企業はなぜCSR活動に取り組むのか?メリットと得意分野を活かした活動例も紹介
企業が社会的責任を果たすため、事業を通じて地域社会への貢献やボランティアなどに取り組む活動をご存じですか。これらの活動は「CSR活動」ともよばれ、それぞれの企業が特色を活かした取り組みをおこなっています。
今回の記事では、なぜ多くの企業がCSR活動に取り組むようになったのか、企業にとってどのようなメリットがあるのか、得意分野を活かした活動例なども含めて詳しく解説します。
CSRとは
はじめに、CSRの定義を紹介するとともに、CSRが注目されるようになった理由、CSRと混同されがちなサステナビリティとの違いについても解説します。
CSRの定義
CSRとは「Corporate Social Responsibility」の略称で、日本語では「企業の社会的責任」と直訳されます。
企業には社員や顧客以外にも取引先や地域住民など、さまざまな利害関係者が存在するものです。事業を運営していくうえで、企業として利益を追求することはもちろん重要ですが、さまざまな利害関係者に対し迷惑をかけることなく、コンプライアンスを遵守しながら健全な経営をおこなっていくことが企業の社会的責任といえます。
コンプライアンスに加えて地域社会への貢献にかかわる取り組みをおこなうこともCSRの一環です。
CSRが注目されるようになった理由
多くの企業でCSR活動がおこなわれるようになりましたが、なぜこれほどまでに注目を集めているのでしょうか。その背景には、顧客や取引先から信頼を獲得することが挙げられます。なぜなら近年、企業の不正に対してますます社会の厳しい目が向けられているからです。
たとえば、目先の売上や利益を優先するあまり企業の法令違反が見過ごされてしまうと、環境破壊や近隣住民の安全が脅かされることもあるでしょう。SNSなどを通じてインターネット上で情報が拡散しやすい昨今、悪質な企業や業者の評判は多くの人に伝わりやすく、ルール違反をした企業からは顧客や取引先が離れ、経営に悪影響を及ぼすことも考えられます。
企業の健全な経営を実現するとともに、顧客や取引先をはじめとした社会からの信頼を獲得するためにも、多くの企業がCSRに注目をしています。
さらに、2010年11月には組織の社会的責任に関する国際規格である「ISO26000」が発行されました。これにより世界の国々でCSRの重要性が認識され、さまざまなガイドラインが策定されたことで、日本においてもCSRへ取り組む企業が増加しました。
CSRとサステナビリティの違い
サステナビリティ(Sustainability)とは、日本語で「持続可能性」と直訳される言葉です。地球環境をはじめとした社会課題へ取り組み、次の世代へと橋渡しができるよう持続可能な社会を実現することがサステナビリティの目的といえます。
CSR活動のひとつとしてサステナビリティに取り組むこともありますが、CSR活動はサステナビリティにとどまらず、企業として社会的責任を果たすことが目的です。これに対し、サステナビリティは国や団体、個人にいたるまで、全体として持続可能な社会に取り組むというニュアンスの違いがあります。
企業にとってのCSR活動のメリット・注意点
企業がCSRに取り組むうえでは、メリットと注意点が存在します。それぞれを詳しく解説します。
CSR活動のメリット
企業価値・企業イメージの向上
CSR活動をおこなった結果として、さまざまなステークホルダーとの関係が良好に保たれることで、企業として信頼を獲得でき、企業価値や企業イメージの向上につながる可能性があります。
たとえば、地球環境への配慮はあらゆる国・業種で求められている共通の課題であるからこそ、社会からの共感を得やすい取り組みです。また、働き方改革が進められている日本においては、社員の労働環境や労働条件を改善し、働きやすい環境づくりに取り組むことも企業イメージのアップにつながるでしょう。
社員の満足度向上
CSR活動によって企業価値が向上すると、社員は自身が働いている企業は社会から必要とされていると自覚できます。これにより、モチベーションが向上し意欲的に働く社員が増え、生産性アップが期待できるでしょう。
さらに、意欲的に働く社員が増えることで、学生や求職者の方にも良い印象を与えることとなり、「自分もあの企業で働いてみたい」と感じた多くの人材が集まってくることも期待できます。
CSR活動の注意点
コストの増大
CSRの取り組みに挙げられることの多い環境保護や地域社会への貢献活動などは、短期的に見ると企業の利益にはつながりにくいものです。また、CSR活動を支える資金を捻出しなければならず、はじめはコストが増大する懸念も生じるでしょう。
そのため創業間もない企業や資金に余裕のない企業にとっては、CSR活動のために十分なコストを割くことができず、CSR活動に取り組みたくてもできないケースもあります。
人材不足
コストの問題と同様に、企業によってはCSR活動に充てられるだけの人材が確保できない場合もあります。長期的に考えると社員満足度が向上し、人材の確保につながる可能性がある一方で、CSR活動をスタートし継続していくまでの段階で人材不足に悩む企業が多いことは事実といえるでしょう。
CSR活動を支えるための人員を確保するとなると、さらにコストが増大する懸念も生じます。
CSR活動の例
自社におけるCSR活動の参考にするために、テーマごとの事例を紹介します。
教育活動
次世代を担う人材を育成するために、子供たちが学習・体験できるイベントの実施や、自社が所有する施設の提供などをおこなっている企業も存在します。
たとえば、情報通信やIT分野の企業では、小中学校へ人材を派遣しプログラミング教室を開催したり、ICTを活用した授業の支援などをCSR活動として実施したりしています。また、工場見学や職場体験の受け入れなどを通して、子供たちに仕事の魅力を伝えることも重要なCSR活動といえるでしょう。
環境問題への取り組み
CO2排出量を抑制できるハイブリッド車や電気自動車の導入、再生可能エネルギーの導入といった気候変動を緩和する取り組みはもちろんですが、気候変動に適応する取り組みをおこなっている企業も少なくありません。
たとえば、台風や大雨などの災害時に備えたBCP対策を講じたり、災害に強いサプライチェーンの見直しをおこなったりすることも重要な取り組みといえます。
CSR活動は企業価値の向上にも影響する
あらゆる事業は、社会に対してなんらかの利益をもたらしたり、世の中の役に立てたりすることが根底にあるはずです。
CSR活動は事業を通じて、自社の利益を追求するだけでなく、社員や顧客、取引先、地域住民といったさまざまなステークホルダーに対して社会的責任をはたしていくことが目的です。環境活動や地域社会への貢献といったCSR活動は、短期的に見ると利益に結びつきづらいことも事実です。
しかし、CSR活動に継続的に取り組んでいくことで、長期的に見ると企業価値の向上に結びついていくでしょう。