マイクロラーニングとは?効果やメリット、活用のポイントを紹介
技術の進化や市場の変化の激しい現在、企業はこれに迅速に対応できる人材を育成する必要があります。こうしたビジネスの現場では、迅速かつ効果的な学習が求められており、マイクロラーニングは企業の人材育成における重要な学習形式となっています。
社員の多忙なスケジュールに対応しながら、必要なスキルや知識を短時間で学習するこの形式は、効果的な学習体験の提供や継続的なスキルアップを目指す企業にとって大きなメリットがあります。本記事では、マイクロラーニングとはなにか、注目されている背景、効果やメリット、注意点、活用のポイントを紹介します。
マイクロラーニングとは
マイクロラーニングとは、スマートフォンやパソコンを利用して短時間でおこなう学習形式のことです。コンテンツ1回あたりの学習時間は5分程度と非常に短く、移動時間や日常の隙間時間に学習を進められることが特徴です。この形式は、短い時間で多数のカリキュラムをこなせるため、集中力を持続させやすく、反復学習を促しやすいです。その結果、効率的な知識定着が期待できます。
マイクロラーニングのコンテンツは、動画やクイズなど、特定の形式に捉われないさまざまな形式で提供されるため、学習者は自分に合った方法で学ぶことができます。
eラーニングとの違い
マイクロラーニングと類似した意味合いをもつ言葉としてeラーニングがあります。マイクロラーニングも大枠ではeラーニングの一種であり、いずれもオンラインで学習コンテンツにアクセスし、個人のペースで学べる点などは共通しています。もっとも大きな違いとして、学習時間の長さが挙げられます。
eラーニングは通常、30分から1時間程度の長いコンテンツを提供し、学習者がじっくりと学ぶためにおこないます。一方、マイクロラーニングは5分程度の短時間で完結するため、学習者の集中力を維持しやすく、短時間での学習を目的とすることが多いといった違いがあります。
マイクロラーニングが注目されている背景
マイクロラーニングが注目を集めている背景には、企業が研修にかけるまとまった時間を確保することが難しくなっている現状があります。これは、研修を受講する社員の時間だけでなく、研修を企画・運営する社員の時間の確保についても同様です。このような多忙な社員にとって、短時間で効率的に学べるマイクロラーニングは有効といえるでしょう。
そのため、学習コンテンツに合わせて、研修とマイクロラーニングを使い分け、双方をうまく活用することが重要です。また、スマートフォンの普及により、通勤時間や休憩時間などの隙間時間を利用し、手軽に学習しやすくなりました。それにより、忙しい日常のなかでも学習の機会を逃さず、継続的にスキルアップが図れるため、マイクロラーニングが注目されています。
マイクロラーニングの効果やメリット
マイクロラーニングを運用することで、学習する受講者や運用する企業にどのような効果やメリットがあるのか紹介します。
スケジュールに左右されず学習を進められる
マイクロラーニングは、1回の学習が5分前後で完結することが多いため、忙しいスケジュールのなかでも学習を進めやすいのが特徴です。スマートフォンやタブレットを使って、通勤や待ち時間、休憩時間などの隙間時間で学習できるため、学習者が手軽に、負担を少なく学習することができます。
学習した内容が定着しやすい
学習した内容の定着には反復学習が重要となります。ドイツの心理学者、ヘルマン・エビングハウスの「エビングハウスの忘却曲線」によると、人の脳は一度勉強したことを1時間で56%、1日で74%忘れるとされています。
それに対し、マイクロラーニングは移動中などの隙間時間を活用して短時間で繰り返し学習ができます。こうした復習を繰り返すことで、学習した内容が定着しやすくなります。また、短時間の学習であるため、内容の確認がすぐにでき、自身の理解度を確認しやすいのもメリットでしょう。
教材の作成・修正が容易
短時間の学習であるマイクロラーニングは、教材もコンパクトであるため、作成や修正が容易といえます。法律や技術といった変化が多い分野でもその都度対応がしやすく、学習者に最新の情報を提供できます。
マイクロラーニングの注意点
マイクロラーニングはすべての学習内容に向いているわけではなく、継続的なコストもかかります。以下で具体的な注意点を解説します。
複雑な内容やボリュームの多い内容には不向き
マイクロラーニングは短時間の学習を目的としているため、ビジネスマナーや新しいソフトウェアの操作方法といった基本的な知識やスキルの習得には適しています。しかし、体系的に学ぶ内容や、そもそもボリュームの多い内容に対しては不向きといえます。たとえば、社会人経験のない新入社員に対して、仕事に取り組む姿勢やマインドセットなどは、実践とフィードバックが重要であり、マイクロラーニングに置き換えると効果が限定されてしまいます。
システムの運用に継続的なコストがかかる
マイクロラーニングを導入するには、専用システムの準備や導入の際に初期費用が発生します。また、導入後には運用やメンテナンスに継続的なコストが発生してしまいます。さらに、教材の作成や更新、システムの管理を自社でおこなうための人的リソースの確保も必要になります。
マイクロラーニングの活用のポイント
マイクロラーニングを効果的に活用するポイントを紹介します。
1つの学習コンテンツで完結するような構成にする
マイクロラーニングのコンテンツは、1つの学習コンテンツで完結する形式が望ましいです。情報量が多く、次回に持ち越す必要がある場合、学習が中断されてしまい、効率が悪くなる恐れがあります。
そのため、伝えたい内容を整理し、必要な情報を厳選してコンパクトにまとめることが重要です。
使いやすい環境を整える
マイクロラーニングの利点の一つは、スマートフォンやタブレットなど、モバイルデバイスで気軽に学習できることです。そのため、学習しやすいマイクロラーニングの配信プラットフォームであるかどうかは重要です。学習者が時間・場所問わずに学べるよう、使いやすい配信プラットフォームを選びましょう。
学習履歴を活用する
個々の学習者がどのコンテンツを学び、どの程度理解しているかといった詳細な学習履歴の蓄積と活用も重要です。たとえば、定期的な社員との面談の場において、社員の身につけてきた知識や理解度を知ることができ、どの分野でさらにスキルを伸ばすべきかを判断する材料になります。これにより、自身の描くキャリアや業務に対して不足部分の学習強化の機会提供につながるでしょう。
他の学習方法と組み合わせる
マイクロラーニングだけですべての学習ニーズを満たすことは難しいため、他の学習方法と組み合わせることが効果的です。このような異なる学習方法を組み合わせることは、ブレンディッドラーニング(Blended Learning)として知られています。
ブレンディッドラーニングは、従来の対面型研修とマイクロラーニングなどの複数の学習形態を組み合わせておこなう学習方法で、各手法のメリットを活かしながら、より高い学習効果を実現できるといわれています。たとえば、対人スキルの習得には、対面型研修による直接的な指導やディスカッション、実習が有効な場合がありますが、情報量が多く、一度で習得しきれないこともあります。
そうした場合にマイクロラーニングを活用して、短時間での予習・復習ができると、学習内容を補完できるようになり、組み合わせによる効果が期待できます。
マイクロラーニングを活用して継続的なスキルアップを
マイクロラーニングは、忙しい企業・社員にとって効率的かつ柔軟に学習を進めるために有効な学習形式です。短時間での学習が可能であり、隙間時間を活用して知識やスキルを習得できるため、負担が少なく成長につながります。また、繰り返し学習によって知識が定着しやすい点も大きなメリットです。
一方で、すべての学習ニーズに対応できるわけではないため、複雑な内容やボリュームの多い学習には、他の学習手法と組み合わせたブレンディッドラーニングが効果的です。特に体系的に学ぶスキルや知識の習得には、対面型研修とマイクロラーニングを併用することで、より高い効果が期待できます。マイクロラーニングを効果的に活用し、企業全体の学習文化をさらに高めていきましょう。