ロジカルシンキングとは?フレームワークや鍛え方も紹介
目標・ゴールの達成や課題の早期解決を図るためには、物事を論理的に考える「ロジカルシンキング」のスキルを身につけることが重要です。また、顧客や取引先との商談において、相手を説得する際にもロジカルシンキングのスキルは役立ちます。
ロジカルシンキングとはなにか、社員にロジカルシンキングのスキルを身につけてもらうためには、どういった鍛え方が有効なのか、役立つフレームワークの一例などもあわせて紹介します。
ロジカルシンキングとは
ロジカルシンキングとは、「筋道を立てて物事を考える」ことを指します。たとえば、ゴールや目標を明確にしたうえで、それを最短かつ、最小限の労力で達成するためのシナリオを具体的に描くことが挙げられます。
ロジカルシンキングの「ロジカル」とは、日本語で「論理的」という意味を指すことから、「論理的思考」ともよばれます。
ロジカルシンキングを構成する2つの要素
ロジカルシンキングを構成する要素には、「筋道が通っている」ことと、「曖昧さがない」ことの2点が挙げられます。
筋道が通っているとは、物事が理屈にかなっており、結論と根拠が1対1で正しく対応している状態を指します。また、曖昧さがないとは、結論と根拠を構成する要素が明確で客観的に定まっている状態を指します。
たとえば、システム開発のプロジェクトを進めるにあたって、決められた納期までに納品するためには、要件定義や基本設計、データの整理、インターフェースのレイアウト・デザインの方向性の決定、アサインする担当者の選出などが必要となってきます。
同時に、いつまでに要件定義や基本設計を完成させるのかなど、その後の工程を踏まえたスケジュールも作成する必要があるでしょう。
上記はあくまでもプロジェクト進行における一例に過ぎませんが、ゴールを明確化したうえで各工程やフェーズの筋道を立て、それを達成するためのシナリオを具体的に描くことがロジカルシンキングです。
クリティカルシンキングとロジカルシンキングの違い
ロジカルシンキングと混同しやすい概念にクリティカルシンキングがあります。クリティカルシンキングとは批判的思考ともよばれ、「自分や他者の思考・言動が本当に正しいのか、一旦立ち止まって“あえて疑う”思考法・思考習慣」のことを指します。
「批判的」や「疑う」という言葉が含まれていることからネガティブな意味に捉えられがちですが、否定的なものではなく、疑うことで本質を発見しやすくなるのがクリティカルシンキングの特徴です。
ロジカルシンキングが「筋道を立てて物事を考える」ことであるのに対し、クリティカルシンキングは「本当に筋道が通っているか、本質的であるかを、あえて疑い検証する」という違いがあります。
ロジカルシンキングを社員に身につけてもらうメリット
ロジカルシンキングは社内における会議や取引先との商談など、さまざまな場面で役立ちます。社員一人ひとりがロジカルシンキングを身につけることで、企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。
分析力・課題解決力が向上する
ロジカルシンキングを身につけることで、客観的に物事を見られるようになります。
問題を一面的に捉えずに、因果関係や相関関係を明確にするといった分析力が高まることで、なぜそのような問題が発生しているのか、客観的な視点で捉えられるようになります。結果的に、問題の真の原因が明確化できるでしょう。
また、問題や課題の原因が明確化できれば、どういった解決策が有効なのかを導き出し、課題解決力を高めることにもつながります。
業務上のトラブルやクレームの防止につなげられる
ロジカルシンキングを身につけ、物事を論理的に考えることができれば、自分自身の意見を整理しながら第三者にわかりやすく伝えられます。それにより、なんらかの問題や困りごとが発生したときも、迅速かつ適切なコミュニケーションがとれるでしょう。
社内はもちろん、取引先や顧客とも円滑なコミュニケーションが図れるようになれば、業務上のトラブルやクレーム防止にもつながります。
提案力・交渉力が向上する
取引先や顧客と商談を進めるときや、社内の会議など、ビジネスにおいては相手を説得しなければならない場面も多いものです。
ロジカルシンキングが身についていれば、相手に納得してもらえるような筋道を立てた説明や提案ができ、商談における交渉を有利に進めたり、社内会議で提案を受け入れられたりする可能性が高まります。
また、商談において納得感の高い提案ができれば、取引先や顧客から自社に対する信頼性も向上していくでしょう。
ロジカルシンキングの代表的な思考方法
社員にロジカルシンキングを身につけてもらうためには、論理的な構造を理解しておく必要があります。ここでは、論理的な構造を導き出す代表的な2つの思考方法を紹介します。
帰納(きのう)法
帰納法とは、個々の観察事項から共通点を見つけ出し、結論を導き出す方法です。
観察事項1:商品Aを購入する顧客は20代女性が多い
観察事項2:商品Aは、SNSでは、男性よりも女性から反響が大きい
観察事項3:商品Aを購入する男性は若年女性向けのプレゼント用包装を希望する場合が多い
上記のような観察事項が見られた場合、帰納法によって以下のような結論を導き出すことができます。
結論:「商品Aは、女性(とくに若年女性)から支持を受けている」
演繹(えんえき)法
一般的な事実と観察事項をもとに、論理を順序立てて説明する方法を演繹法といいます。
一般的な事実:企業の生産性向上のためDXの推進が求められている
観察事項:自社では他社に比べて、業務のシステム化が進んでおらず、生産性が低い
上記のような観察事項が見られた場合には、演繹法によって以下のような結論を導き出すことができます。
結論:「生産性を向上させるために、自社では早急にDXに取り組んでいかなければならない」
ロジカルシンキングの代表的なフレームワーク
帰納法・演繹法を実践するための補助となる代表的な3つのフレームワークを紹介します。
MECE(ミーシー)
MECEとは「Mutually Exclusive & Collectively Exhaustive」の頭文字をとったもので、「モレなくダブりなく」という意味を指します。結論を導き出すにあたって、重要な点の見落としや重複がないかをチェックする際に用いられます。
MECEを活用する代表的なフレームワークとしては、事業領域や業界の調査に用いられる「3C分析」や、マーケティング分析に用いられる「4P分析」、購買プロセスの説明に用いられる「AIDMA」などが挙げられます。
ロジックツリー
ロジックツリーとは、物事を論理的に整理し、表現するためのフレームワークです。
ロジックツリーは、複雑な事柄をわかりやすく伝えたい場面や、原因究明のために本質的な問題を絞り込み、解決策を検討する場面などに用いられることが多くあります。
ピラミッドストラクチャー
ピラミッドストラクチャーとは、結論(メインメッセージ)を頂点として、その配下に根拠(サブメッセージ)を置くことで論理を構成化するフレームワークです。事実情報から根拠を導き出し、さらに複数の根拠をもとに帰納法を用いて「だからなにがいえるか?」を考え、結論を導き出します。
商談や会議などの場でプレゼンテーションをおこなう際、ピラミッドストラクチャーを活用することで相手に納得してもらえるような説明ができるでしょう。
ロジカルシンキングを鍛える方法
ロジカルシンキングは、特定の手法やフレームワークを用いただけでスキルが身につくとは限らず、日頃からトレーニングを継続することが重要です。社員一人ひとりに日頃から実践してもらいたいトレーニング方法を紹介しましょう。
意見を言語化する
常日頃から社員自身が思っていることや考えていることを、言葉として表現してもらうことが重要です。
具体的な言葉で言語化しようとすると、その言葉が自分の考えを正確に示しているか、相手に伝わる表現になっているかを考える必要があり、論理的な思考力を高められます。
セルフディベートの実践
セルフディベートとは、自分自身のなかで意見を戦わせることです。
たとえば、自分ではAという意見をもっている状態で、Bという反対意見をもった人がどのように反論してくるのかを想定します。それに対し、Aという意見を主張する根拠や理由を考える過程において、論理的な思考力を高めることができます。
ロジカルシンキング研修の受講
ロジカルシンキングを鍛えるための実践的な研修を受講してもらうのも有効です。
ロジカルシンキングとはなにか、その重要性を知ってもらい、今回紹介した演繹法や帰納法、各種フレームワークの活用方法も実践を通して学ぶことができます。知識を深めるだけでなく、実践で使えるテクニックを習得するためにも、ロジカルシンキング研修の受講はおすすめです。
ロジカルシンキングで社員のスキルアップを図ろう
物事について筋道を立てて考えるロジカルシンキングは、分析力や問題解決力、提案力の向上、仕事上のトラブル・クレームの防止にもつながることから、社員一人ひとりに身につけてもらいたいスキルです。
そのために、日頃からできるトレーニング方法を紹介することや、MECEやロジックツリーといった、フレームワークの実践を交えたロジカルシンキング研修を受けてもらったりすることで、社員のスキルアップにつながっていくと期待できます。