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【2025年施行】育児・介護休業法の改正ポイントをわかりやすく解説

2025年06月18日更新

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2025年4月・10月にかけて、育児・介護休業法の改正が施行されます。働きながら子育てや介護をする人を支援するため、制度の内容が見直され、企業にも新たな対応が求められています。
本記事では、育児・介護休業法とはなにか、改正のポイント、法改正にあたって企業がすべきことを解説します。

育児・介護休業法とは

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育児・介護休業法とは、仕事と家庭を両立できる環境を整え、子育て・介護をしながら働き続けられるよう支援するために、厚生労働省によって1991年に制定されました。正式名称は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」です。

制定されてから、社会や労働者を取り巻く変化を踏まえ、以下のように何度か改正されています。

【これまでの主な改定】

1991年 「育児休業等に関する法律」が制定
1995年 改正により、介護休業が制度化
1999年 「育児・介護休業法」に改題
2004年 改正により、子供の看護休暇に関する制度が追加
2021年 改正により、育児・介護休業取得要件の緩和や、男性の育休取得を推進する「産後パパ育休」が創設

2025年施行の法改正の背景

今回、育児・介護休業法が改正された背景には、仕事と育児・介護の両立を支援し、より柔軟な働き方を実現するうえで以下のような課題があったためとなります。

【育児に関する主な課題】

  • ●男性の育休取得率が低い(2021年度:女性85.1%、男性13.97% ※)一方で、積極的に子育てをしたいと希望する男性の割合は増えている
    (※厚生労働省「令和3年度雇用均等基本調査」の結果)
  • ●柔軟な働き方への対応が不足している(残業免除が3歳未満の子に限定されるなど)
  • ●労働者にとって休暇制度が使いにくい(小学校就学後の子の看護休暇が認められないなど)
  • ●障害児や医療的ケア児を養育する家庭への支援が不十分

【介護に関する主な課題】

これらの課題を踏まえ、男性の育児参加を促進する制度の強化や、子供の年齢に応じた柔軟な働き方や休暇のニーズへ対応するための支援体制の整備が求められています。
また、テレワークの活用も育児・介護支援の一環として期待され、今回の改正につながっています。

育児・介護休業法改正のポイント

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育児・介護休業法改正のポイントは以下のとおりです。

2025年4月1日から 育児関連 ①子の看護休暇の見直し 義務
②所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大 義務
③短時間勤務制度(3歳未満)の代替措置にテレワーク追加 (※1)
④育児のためのテレワーク導入 努力義務
⑤育児休業取得状況の公表義務適用拡大 義務(※2)
介護関連 ⑥介護休暇を取得できる労働者の要件緩和 (※3)
⑦介護離職防止のための雇用環境整備 義務
⑧介護離職防止のための個別の周知・意向確認等 義務
⑨介護のためのテレワーク導入 努力義務
2025年10月1日から 育児関連 ⑩柔軟な働き方を実現するための措置等 義務
⑪仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮 義務

(※1)短時間勤務制度の対象外となる労働者の場合
(※2)従業員300人超の企業が対象
(※3)労使協定を締結している場合

ここからは、それぞれのポイントについて詳しく解説します。

①子の看護休暇の見直し

子供の看護休暇の対象が、これまで「小学校入学前まで」だったのが小学校3年生修了時までに延長されました。これにより「小1の壁」(子供の小学校入学を機に、それまで保育園に預けていたことで両立できていた仕事と育児が困難になる問題)への対策として期待されています。

看護休暇の取得理由も拡充され、感染症による学級閉鎖時や、入園式・入学式・卒園式などの子の行事も対象に追加されています。

②所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大

小学校就学前の子供がいる労働者が希望する場合は、企業は所定労働時間を超えて労働させることはできないというルールが定められました。改正により、これまで所定外労働の制限対象が「3歳未満」だったのが、「小学校就学前」の子供を育てる労働者も対象になりました。

③短時間勤務制度(3歳未満)の代替措置にテレワーク追加

3歳未満の子供を育てる労働者には、原則として短時間勤務制度を利用する権利がありますが、短時間勤務が難しい仕事をしている人は、企業と合意すれば対象外になります。ただし、その場合は、企業は別の形で育児支援(代替措置)をしなければならないというルールがあります。

今回の改正により、この代替措置の選択肢の1つに「テレワーク」が追加されました。

④育児のためのテレワーク導入

3歳未満の子供を育てる労働者に、テレワークを選択できるような仕組みを講じることが企業の努力義務となりました。

⑤育児休業取得状況の公表義務適用拡大

もともと従業員数1,000人超の企業には、男性の「育児休業等の取得率」または「育児休業等と育児目的休暇の取得率」を年1回公表することが義務づけられていましたが、改正により従業員数300人超の企業にも適用拡大されました。

⑥介護休暇を取得できる労働者の要件緩和

介護休暇を取得できる労働者の要件が緩和され、「継続雇用期間が6か月未満であれば除外」という規定が廃止されました。

⑦介護離職防止のための雇用環境整備

介護休業・介護両立支援制度等に関する申し出が円滑におこなわれるようにするために、以下のいずれかの措置を講じることが企業の義務になりました。

  1. 制度に関する研修の実施
  2. 相談体制の整備(相談窓口の設置)
  3. 自社における制度利用事例の収集・提供
  4. 自社の労働者へ制度の利用促進に関する方針の周知

⑧介護離職防止のための個別の周知・意向確認等

労働者が、「家族の介護が必要になった」と企業に伝えた場合、「介護休業や支援制度があること」を知らせ、制度を利用するかどうか、本人の意向を確認することが企業の義務になりました。なお、制度の利用を控えさせるような働きかけは禁止となっています。

また、介護に直面する前の段階(40歳など)で、介護休業法の情報を提供することが義務になりました。

⑨介護のためのテレワーク導入

要介護状態の家族を介護する労働者がテレワークを選択できるような体制を整えることが、企業の努力義務になりました。

⑩柔軟な働き方を実現するための措置等

3歳~小学校就学前の子供を育てる労働者に向けて、子育て中の労働者をサポートする仕組みを用意し、労働者が選べるようにすることが企業の義務になりました。

具体的には、「始業時刻等の変更」「テレワーク等(月10日以上)」「保育施設の設置運営等」「就業しつつ子供を養育しやすくするための休暇(養育両立支援休暇)の付与(年10日以上)」「短時間勤務制度」の5つの支援策のうち、2つ以上を導入する必要があり、労働者は、その中から1つを選んで利用できます。

また、労働者に対して支援策があることを知らせ、制度を利用するかどうか、本人の意向を確認することも企業の義務になりました。なお、これも制度の利用を控えさせるような働きかけは禁止です。

⑪仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮

労働者が自身または配偶者の妊娠・出産を企業に報告したとき、子供が3歳になるまでの適切なタイミングで、仕事と育児の両立についての以下の希望を聞き、配慮することが企業の義務になりました。

  • ●勤務時間帯
  • ●勤務地
  • ●両立支援制度の利用期間
  • ●仕事と育児のバランスを取るための働き方(業務量や労働条件の調整など)

法改正に伴って企業がすべきこと

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法改正に伴って企業がすべきことを紹介します。

企業全体でのルールや制度の見直し

法改正を機に、就業規則や社内制度の整備・見直しをおこない、現場での運用に支障が出ないようにしましょう。また、休業取得者を支えられる業務分担や代替体制のルール化も継続的な運用に必要です。

従業員への情報提供と理解促進

新制度の内容や変更点について、従業員への周知を徹底しましょう。研修や説明会を通じて、制度の理解を深め、利用しやすい環境を整備することが重要です。

制度を利用しやすい職場文化の醸成

制度が整っていても従業員が「利用しづらい」と感じるようでは効果は薄いでしょう。従業員が制度を活用するためには、現場の管理職による組織運営が重要となります。まずは、管理職自身が育児・介護休業を前向きに捉え、取得しやすい雰囲気をつくることが大切です。

たとえば、制度の内容をチームで共有したり、取得実績がある従業員の声を紹介したりすることで、「自分も取得していい」と思えるような空気づくりを進めましょう。

復職時のサポート体制を整える

育児・介護休業からのスムーズな復帰を支えるためには、復帰前の面談や業務の現状共有、必要な情報の整理が重要です。

また、復帰後のサポートとしては、最近の動向や組織体制や制度の変更点などを共有できるようなオリエンテーションを実施するとよいでしょう。あわせて、必要に応じてスキルや業務知識を再確認できるトレーニングを実施し、スムーズに業務を再開できるように支援することも有効です。

事前に、業務を標準化・可視化しておくことで、本人が早期にキャッチアップしやすくなります。

育児・介護休業法の改正を踏まえた社内の整備をしよう

赤ちゃんが大人の指を握るイメージ

今回の法改正は、単なる制度の整備にとどまらず、育児や介護と仕事の両立をより現実的なものとするための環境づくりを企業に求める内容となっています。制度を使いやすいものにするためには、現場での運用やマネジメントが重要となります。

従業員一人ひとりが安心して働き続けられる職場づくりに向けて、改正内容を正しく理解し、柔軟な対応を進めましょう。

著者プロフィールHR Trend Lab編集部
タレントマネジメントやエンゲージメントなどの最新トレンドから、組織や人事にまつわる基本知識までマイナビ独自の視点でお届けいたします。
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