ハラスメントの定義とは?種類や効果的な対策についても解説
考え方・価値観が異なることへの無理解や、職場における優位性の悪用および認識不足から発生する「ハラスメント」。対策を講じず、ハラスメントが職場で横行してしまうと、人材流出や企業イメージ低下などにつながるリスクがあります。
一方、「そもそもハラスメントとはなにか」と問われ、明確に答えられる人は少ないのではないでしょうか。そこで本記事ではハラスメントの定義を解説するとともに、日本の企業におけるハラスメントの現状や企業が講じるべき対策などについて紹介します。
ハラスメントとは?
ハラスメントとは「相手に対して故意に不快な感情を抱かせること」を指します。ここでは代表的な3種類のハラスメントの定義を確認していきましょう。
パワーハラスメント
厚生労働省では、パワーハラスメントを以下1~3の要素をすべて満たすものとして定義しています。
1.優越的な関係を背景とした言動
2.業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
3.労働者の就業環境が害されるもの
具体的には、「わざと必要な情報を与えない」「頭を叩いて叱責する」などがパワーハラスメントに含まれます。
なお、優越的な関係を背景とした言動とは、上司や先輩から部下・後輩に対する言動に限りません。業務遂行に部下や同僚の協力が必要な状況においては、上司・先輩に対しておこなわれる部下・同僚の言動も該当します。
なお、2019年5月に成立した改正労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)により、事業主によるパワーハラスメント防止措置が義務化されました。
セクシュアルハラスメント
セクシュアルハラスメントとは、性的な言動により、特定の社員が不利益を受けたり、その社員の職場環境が害されたりすることを指します。
<セクシュアルハラスメントの具体例>
男性・女性ともに加害者にも被害者にもなり得るほか、同性同士の言動もセクシュアルハラスメントの対象になります。なお、男女雇用機会均等法第11条により、事業主はセクシュアルハラスメント対策を講ずることが義務づけられています。
マタニティハラスメント
マタニティハラスメントとは、妊娠・出産・育児休業等に関する言動により、妊娠・出産をした女性社員や、育児休業等を申請・取得した男性・女性社員の職場環境が害されることを指します。
たとえば、育児のために時短勤務をする社員に対し、「あなたが早く帰る分、私たちにしわ寄せがくる」といった嫌味を言うこともマタニティハラスメントに該当します。
なお、2017年1月1日より施行された「改正育児・介護休業法及び男女雇用機会均等法」により、事業主にはマタニティハラスメントを防止するために必要な措置を講じることが、義務づけられています。
日本の企業におけるハラスメントの現状
企業を対象とした厚生労働省の調査結果報告書「令和2年度 厚生労働省委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査 報告書」によると、2020年から過去3年間のハラスメント相談件数・該当件数の傾向は以下の通りです。
・「各ハラスメントの相談があった」と回答した企業の割合は、高い順にパワーハラスメント (48.2%)、セクシュアルハラスメント(29.8%)、顧客等からの著しい迷惑行為(19.5%)、マタニティハラスメント(5.2%)、介護休業等ハラスメント(1.4%)、就活等セクハラ(0.5%)
・「相談はない」「件数の増減は分からない」「把握していない」を除き、過去3年間の相談件数の推移は、セクシュアルハラスメントは「減少している」が最も高い(8.8%)が、パワーハラスメント・マタニティハラスメントは「件数は変わらない」の割合が最も高かった(パワハラ:14.7%、マタハラ:1.6%)
上記より、セクシュアルハラスメントは減少傾向にあるかもしれませんが、パワーハラスメント・マタニティハラスメントについては「改善が見られていない企業も多い」と捉えることができます。
出典:「令和2年度 厚生労働省委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査 報告書|厚生労働省」
ハラスメント対策が重要な2つの理由
そもそもハラスメント対策はなぜ重要なのでしょうか。ここでは同対策が重要な理由を2つ解説します。
人材流出の防止および人材確保のため
ハラスメントが横行する職場は、社員にとって働きやすい環境とはいえません。そのため、より良い環境を求めて、社員の転職が相次ぎ、人材流出が進む可能性があります。
また、退職した社員がSNSなどに「ハラスメントが起きている」という旨の投稿をした場合、それを見た求職者の方は応募をためらってしまうかもしれません。人材流出だけでなく、人材確保の観点からもハラスメント対策は必須と言えます。
企業イメージ・社会的評価の低下を防ぐため
ハラスメントが起きてしまい、さらにその実情が世間に知れ渡った場合、企業のイメージ・社会的評価の低下は避けられません。とくに現在は、個人がSNSを通じて手軽に情報発信ができる時代のため、悪評が拡散されやすく、売上にも影響が出るリスクが生じます。
そのようななかで、ハラスメントを防止したり、ハラスメントが起きてしまった場合に適切に対処したりすることで、企業イメージおよび社会的評価の維持や向上につなげられる可能性があります。
ハラスメント防止に効果的な3つの取り組み
ハラスメントの防止は、人材流出や企業イメージの低下を防ぐためにも重要です。ここではハラスメント防止に効果的な3つの取り組みを解説します。
経営トップからメッセージを発信してもらう
企業全体でハラスメント対策に取り組む必要性を示すために、経営トップが社員へメッセージを発信することが大切です。経営トップ自ら「なぜハラスメントの防止が重要なのか」を発信することで、社員の意識改善も期待できるでしょう。
ハラスメント防止研修を実施する
ハラスメント防止研修は、社員にハラスメントに対する正しい認識を持ってもらい、ハラスメントを予防する目的で実施されます。同研修ではたとえば、ハラスメントの定義や種類、通常の指導とハラスメントの違い、ハラスメントを防ぐコミュニケーションのコツなどを教えます。正しい知識・認識を持つ社員が増えれば、よりよい職場環境になることでしょう。
相談窓口の設置および匿名アンケートを実施する
実際にハラスメントを受けて悩んでいる社員や職場内でハラスメントがあることを知っている社員向けに、ハラスメントに関する相談窓口を設置するのも有効です。このとき、相談者に不利益が生じないように、プライバシー確保への配慮は必須と考え、対策をしましょう。
また、なかなか相談窓口を利用できない社員のために、全社員に向けて匿名アンケートを実施することも効果的です。匿名アンケートの結果を収集することで、企業としてもハラスメントの実情を正確に把握しやすくなります。
ハラスメントを正しく理解し、対策しよう
「パワーハラスメント」「セクシュアルハラスメント」「マタニティハラスメント」などさまざまな種類がありますが、相手に不快な感情を意図的に抱かせる行為をハラスメントと言います。
ハラスメントの防止は、人材流出や企業イメージ・社会的評価の低下を防ぐためにも必ず取り組まなければなりません。ハラスメントの定義を踏まえた上で、経営トップからのメッセージ発信やハラスメント防止研修の実施など、ハラスメント防止の取り組みを実践してみましょう。