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メタ認知とは?高い人の特徴と能力のトレーニング方法・事例を解説

2025年06月13日更新

企業の人材育成において、近年「メタ認知」という言葉が注目されるようになりました。自分自身を客観的に認識するという意味で用いられる言葉ですが、なぜビジネス業界で注目されるようになったのでしょうか。

本記事では、メタ認知とはなにかを詳しく解説するとともに、ビジネスにおいて重要な理由、社員にメタ認知を身につけてもらうメリットやそのための方法、企業の導入事例なども詳しく解説します。

目次 【表示】

メタ認知とは?

メタ認知は、「自分自身の性格や言動、考え方などを客観的にとらえ、認識すること」を指します。

「メタ」とは、「高位の・上位の」という意味をもつ言葉であり、高位・上位の立場から自分を認識することは、つねに客観的な立場から自分自身を捉えることを意味します。

メタ認知はもともと、認知心理学の分野で使われていた用語であり、米国の心理学者ジョン・H・フラベルが定義しました。1970年代から研究されてきましたが、これまで一般的に知られている用語ではありませんでした。

しかし、近年ではさまざまな現場でメタ認知が注目されるようになり、教育現場や企業の人材育成にも応用されています。

メタ認知の種類とメカニズム

メタ認知には2種類あり、メタ認知的知識とメタ認知的技能といいます。メタ認知を実践するためには、メタ認知的知識とメタ認知的技能の双方を身につけることが重要です。それぞれどういった概念なのか、詳しく解説しましょう。

メタ認知的知識

メタ認知的知識とは、自分自身に関してわかっている知識のことを指します。具体的には「人」「課題」「課題解決のための方略(スキーム)」に関する知識に分類されます。

人:一般知識、自分の長所・短所の一例

一般知識「適度な休息をはさむことでパフォーマンスが向上する」
自分の長所・短所「初対面の人ともうまくコミュニケーションがとれる」「小さな失敗を引きずってしまう」

課題:課題そのものに対する知識の一例

「リモートワークではコミュニケーション不足に陥りやすい」「単純作業を長時間続けるとミスが出やすい」

課題解決のための方略(スキーム):課題解決のための作戦や計画の一例

「特定の課題はフレームワークに落とし込み、パターン化して解決する」「結論から話すことで、話の主題が齟齬なく伝わりやすい」

メタ認知的知識を豊富に持つことは、メタ認知を実践する上でカギになります。

たとえば、「ケアレスミスを防ぐには、見直しをしたほうがよい」「集中力を維持するために、適度に休憩を入れる」「会議の前にアジェンダを確認し、自分の意見をまとめる」といったメタ認知的知識があるからこそ、さまざまな情報群(ネット情報や他者からのアドバイス、経験を通じて得る体験)から、自身に合致しやすい適切な方法を取捨選択することができるようになります。

メタ認知的技能

メタ認知的知識をもとに自分自身のことを認識し、有効な対策を講じるための能力をメタ認知的技能とよびます。具体的には「モニタリング」と「コントロール」の2つに分類できます。

モニタリングは、自分自身の行動や考え方が正しい方向に向かっているか、認知が正常かを判断するためにも重要となります。
またコントロールは、モニタリングによって客観的に自分自身を認識したとき、目標に向かって改善したり、悪い方向へ向かったりしないよう行動や考え方を修正します。

モニタリング:メタ認知的知識をもとにした客観的な認識の一例

「この問題は簡単に解きやすい」「普段と比べて体調がすぐれない」

コントロール:モニタリングの結果による改善活動の一例

「もう少し分かりやすい表現はないだろうか」「ここはテキストよりイラストのほうが分かりやすい」

メタ認知能力が高い人の特徴

メタ認知能力が高い人にはどういった特徴があるのでしょうか。その違いを詳しく見てみましょう。

感情に振りまわされることなく冷静

メタ認知能力が高い人は、喜怒哀楽の感情に振りまわされることが少なく、つねに冷静な判断ができる傾向があります。これは感受性が低いという意味ではなく、つねに自分を客観視することで感情をうまくコントロールできているということです。
たとえば、取引先や顧客から大きなクレームがあったときでも、焦ることなく優先順位をつけながら適切な対応がとれます。

周囲と良好な関係を築ける

メタ認知能力が高いと、周囲の人と自分との距離感を客観的に捉え、お互いに心地よい関係を維持できます。
また、周囲の人に対して偏見や思い込みを持たず、さまざまな考えや価値観を受け入れられるため、同僚や上司、部下ともスムーズな連携をとりながら仕事を円滑に進められます。

前向きで柔軟性の高い考え方ができる

仕事で大きなミスをしたとき、メタ認知能力が高い人は、再発防止のためになにをすべきかを柔軟に考えられます。
また、ミスや間違いをネガティブに捉えるのではなく、自分自身が成長するための機会と捉え、前向きに受け止めることができるのも特徴のひとつに挙げられます。

ビジネスにおいてメタ認知が重要な理由

ビジネスの分野でメタ認知がますます重要となっています。メタ認知が注目されるようになったのは、どのような背景があるのでしょうか。

変化の激しい社会で柔軟な対応力が求められている

メタ認知能力が備わっていると自分自身を客観的に認識でき、自身をコントロールすることができます。

たとえば、感情や行動に思い込みがあると、自身の間違いに気づきにくかったり、他者の意見に耳を傾けにくかったりするため、問題が起きた際に真の原因を見誤ることがあります。

しかし、メタ認知能力が備わっていれば、思い込みに左右されず客観的に状況を認識することで、改善のための行動ができます。その結果、なにが問題であるかを把握し、どのように進めていけばよいかがわかるようになるため、課題解決や目標達成につながるでしょう。

従業員の能力開花につながる

従業員自身や組織が順調な成長を遂げるためには、従業員それぞれの強みを活かし、能力を発揮していくことが重要です。そのために、まずは自身の強みを把握する必要があります。

メタ認知能力を高めることにより、自分の強みを把握でき、そのうえで強みを活かしながら高いパフォーマンスを発揮できるようになるのです。また、反対に自分の弱みを客観的に把握できていれば、どうすればそれを克服できるのか有効な対策も見えてきます

メタ認知能力を高めるためのトレーニング方法

従業員自身がメタ認知能力を高めるためには、メタ認知的技能でも紹介した「モニタリング」と「コントロール」をトレーニングすることが重要となります。

セルフモニタリング

自分自身の行動や思考を客観視し、確認する作業をセルフモニタリングとよびます。

自分の良いところや長所は向きあいやすいものですが、欠点や短所とは正面から向き合えないことも多いものです。そこで、社員にメタ認知能力を高めてもらうためには、まず社員自身が自分の欠点や短所から逃げずに意識的に向き合うことが第一歩となります。

■実践例:「ビジネススタイル診断」や「性格診断」

セルフモニタリングを手助けするツールとして有効です。これを活用しながらセルフモニタリングに取り組んでもらうことで、社員自身が客観的に強み・弱みを認識でき、それらにどう向き合い、活かしていくかを考えます。

セルフコントロール

なぜそのように感じるのか、そのような行動をとるのかなど要因を分析して、対策をすることがセルフコントロールです。セルフモニタリングによって社員自身の改善すべきことが見えてきたら、それらを克服するためのセルフコントロールを実践します。

■実践例:「To-doリスト」

たとえば、複数の業務を確実に遂行できるように1日のタスクをリスト化し、優先順位をつけることで、効率的に時間を使うことができます。

マインドフルネス

また、「セルフモニタリング」と「セルフコントロール」を併せてトレーニングする方法として、「マインドフルネス」がさまざまな企業で注目されています。

マインドフルネスとは、今、この瞬間の自分の思考・感情・行動などについて善悪の判断をせず、ありのままを観察することです。たとえば、1回1~3分の瞑想を、1日に数回行います。今、自分にどのような感情起こっているのかに気付き、だんだん注意力と落ち着きが増してきて冷静な自分の状態になります。実践するうちに、自己理解と感情のコントロールを促進します。

自分自身を客観的に眺め受け入れる実践を繰り返していくことで、メタ認知の力を育てていきます。

メタ認知トレーニングを実践した企業事例

それでは、メタ認知トレーニングを取り入れた企業では、どのような方法を実践しているのでしょうか。導入に成功した企業から2社の事例をご紹介します。

A社(業種:情報・通信業)

国内大手インターネット企業であるA社では、2016年より独自のマインドフルネス研修をおこなっています。内容は、「ジャーナリング(頭に思いつくままに紙に書き出すこと)」と「瞑想」をセットとして相乗効果を図っています。

その結果、研修の導入から2年経った2018年の効果測定では、マインドフルネスをやっている人といない人では、業務のパフォーマンスに違いが見られました。また、研修の経験者は未経験者に比べて、業務パフォーマンスが20%高く、さらに週3回以上の実践者と未経験者を比べると、40%ほど差がつく結果となりました。

B社(業種:投資・金融サービス業)

大手証券会社の1つであるB社では、健康経営の一環として、新入社員向けにマインドフルネス研修を行っています。特に、新入社員は新しい環境下でストレスを感じやすいため、メンタルヘルスのサポートに取り組むことになりました。大学医学部の精神科医と協力し、カスタマイズしたマインドフルネス認知療法を実践しています。

研修内容は、自分の思考や感情、身体を観察し、否定的な感情や行動から距離を取る技術を学びます。この実践と講師とのやり取りを繰り返すことで、不安やストレスに対処できるようになるのです。受講後には、「自分の心身の状態をある程度コントロールできることが分かった」と気付きを実感する声が寄せられています。

社員のメタ認知能力向上に向けた支援を実施しよう

社員一人ひとりがメタ認知能力を高めることは、社員自身の強みを活かすことにつながり、組織のパフォーマンスの向上が期待されます。

メタ認知能力の高い人の特徴として紹介した内容を参考に、まずは社員自身にセルフモニタリングをおこなってもらいましょう。セルフモニタリングでは、診断ツールなどを用いるのも一つの方法です。

社員に日頃からセルフモニタリング・セルフコントロールに取り組んでもらえるよう、人事部門でもそのような機会を提供するなど、具体的な支援の内容を検討してみましょう。

著者プロフィールHR Trend Lab編集部
タレントマネジメントやエンゲージメントなどの最新トレンドから、組織や人事にまつわる基本知識までマイナビ独自の視点でお届けいたします。
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