新卒採用における面接の目的は「見極め・惹きつけ」へ。AI時代だからこそ重要な面接官の役割とは

近年、労働人口の減少による「売り手市場」が続いており、優秀な人材を確保することは企業にとって大きな課題となっています。
人材採用の成否を左右する要素はさまざまありますが、本記事では、2026年卒・2027年卒の採用トレンドをデータとともに紹介しながら、面接官の育成の重要性や、面接官を育成するポイントを解説します。
新卒採用における面接の目的

新卒の採用面接は、学生の合否を判定するだけの場ではありません。まずは面接の目的と、面接官が果たすべき役割を見ていきましょう。
面接の目的は「見極め」と「惹きつけ」
新卒採用の目的は、将来的に企業の中核となるコア人材を採用することです。そのために、新卒採用の面接では「見極め(judge)」と「惹きつけ(follow)」の2つが重要になります。
売り手市場が続く現在、企業も学生から選ばれる立場です。そのため、かつてのように合否判定だけが面接の役割ではなくなってきています。マイナビの調査では、入社予定先が決まった学生が志望度を高めるタイミングとして「一次面接〜最終面接前」が上位に挙がっています。面接は、学生の意思決定に直結する重要な場となっているのです。
だからこそ、面接の場では、学生を見極めるだけでなく、自社の魅力を伝えて志望度を高めることも重要です。

出典 :マイナビ 2026年卒 大学生キャリア意向調査4月<就職活動・進路決定>(入社予定先企業に対する志望度が特に高まったタイミング)
面接官の役割とは
面接官の役割は学生の本音を引き出し、返答内容や態度・立ち居振る舞いをもとに見極めることはもちろん、自社の魅力を学生に届ける意識も必要です。選考フロー中に何度かおこなわれる面接は、応募者である学生と企業との最大の接点といえます。学生にとっては、面接官の印象がそのまま企業の印象となることも少なくありません。
だからこそ面接官には、「学生を評価する」だけでなく、「自社を選んでもらう」という意識も求められます。
データから見る新卒採用における「面接」の現状

近年の学生は、どのような意識で就職活動に臨んでいるのでしょうか。マイナビの調査データをもとに近年のトレンドを紹介します。
就活へのAI活用が定着し、面接官に求められるスキルも変化している
マイナビの「2026年卒 大学生キャリア意向調査4月<就職活動におけるAI利用>」によると、就職活動にAIを利用したことがある学生の割合は66.6%にのぼります。これは2024年卒学生(18.4%)の3倍以上です。また、AIの活用シーンを聞くと、ES(エントリーシート)の推敲や面接対策など、就活準備の幅広い場面でAIが活用されていることがわかります。
AIの普及によって、志望動機や自己PRなどの内容を一定水準まで整理し、わかりやすく伝えられる学生が増えているため、表面的な回答だけでは学生ごとの差が見えにくくなっているのが現状です。
多くの学生がAIを活用して面接準備をおこなう今、面接官には回答内容そのものだけでなく、その回答に至った背景や考え方、実際のポテンシャルを引き出しながら見極める力が、これまで以上に求められています。
エントリーを絞る「ピンポイント就活」がトレンドに
近年、インターンシップなどを通じて志望企業を早期に絞り込み、少ないエントリー数で納得のいく内定を目指す「ピンポイント就活」が広がっています。学生が応募する企業数が減少するなか、一社一社の面接は、学生にとって「ここで働くかどうか」を見極める重要な機会です。
また、少子化による人口減少の影響で、新卒採用市場における学生数そのものも減少しています。企業にとっては、接点を持てる学生の数が限られるなかで、一回一回の面接がこれまで以上に貴重な機会になっているといえるでしょう。
このような状況では、面接のなかで学生の志望度を十分に高められなければ、選考辞退や他社への流出に繋がる可能性が高まります。限られた面接の機会だからこそ、合否の判断をするだけでなく、自社で働く魅力を伝え、学生の志望度を高める視点も求められています。
出典:2026年卒新卒採用の「ピンポイント就活」からみる2027年卒の見通し
面接官や人事担当者の「印象」が入社の決め手に
学生は面接官の振る舞いを通じて、「この会社で働きたいか」「この人たちと一緒に仕事ができるか」をシビアに判断しています。マイナビの「2026年卒内定者意識調査」によると、入社予定先を決めたポイント(人物軸)として、「人事担当者の印象が良かった」(全体71.3%)、「面接官の印象が良かった」(全体45.1%)が上位を占めました。
学生にとっては福利厚生や待遇などの条件面と並んで、就職活動過程で出会った人事担当者や面接官の印象も、最終的な意思決定に関わる重要な要素であることがわかります。面接官・人事担当者の印象は、内定承諾率に直接影響する要素となっています。
面接官に求められる5つの要素

面接官の役割を踏まえ、具体的にどのようなスキルや意識が必要なのかを紹介します。
質問スキル
質問スキルとは、学生の本音や実際のポテンシャルを引き出すための問いかけの技術です。 AIを活用して入念に面接対策をしてくる学生が増えている今、表面的な回答の裏にある「本人の実際の行動」や「思考プロセス」を明らかにする質問スキルが、面接官に求められています。
質問には大きく「クローズド質問」「オープン質問」の2種類があります。クローズド質問は、YES・NOで答えられる質問で、緊張をほぐすアイスブレイクの場面で活用します。一方、オープン質問は、相手が自由に答えられる質問で、学生の考えや本音を引き出したいときに有効です。ここでは、オープン質問によって学生の能力を見極める手法として「STARモデル」を紹介します。
STARモデルを活用した面接
STARモデルとは、学生の経験を次の4つのステップで整理し、行動の再現性を確認する構造化面接の手法です。
- ・S(Situation:状況)
- ・T(Task:役割・課題)
- ・A(Action:具体的な行動)
- ・R(Result:成果)
この4つの視点で深掘り質問を重ねることで、準備された回答の裏にある「本人の実際の行動」と「思考プロセス」を明らかにできます。
(例)
学生が「アルバイト先でリーダーとしてメンバーをまとめました」と話した場合、「STARモデル」を活用して次のように深掘りできます。
- ・S(状況):「何名くらいのチームでしたか?どのような状況でリーダーになったのですか?」
- ・T(役割):「リーダーとして、どのような役割を担っていましたか?」
- ・A(行動):「メンバーをまとめるうえで、具体的にどのような工夫をしましたか?」
- ・R(成果):「その結果、チームにどのような変化がありましたか?」
傾聴スキル
傾聴スキルとは、相手の話をただ聞くだけでなく、深く理解しようとする姿勢のことです。
面接官が、適切な相槌、目線の配り方、発言を否定しない態度を示すことで、学生にとっては「しっかり話を聞いてもらえている」と感じられ本音を話しやすくなり、面接官も学生の本来の姿を見極めやすくなります。また、丁寧に話を聞いてもらえたという体験は、面接全体の満足度向上にも繋がります。
また、面接官が話しすぎないことも重要です。面接の主役は学生であり、面接官が自身の経験や考えを長々と話してしまうと、限られた時間のなかで学生の情報を十分に得られなくなります。面接中は「聞く:話す=8:2」を意識することが理想的といわれています。
加えて、言葉の表面的な内容だけでなく、その背景にある意思・感情・状況を捉え、学生が本当に伝えたいことを理解しようとする姿勢も傾聴の大切な要素です。
観察スキル
面接官には、学生の発言内容(言語情報)だけでなく、表情・目線・姿勢・声のトーン・立ち居振る舞いといった非言語情報を読み取る力も求められます。言語情報と非言語情報を組み合わせて総合的に評価することが、精度の高い見極めに繋がります。
具体的に観察すべきポイントとしては、以下のようなものが挙げられます。
- ・姿勢・動作:落ち着きがない、動作が雑である
- ・目・目線:目線が定まらない、目を合わせない
- ・話し方:声が小さすぎる/大きすぎる、早口である、学生言葉が目立つ
- ・表情:喜怒哀楽がまったく見られない、ほとんど笑わない
ただし、これらはあくまで補足情報です。学生側の緊張による影響も大きいため、非言語情報だけで判断するのではなく、発言内容と合わせて総合的に評価することが大切です。第一印象だけで合否を判断するのではなく、発言内容との整合性を確認しましょう。
印象管理スキル
面接官自身の表情や声のトーンをコントロールする「印象管理」も重要なスキルです。前述のデータが示すように、面接官の印象は学生の入社意思決定に直結します。言葉の内容だけではなく、表情・声のトーン・視線・姿勢といった非言語情報も、学生に大きな影響を与えることを意識しましょう。
たとえば、次のような態度は学生の志望意欲を下げる原因になります。
- ・腕や足を組んだまま話を聞く
- ・資料ばかりに目を落とし、アイコンタクトをとらない
- ・無表情で相槌がない
- ・退屈そうな様子を見せる
面接開始時から笑顔で学生を迎え、しっかりとアイコンタクトをとりながら話を聞くことで、学生の緊張がほぐれ、面接全体の雰囲気が大きく変わります。
「面接官自身も見られている」という意識を常に持ち、立ち居振る舞いを管理することが大切です。
評価エラーへの理解
面接官は、無意識のうちに判断が偏る「評価エラー」に陥ることがあります。評価エラーとは、主観や感情、先入観によって評価の客観性が失われる心理現象のことです。
代表的な評価エラーとしては、以下のような例があります。
- ・ハロー効果:一つの特徴に引きずられて全体の評価が歪む
(例:英語のスキルが高いため、難易度の高い仕事もできるだろうと判断する) - ・寛大化傾向:評価基準が甘くなり、全体的に高評価になりやすくなる
- ・対比誤差:判断の基準が自分自身になってしまい、自分と似ているタイプを過大評価・自分と異なるタイプを過小評価してしまう
(例:自分が全国大会出場経験者のため、県大会止まりの学生を「大したことない」と判断してしまう)
上記のような心理的バイアスを理解したうえで、共通の評価基準を言語化しておくことが、評価のばらつき防止に繋がります。
面接官を育成する方法

面接官のスキル向上は、採用活動だけでなく組織全体によい影響をもたらします。最後に面接官を育成する具体的な方法についてお伝えします。
研修の受講で面接官スキルを体系的に学ぶ
質問・傾聴・観察・印象管理・評価エラーへの理解といったスキルは、体系的な研修を通じて習得するのが効果的です。
研修では、面接官役・学生役・観察者役に分かれたロールプレイング(模擬面接)をおこなうことが有効です。また、録画映像による振り返りや、他者からのフィードバックを通じて、自分では気づきにくい表情・態度の癖や質問の偏りを把握できます。
加えて、学生役を体験することで、志望度を高める対応を体感的に理解することもできます。
学んだスキルを日々のマネジメントで実践する
面接官を担うのは、現場の管理職クラスの社員であることが多いです。もし面接官としてのスキルが不足している場合、日々のマネジメント自体もうまく機能していない可能性があります。
そのような状態のまま新人が現場配属された場合、上司のマネジメント不足によってモチベーションが低下したり、関係が悪化したりするリスクがあります。面接での好印象が、配属後のギャップによって損なわれてしまうことになりかねません。
面接で培う「傾聴・質問・観察」のスキルは、部下の能力把握や動機づけにも直結し、日々のマネジメントにそのまま応用できます。
- ・STARモデル:
→部下の行動を具体化することで、再現性のある成長支援が可能になります - ・傾聴・観察:
→心理的安全性を高め、本音を引き出す組織づくりに貢献します - ・評価エラーの理解:
→公正な評価や適切なフィードバックに繋がり、モチベーションやエンゲージメントの向上に寄与します。
面接という一場面にとどまらず、日々のマネジメント力を高めることが、面接官としてのスキルの強化にも直結していきます。
AI時代こそ、面接官のスキルが採用を左右する

採用市場の変化やAIの普及によって、面接における対人コミュニケーションの重要性はこれまで以上に高まっています。学生がAIを活用して準備を整え、少数の企業に絞って選考に臨む時代だからこそ、面接官には「見極め(judge)」と「惹きつけ(follow)」の両方のスキルが求められます。
面接官がこれらのスキルを磨くことは、優秀な人材の獲得だけでなく、入社後のミスマッチの防止や、社内のマネジメントの質向上にも繋がります。面接官の育成を、採用活動と組織づくりの両面から取り組んでみてはいかがでしょうか。

















