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エンプロイアビリティをわかりやすく解説!組織にもたらすメリットや要素を徹底解説

2021年07月07日更新

エンプロイアビリティとは、「雇用される能力」のことを指します。近年では、「雇用される能力」を個人が磨くことに加え、雇用継続性を確保するために、企業が社員に対してエンプロイアビリティを保障する考え方が広まっています。また採用のシーンにおいては、エンプロイアビリティを自社に合わせて言語化することで、採用基準を統一し、採用のミスマッチを減らすことにもつながります。ここでは、エンプロイアビリティとはなにかを解説するとともに、チェックシートや組織の役割についても紹介します。

目次 【表示】

エンプロイアビリティとは

エンプロイアビリティとは、Employ(雇用)とAbility(能力)を合わせた造語です。一般的には「雇用される能力」と解釈されます。日本では1998年の「労働白書」にて、エンプロイアビリティという概念が登場しました。そこでは、以下のように書かれています。

「長期雇用慣行の下にある者を含め、予期せぬ(あるいは自ら望んだ)労働移動に備え、外部労働市場で通用し、企業に雇用されることを可能とする職業能力(エンプロイアビリティ)を磨くことが必要となってくる」

1998年はバブル崩壊後の景気回復局面から再び後退に入ったタイミングで、雇用・失業情勢が悪化していました。それゆえに、転職といった個人の移動に役立てるという意味でも、個人・企業・国家がそれぞれの立場でエンプロイアビリティの形成に努力することが重視されるようになったのです。

エンプロイアビリティが企業で注目される背景

エンプロイアビリティは、「継続して雇用されるための能力」「産業構造の変化に対応して迅速に転職できる能力」といった考え方を含む、労働マーケットにおける「個人の価値」を示しています。

エンプロイアビリティの向上がプラスの結果をもたらすのは、個人に対してだけではありません。旧来の終身雇用制度から変化している労働市場では、企業が社員に対してエンプロイアビリティを保障することが、雇用継続性の向上にもつながります。

エンプロイアビリティに含まれる5つの要素

エンプロイアビリティは、業務への適性や仕事のモチベーション、労働市場への知識などを中心に、以下の5つの要素から成り立っています。

1. 能力的側面:職業適性、仕事を探すスキル、学習能力、職場への適応能力
2. 意欲や行動的側面:仕事へのモチベーション、キャリアマネジメント
3. 性格的側面:行動をおこす自信や、周りとの関係性を構築する能力
4. 知識的側面:労働市場や、仕事をサポートしてくれる人脈に関する知識
5. 環境的側面:政府や企業の能力開発に関する制度、労働市場の状況

1から4の要素は個人に帰属し、5は社会環境に左右されます。労働者はこれらの要素に関して、企業に必要とされ続けるための努力が求められます。職業への能力だけではなく、持っているスキルに見合った「仕事を探す能力」や、職場に馴染み成果を出す「適応力」、仕事へのモチベーションを「コントロールする力」など、自身の市場価値を高めるためにも総合的な能力開発が大切です。

エンプロイアビリティの2つの種類

エンプロイアビリティは、時代によって変化する価値と時代の変化を受けにくい価値の2つに分けられます。前者を「相対的エンプロイアビリティ」と呼び、後者を「絶対的エンプロイアビリティ」といいます。

・相対的エンプロイアビリティ
市場のニーズや時代の変化によって左右される価値のことを指します。現代では、IT技術の発展や、働き方の変化など、急速に労働環境が変化しています。同じ職種でも、求められる知識や技術がすぐにアップデートされることも少なくありません。そのため労働者自らが、従事する職種や業界のニーズを把握し、資格取得や部署異動などで経験を積むことにより、相対的エンプロイアビリティを高める必要性に迫られています。

・絶対的エンプロイアビリティ
相対的エンプロイアビリティとは異なり、時代の変化の影響を受けにくい価値・スキルのことは「絶対的エンプロイアビリティ」と呼ばれます。弁護士や会計士、看護師といった国家資格を必要とする職業が代表例です。どのような状況下でも、特定の仕事に従事するために必要とされる能力であるため、市場が変化しても生き残る可能性の高いエンプロイアビリティを有しているといえます。

エンプロイアビリティのチェックシートとは

さらに具体的な能力を、厚生労働省が公表している「エンプロイアビリティチェックシート」(※1)をもとに確認してみましょう。このチェックシートは、若者に求められる就業能力を整理した「就職基礎能力(2004年)」および、「社会人基礎力(2006年)」をもとに構成されています。

【エンプロイアビリティチェックシートの構成要素】
•就職基礎能力

1. 責任感
2. 向上心・探求心
3. 職業意識・勤労観

•社会人基礎力
1. 前に踏み出す力
2. 考え抜く力
3. チームで働く力

就職基礎能力

就職基礎能力とは、企業が採用にあたり求める能力であると同時に、比較的短期間の訓練によって向上させられる能力のことを指します。エンプロイアビリティチェックシートでは、この就職基礎能力を以下の3つの項目に分けて、働く上での基本スキルと位置付けています。

•責任感:社会の一員として役割の自覚を持っている
•向上心・探求心:働くことへの関心や意欲を持ちながら、進んで課題を見つけ、レベルUPを目指すことができる
•職業意識・勤労観:職業や勤労に対する広範な見方・考え方を持ち、意欲や態度等で示すことができる

「責任感」と「向上心・探求心」では、社会人に求められる行動を理解しているか、また、積極性やスキルを伸ばす向上心を自分が持っているかをチェックできます。「職業意識・勤労観」は、どのような働き方が自らにとって理想かを考えなおす機会となります。

社会人基礎力

社会人基礎力は、「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」の3つに大きく分けられ、それに伴う12の能力要素から構成されています。チェックシートでは、これら12の能力について細かい質問が設けられており、回答することで自らの得意・不得意な能力に気づけます。

1. 前に踏み出す力(アクション)
•主体性:物事に進んで取り組む力
•働きかけ力:他人に働きかけ巻き込む力
•実行力:目標を設定し確実に行動する力

2. 考え抜く力(シンキング)
•課題発見力:現状を分析し目的や課題を明らかにする力
•計画力:課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力
•創造力:新しい価値を生み出す力

3.チームで働く力(チームワーク)
•発信力:自分の意見をわかりやすく伝える力
•傾聴力:相手の意見を丁寧に聴く力
•柔軟性:意見の違いや立場の違いを理解する力
•情況把握力:自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力
•規律性:社会のルールや人との約束を守る力
•ストレスコントロール力:ストレスの発症源に対応する力

エンプロイアビリティチェックシートは、正規雇用で働くことに対して自信が持てない労働者や、自身のアピールポイントがわからない労働者に向けて作成されました。自身の経験とチェックシートに記載された能力を照らし合わせることで、企業に対して訴求力のあるアピールポイントを洗い出すことが可能です。

このチェックシートは、主に求職者の方向けのものですが、企業の採用シーンや研修でも応用ができるでしょう。職種別に求められる「絶対的エンプロイアビリティ」、「相対的エンプロイアビリティ」を加えることにより、カスタマイズされたエンプロイアビリティチェックシートの作成が可能です。

個人のエンプロイアビリティ向上における組織の役割

エンプロイアビリティ向上がもたらす効果は、個人に対してだけではありません。企業が雇用している社員のエンプロイアビリティを高めることは、社員の業務パフォーマンスを向上させ、ひいては自社の業績アップにつながります。

エンプロイアビリティが高い社員は、同時に労働市場で高く評価される可能性が強まります。場合によっては、転職やヘッドハンティングといった機会を呼び込むかもしれません。そのため「人材育成によって社員のスキルを高めることで転職を誘発し、能力開発への投資が無駄になってしまうのでは?」と心配する企業もあります(ちなみに、この逆説的現象を「エンプロイアビリティ・パラドックス」と呼ぶ)。しかし個人の能力開発への投資が小さい組織では、「この企業では成長できない」と見切りをつけて退職してしまう社員がでてくるものです。

組織が個人のエンプロイアビリティ向上に取り組むことは、既存社員の満足度をあげるだけではありません。たとえ転職する社員がでたとしても、その社員が新たな企業で活躍したり、起業したりすることで「優秀な人材を輩出した企業」としてプラスの印象を持たれるようになります。こうした印象は、採用シーンにおいてもプラスに働きます。

エンプロイアビリティの向上が、個人・組織にもたらすプラスの影響に目を向け、能力開発への投資を続けることが重要です。

エンプロイアビリティの向上は個人と企業の双方によい影響をもたらす

エンプロイアビリティを向上させることで生まれるプラスの影響は個人だけにはとどまりません。企業にとっても、能力開発の研修といったエンプロイアビリティ向上の機会を提供することで、人材の定着や業績向上が期待できます。また、エンプロイアビリティチェックシートを用いて価値ある能力を理解することは、自社の採用シーンで人材に求める能力を見直すことにつながります。エンプロイアビリティに関する取り組みを続けることが、ひいては企業の成長につながるでしょう。

<出典>
※1.厚生労働省ホームページ:エンプロイアビリティチェックシート

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