して早急な対策を
2025年問題は、国に対する医療費・介護費の増大という問題だけでなく、企業には人材不足、個人には社会保険料の上昇などさまざまな影響があります。2025年問題に対して企業ができることは、デジタル技術を活用しDX化を推進することや、ダイバーシティ経営の推進により人材確保などです。
企業は2025年問題を後回しにせず、今から積極的に対策をしていくことが重要だといえるでしょう。