アサーティブコミュニケーションとは?実践に役立つ4つのマインドやDESC法も解説
ビジネスシーンにおいて自分の意見をうまく主張することができず、コミュニケーション方法に悩んでいる方もいらっしゃるでしょう。相手のことを思いやりつつも、自分の意見を明確に主張することを「アサーティブコミュニケーション」とよびます。
本記事では、アサーティブコミュニケーションにおいてどのようなマインドが必要なのか、具体的な実践方法もあわせて紹介します。
アサーティブコミュニケーションとは
アサーティブ(assertive)とは、日本語で「断言する」、「はっきりと自己主張する」といった意味を持ちます。ただし、アサーティブコミュニケーションはただ自己主張をすることではなく、相手に対して配慮をしつつも自分の伝えたいことを明確に主張することを指します。
自他を尊重し、適切な言葉を選んでコミュニケーションを図ることで、相手を不快にさせることなく自分の主張を明示できるため、双方にストレスがかからない手法としても有効です。
本記事ではビジネスシーンにおけるアサーティブコミュニケーションを前提として解説していきます。
コミュニケーションには3つのタイプがある
アサーティブコミュニケーションを正しく理解し実践するためには、コミュニケーションには主に3つのタイプがあることを押さえておく必要があります。
ノンアサーティブ型(非主張的)
ノンアサーティブ型とは非主張的なコミュニケーションともよばれ、自分の意見を明示することができず内面にため込みやすいタイプです。
たとえば、上司やクライアントから指示や提案を受けたとき、言動を見るかぎり表面上は納得しているように見えても本心では納得できておらず、不平や不満を感じていることもあります。
また、他者と自分を比較して自己卑下をしやすく、言いたいことを言えずに我慢してしまうこともノンアサーティブ型の特徴といえるでしょう。
アグレッシブ型(攻撃的)
アグレッシブ型は攻撃的なコミュニケーションともよばれ、ノンアサーティブ型とは対照的に自分の意見を押し通そうとするタイプです。
納得できない指示や意見を提示された場合、自分自身が納得できるまで相手に質問を投げかけたり、無理やり自分の考えを通そうと相手を追い詰めたりする傾向があります。
さらに、相手よりも自分のほうが優れていると証明するために勝ち負けにこだわったり、グループや組織のなかで主導権を握ろうとしたりする傾向が見られるのも、アグレッシブ型の特徴といえるでしょう。
アサーティブ型(自他尊重型)
アサーティブ型は自他尊重型のコミュニケーションともよばれ、冒頭でも紹介したとおり相手を思いやりつつも、適切な言葉を選択しながら自分の意見をはっきりと伝えられるタイプです。
このタイプは、自分自身の信念を持っていると同時に、相手の信念も大切にしています。また、「自分と異なる意見があるのは当たり前」と認識しており、それを多様性として受け入れていることもアサーティブ型の特徴といえるでしょう。
アサーティブコミュニケーションを実践するために重要な4つのマインド
アサーティブコミュニケーションを実践するために、身につけておきたい重要な4つのマインドがあります。具体的にどのようなマインドが必要なのか解説していきます。
1.誠実
誠実とは、相手に対しても自分自身に対しても正直かつ素直であることを意味します。
たとえば、部下の意見を尊重できる上司は誠実であると捉えられがちですが、上司が自分の意見を明示できなければ、自分自身に対して誠実とはいえません。あくまでも自分と相手に対して正直で素直であることが前提となります。
2.率直
率直とは、自分の真意が正しく伝わるように、ストレートに表現することです。
たとえば、自分自身に非があり謝罪の気持ちを伝えようとした場合、遠回しな言い方では相手に意図をくみ取ってもらえないこともあるでしょう。真意が伝わらず相手に誤解を招くことがないよう、率直に表現することが重要です。
3.対等
対等とは、相手と自分の関係性や立場にかかわらず、誰に対しても同じ気持ちや態度で接することです。
たとえば、上司や取引先の前であっても萎縮することなく、自分の意見を明確に主張できるのは、対等な姿勢といえるでしょう。また、部下や後輩に対しては、自分が上の立場だからといって上から目線の態度で接するのではなく、相手の意見や主張を傾聴することも対等な姿勢にあたります。
4.自己責任
自己責任とは、自分自身が提案したことに対して思うような結果が得られなかった、もしくは提案した相手との間でトラブルが生じた場合、自分にも責任があると認識することです。
たとえば、部下に指示を出して依頼した仕事が、良い結果に結びつかなかったというケースもあるでしょう。そのような場合でも、自分自身の伝え方やフォローの仕方に問題はなかったかなどを自問し、すべてを相手の責任として捉えないことが重要です。
アサーティブコミュニケーションに有効なDESC法
相手に配慮しながら、自分の主張を明確に伝えるアサーティブコミュニケーションを実践するためには、「DESC(デスク)法」とよばれるコミュニケーション技法が有効です。
DESC法とは「Describe(描写する)」、「Express/Explain(表現する/説明する)」、「Suggest/ Specify(提案する/具体的に挙げる)」、「Choose/Consequence(選択する/結果を伝える)」の4つから構成されます。このD・E・S・Cに沿って会話をすることで、相手に配慮しながら自分の主張ができるようになります。
Describe(描写する)
「Describe」は、現在起こっていることや状態などを客観的に描写し、感情を含めず事実のみを相手に伝えることです。
例)「1週間前に商談で訪問したA社から、見積書が届いていないという連絡が来ました。」
Describeで重要なのは、自分自身の意見や考え、推測を述べるのではなく、あくまでも事実のみを相手に伝えることです。まずは正確な事実情報を提示し、それを前提としてコミュニケーションを図る必要があります。
Express/Explain(表現する/説明する)
「Express/Explain」は、Describe(描写する)で提示した事実をもとに、自分自身の意見を伝えることです。
例)「先方も連絡が来ないままだと不安に感じると思います。」
Express/Explainでは、説明の際に感情が高ぶってしまい、相手に対して攻撃的にならないよう注意しなければなりません。
Suggest/ Specify(提案する/具体的に挙げる)
「Suggest/Specify」は、起こっている問題や課題に対して、それを解決するための具体的な手段・方法を提示することです。
例)「もし見積書送付を忘れていたとしたら、早めに先方へ謝罪の連絡と、いつまでに見積書を送付できるかを伝えてはいかがでしょうか?」
Suggest/Specifyで重要なのは、あくまでも提案することにとどめて、相手に対して強制をしないことです。自分では提案として相手に伝えたつもりなのに、言葉の選択を間違えてしまうと命令のように受け取られることもあるため注意が必要です。
Choose/Consequence(選択する/結果を伝える)
「Choose/Consequence」は、提案内容を相手が受け入れた場合と、受け入れなかった場合の両方を想定し、それぞれに対して自分から相手への言動の選択肢を用意しておくことです。
受け入れられた場合の例)「ありがとうございます。よろしくお願いします」
受け入れられなかった場合の例)「今すぐに連絡するのが難しいようであれば、私のほうから先方へいつまでに送付できるかを伝えておきましょうか?」
Suggest/Specifyで提案された内容に懸念や不安を感じれば、受け入れてもらえないケースも想定されるため、相手の反応に応じて対応できるようChoose/Consequenceで自分の言動の選択肢を用意しておきましょう。
アサーティブコミュニケーションを実践し、コミュニケーションの質を高めよう
本心では不安や懸念を感じているのに、相手との関係性が悪化するのを恐れるあまり、自分の主張を伝えづらい場面も少なくありません。
しかし、アサーティブコミュニケーションを実践できれば、相手との関係性を損なわずに対等な立場から明確な意思表示ができるようになります。それにより、社員一人ひとりがお互いに率直な意見を交わせる風通しの良い職場になっていくはずです。
今回紹介した4つのマインドやDESC法を参考にしながら、アサーティブコミュニケーションを実践してみましょう。