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ビッグステイとは?大転職時代から現職 定着へ変化するキャリア戦略

2026年09月30日更新

オフィス街イメージ画像

「ビッグステイ(Big Stay)」をご存知でしょうか。コロナ禍以降にトレンドとなった「大退職時代(大転職時代)(Great Resignation)」から一転し、あえて現在の職場に留まり自身の市場価値を高めていく新たなキャリア戦略が、今大きな注目を集めています。この記事では、ビッグステイについてわかりやすく解説します。ビッグステイのメリット、デメリットから、人材の離職防止を目指す企業の経営者や人事担当者が知っておくべき対策までをお届けします。

目次 【表示】

ビッグステイ(Big Stay)とは?大転職時代から現職への定着へ

本章では、ビッグステイという言葉が持つ本来の意味や、アメリカで発祥した歴史的な背景、関連する人事用語との違いについてわかりやすく解説します。

ビッグステイの定義

ビッグステイとは、転職して新しい環境へ移るよりも、現在の会社に留まった方が結果的に自身のキャリアや経済面のメリットが大きいと判断し、同じ職場に長く定着する人が増える現象を指します。もともとはアメリカの労働市場で生まれたトレンドです。

コロナ禍での大量離職である「大退職時代(大転職時代)」を経て、急激なインフレや景気後退への不安から、労働者の心理は一気に安定志向へと傾きました。転職市場の過熱が落ち着く中、外部からの好条件のオファーを材料にして現在の勤務先と給与交渉をおこない、自身の価値に見合った待遇を得ながら現職に留まる選択が急増したのです。未知の環境へ飛び込むリスクを避け、確実な経済的恩恵を受けながら現在の職場でキャリアを築くスタイルが、新たなスタンダードとなりつつあります。

ただしビッグステイの目的は、単に現職にしがみつくことではありません。周囲の潮流に流されて焦って転職するのではなく、まずは現在の環境でスキルや経験を積み「今は現職に留まるのが最適である」と労働者自身が能動的に決断する、前向きなキャリア戦略です。

ビッグステイと「大退職時代」「静かな退職」との違い

ビッグステイの概念をより深く理解するために、関連するトレンド用語との違いを整理しておきましょう。

  • ●大退職時代(大転職時代)(Great Resignation):労働環境の見直しや、より高い給与を求めて多くの労働者が自発的に退職した現象です。2021年以降、新型コロナウイルス(COVID-19)の流行に伴い、アメリカを中心に広がりました。ビッグステイとは対極に位置します。
  • ●静かな退職(Quiet Quitting):現在の会社に籍を置きながらも、雇用契約で求められる範囲の業務のみにとどめ、それ以上の役割や責任を積極的には引き受けない働き方です。これに対しビッグステイは、主体的で前向きな会社への定着を含む点で、静かな退職とは決定的に異なります。

日本版ビッグステイが注目される4つの要因

アメリカで生まれたこの潮流は、日本国内でも独自の文脈を伴って広がりを見せています。日本版ビッグステイが注目される背景には、大きく分けて4つの社会的要因が存在します。

要因1:物価高に伴う企業の「賃上げ」の波

大きな推進力となっているのは、企業による積極的な賃上げの波です。近年の物価高騰や深刻な人手不足を受け、多くの企業が既存社員の引き留めを図るために手厚い待遇改善を実施しています。同じ会社で働き続けることで得られる年間賃金の上昇率が、転職による給与アップの期待値を上回るケースも珍しくありません。あえて未知の職場でゼロから実績を積み上げずとも、現職に留まることで十分な経済的恩恵を受けられる環境が整ったことが定着を後押ししています。

要因2:企業の「厳選採用」と採用市場の落ち着き

2つ目の要因は、転職市場における求人倍率の低下と、企業が「厳選採用」へシフトしていることです。一時期の過熱した採用競争を経て、現在多くの企業はむやみに採用数を追う段階から、真に必要なスキルを持った人材をピンポイントで獲得する方針へと移行しています。
労働者側から見れば、転職活動をおこなっても自身の希望する条件を満たすポジションを獲得する難易度が上がり、入社後のミスマッチリスクも高まっています。そのため、現職で着実に成果を出し続ける方が安全かつ確実であるという認識が広がっているのです。

要因3:国や企業が推進する「リスキリング」など人材投資の拡大

3つ目の要因は、人材をコストではなく資本としてとらえる考え方が広がり、企業が「人への投資」を本格化させていることです。事業環境の変化に対応して生産性を高めるため、多くの企業が従業員のリスキリングをはじめとした成長支援に予算を投じるようになりました。
社内におけるキャリア形成や新たなスキルの獲得を後押しするサポート体制が構築されつつあります。このような人的資本投資の拡大により、ビジネスパーソンは転職というリスクを冒さずとも、現職に留まったまま自身の市場価値を高められるようになりました。

要因4:不確実性の高い経済状況と安定志向の高まり

4つ目の要因は、経済状況の不透明感が高まる中で、安定したキャリアを志向する人が増えていることです。将来の予測が困難な時代において、ビジネスパーソンのキャリアに対するリスク許容度は低下しているといえます。見知らぬ環境へ飛び込むことは人間関係の構築など多大な精神的負担を伴う一方、勝手を知っている職場であれば、蓄積された信頼関係やノウハウを活かして心身の負担を抑えつつ働けます。

こうした背景から、環境の変化によるリスクを避け、慣れ親しんだ職場で着実に成果を出そうと考える人が増えているのです。

ビッグステイは誰にでもメリットはある?

ビッグステイには多くのメリットがありますが、万全ではありません。ビッグステイが有用な場合と留意すべき点についてみていきましょう。

ビッグステイが有用な場合

ビッグステイが有用なのは、現在の会社にスキルアップのための具体的な機会や、将来を見据えた明確なキャリアパスが用意されている場合です。たとえば、企業側が手厚い研修制度や自己啓発支援を設けており、そうした環境を積極的に活用できるのであれば、着実に実力を伸ばせるでしょう。

また、現在の待遇や人間関係にある程度の満足感を得ており、不確実なリスクを冒したくないと考えている場合にも有用な選択肢となります。社内で新しいプロジェクトに手を挙げやすい文化があるならば、十分に成長できる余地があるでしょう。安心して働ける環境で、キャリアに繋がる経験を多く蓄積することが可能です。

ビッグステイの留意すべき点

一方で、一概にビッグステイをおすすめできないケースも存在します。たとえば、現在の報酬や待遇が市場環境からみて優遇されている場合でも、キャリア形成や自己成長の機会が限られているケースです。その環境に留まり続けることでの、今後の待遇と自身のキャリアについて、改めて考えてみる必要があるでしょう。

現在の環境では、自身の描くキャリアや自己成長の実現が難しい場合は、ビッグステイのメリットを享受できない可能性もあります。

また、ビッグステイで最も注意すべきは、居心地の良さに甘んじて成長機会を逃し、市場価値が低下してしまうことです。社内評価に満足せず高い目標を設定するなど、安定した環境だからこそ自律的に学び続ける姿勢が求められます。

企業が取り組むべき離職防止策!

こうしたビッグステイの潮流を前向きにとらえ、自社にとって不可欠な人材を引き留めるためにどのような対策を講じるべきでしょうか。勤続5年目以上の中堅社員が辞めてしまう理由や離職防止に効果的な施策を解説します。

勤続5年目以上の中堅社員が辞めてしまう理由を解説

企業の屋台骨を支える中堅社員が離職に至る背景には、この世代特有の悩みが隠されています。中堅層は担当業務に習熟しており、高いパフォーマンスを安定して発揮できる強みがあります。

しかし一方で、ルーティンワーク化により新しい挑戦の機会が減少し、閉塞感や将来への不安を抱きがちです。また、自身の業務をこなしながら後輩の指導も任されるなど、見えにくい負担が集中しやすい立場でもあります。さらに、会社への貢献に見合った正当な評価や報酬体系が機能していないと感じ、不満を募らせるケースも少なくありません。

中堅社員としての役割や目指す方向性を適切に理解できていないと、キャリア迷子に陥りやすくなります。自社での成長やキャリアパスが不明確と感じた場合には、離職に繋がりかねないでしょう。こうした不満やキャリアへの不安が蓄積することを防ぐには、人事担当者が社員の悩みやキャリア意向を早期に把握できる仕組みづくりが必要です。

人材育成制度とインセンティブ設計

中堅社員の定着を促し、前向きなビッグステイを実現させるためには、会社への貢献意欲を引き出すインセンティブ設計が不可欠です。一時的に給与を引き上げるだけでは根本的な解決にはならないでしょう。適切な評価制度やキャリア形成支援を通じて、市場価値を高められる環境を整えることが求められます。

モチベーションの高い社員が自身のキャリアプランに合わせて希望する部署へ挑戦できる仕組みの導入と、新しい専門分野のスキルを獲得できる学習プログラムの充実化は離職防止に有効です。社員一人ひとりが組織の中で自律的にキャリアパスを描ける環境を提供すれば、組織に対する信頼感の向上に繋がります。

「現在の会社で働き続けることが、自身の成長や市場価値向上に繋がる」と実感できる環境を整えることが、離職防止の鍵です。

裁量権を持って業務を進められる環境をつくる

経験を積んだ中堅社員にとって過度な管理はモチベーション低下の要因となります。自らの判断で仕事を進められる裁量権を与えることで、信頼されているという自己有用感が高まり、業務への責任感や意欲が引き出されます。失敗を恐れず主体的に試行錯誤できる環境は日々の業務を自己成長の機会に変え、中堅社員が感じやすいキャリアの閉塞感を払拭することに繋がります。

また、適度な裁量権によって業務の経験を積むことで、管理職に必要なスキルを身につけることも可能です。結果として、次世代管理職の育成にも繋がるでしょう。

定期的な対話の機会をつくり不満や不安に対処する

どれほど制度を整えても、社員が抱える日々の悩みや不安をゼロにはできません。だからこそ、評価の場とは異なるフラットな対話(1on1など)を日常的に設けることが重要です。上司と部下が定期的にコミュニケーションを取り、業務進捗だけでなく将来のキャリアビジョンや心理的負担にも耳を傾ける姿勢が求められます。

小さな不満を早期に察知し一緒に解決を探る伴走型サポートを通じて、組織と個人の信頼関係はより強固になります。

ビッグステイという新たなキャリア潮流を踏まえた人材戦略を

大転職時代を経て注目されるようになった「ビッグステイ」は、ただ現職に留まる現状維持を指す言葉ではありません。現職に定着しながらリスキリングを意識し、自律的にキャリアを形成していく新たな働き方の潮流として捉えられています。

人材獲得競争が激化する中、企業には「人を採用する」だけでなく、「人が成長し続けられる環境をつくる」視点が求められています。ビッグステイの潮流を踏まえ、自社で長く活躍したいと思える魅力的な職場づくりに取り組むことが、これからの人材戦略の重要な鍵となるのではないでしょうか。

著者プロフィールHR Trend Lab編集部
タレントマネジメントやエンゲージメントなどの最新トレンドから、組織や人事にまつわる基本知識までマイナビ独自の視点でお届けいたします。
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