課題解決力はどのように養成する?課題解決の基本4ステップも解説
企業が目標を達成するためには、さまざまな課題があるケースも多いことから、社員には自ら課題を認識し、解決に向けて行動する能力が求められます。このようなスキルを課題解決力とよびます。企業が社員の課題解決力を養成するためには、どのような方法が有効なのでしょうか。
本記事では、課題解決に取り組む基本ステップと、具体的な養成方法の例もあわせて紹介します。
課題解決力とは
ビジネスにおける「課題」とは、目標と現状とのギャップのことを指し、課題を解決するということは、目標と現状とのギャップを埋めることを意味します。
すなわち、課題解決力を一言で表すと、「目標と現状とのギャップを明確にしたうえで、そのギャップを埋めるために実効性の高い解決策を立案できる能力」を指します。
業務において抱えている課題の背景には、さまざまな原因や要因があるものです。そのなかで、表面的な原因の背後にある、真の原因(真因)を正しく認識することが課題解決の第一歩となるでしょう。
課題解決と問題解決との違い
課題解決と似た意味をもつ言葉に問題解決があります。
ビジネスにおける「問題」とは、自社で発生している不利益や悪影響といったネガティブな事象のことを指し、問題解決とはこれらを解決することを意味します。
課題解決は目標と現状とのギャップをとらえ、そのギャップを埋めていくことで目標達成を目指すのに対し、問題解決は現在発生しているネガティブな事象に対処するといった違いがあります。
課題解決力が高い社員の特徴
課題解決力の高い社員にはどういった特徴が見られるのでしょうか。大きく分けると以下のような特徴が挙げられます。
1. 課題を客観的にとらえ、その真因を見極められる
2. 解決策を論理的に考えることができる
3. PDCAサイクルを回しながら解決策を実行し、柔軟な対応ができる
課題の真因を見極められることはもちろんですが、論理的かつ柔軟な思考で解決策を考え、実行できる社員こそが課題解決力が高い社員といえるのです。
課題解決力の高い社員が企業に求められる理由
人材採用や人材育成において、課題解決力を重視する企業は少なくありません。企業が採用候補者や社員に対して課題解決力を求める背景には何があるのでしょうか。
将来の予測が困難な時代に突入したため
経済のグローバル化やIT技術の進歩などによって、将来の予測が困難な時代へと突入しています。また、時代の変化とともに人々のライフスタイルは多様化しており、商品やサービスのニーズも画一的なものではなくなってきている現状があります。
将来を見通すことが難しいことから、企業ではこれまでに直面したことのない課題にぶつかることも少なくないでしょう。
そのような事態に企業が臨機応変に対応していくためにも、課題の真因を正確にとらえ実効性の高い解決策を立案・実行できる課題解決力が求められています。
サービス品質向上のため
ライバルとなる同業他社がいるなかで自社が生き残っていくためには、サービス品質を高めることは重要なポイントといえるでしょう。
そのためには、市場の潜在的なニーズを的確に把握し、要望に応えていく必要があります。
課題解決力が備わっていれば、現在提供している商品やサービスについて顧客からクレームや要望が直接届いていなくても、自発的に課題を見つけ、自社で品質改善に向けた検討ができるようになるでしょう。
また、クレームが届いた場合にもその真因をスピーディーに突き止め、改善すべきポイントを絞り込んで素早く対応できるようになるはずです。
その結果、他社に先駆けてサービス品質の向上が実現でき、それによって顧客からの信頼を獲得し、売上アップにもつながっていくことが期待できます。
課題解決に向けた4つのステップ
実際に課題解決に取り組む際、どのような手順を踏んでいけば良いのでしょうか。4つのステップに分けて解説します。
1.課題の明確化
まずは目標と現状とのギャップを把握し、課題を明確化します。具体例としては、「営業成績が目標に到達できていない」などが挙げられるでしょう。
すでに発生している課題であれば認識しやすいですが、違和感やわずかな不具合など、あいまいでとらえきれていない課題であれば、はじめに課題を顕在化させ認識する必要があります。
また、何も課題が見えていない現状のなかから、より良い状態を目指すために主体的に課題を見つける場合もあります。
2.原因(真因)の探求
なぜその課題があるのか、課題を構造化して真の原因を探求し突き止めます。
たとえば、営業成績が目標に到達できていない原因としては、「訪問件数が少ない」「客単価が低い」「受注率が低い」といったことが考えられるでしょう。
課題を構造化するには、「MECE」、「ロジックツリー(Whatツリー、Whyツリー)」、「帰納法と演繹法」などといった手法があります。
3.解決策の立案
課題の原因を解決するために、どういった方法を用いるべきか、具体的な方法や策を考えます。
たとえば、提案後の受注率が低い原因として営業トークに問題が考えられる場合には、営業トークの見直しを図ったり、今以上に商品知識を身につけたりすることが解決策にあたります。
なお、解決策の立案にあたっては、「Howツリー」や「ブレインストーミング」、「KJ法」などの手法が用いられます。
また、立案した解決策には取り組む優先順位をつけていきましょう。時間や資源は限られているため、判断基準を設け、実行する解決策を絞り込んでいくことが重要です。
4.解決策の実行・検証
解決策が立案できたら、PDCAサイクルを回しながら解決策を具体的な計画に落とし込み、実行、評価、改善を行います。
とくに重要となるのが評価と改善のフェーズです。評価では、解決策の実行にあたって良かった点と悪かった点を客観的に分析する必要があります。また、改善では、新しい解決方法を発想することや、状況に応じて柔軟に軌道修正を図ることも重要です。
社員に課題解決力を身につけてもらう方法・手段
社員に課題解決力を身につけてもらうためには、どのような方法が有効なのでしょうか。人事部門がサポートできる方法の一例を紹介します。
日常の業務に当てはめて考えてもらう
業務フローのなかでの課題を社員に意識してもらうことで、普段の業務を通して課題解決力を身につけることができます。
マニュアル通りに行っている業務も、より効率的な方法はないか、ムダはないかを意識的に考えることで現状の課題が見えてくることもあるでしょう。
また、業務のなかで課題を認識したとき、部署やチーム全体で課題の真因を考え、自分なりの解決策を挙げてもらうことも課題解決力を身につける訓練として有効です。
課題解決に向けた計画力を身につけてもらう
課題解決に向けた計画を立てていても、想定外の事象やトラブルが発生し計画通りに対応できないこともあるでしょう。
このような事態を最小限に留めるためには、実際の業務を通してトレーニングを行うのもひとつの方法です。具体的には、業務のなかで発生し得るリスクや変化を洗い出し、事前に対応策を検討しておくことが重要です。
実際の業務をフェーズごとに4つの要素(人・設備やシステム・モノや情報・方法や手順)について想定されるリスクと対応策を考えてもらうことで、社員に計画力が身につきます。それにより、想定外のトラブルにも冷静に対処し、課題解決に向けて対応できるようになるでしょう。
課題解決力を養成する研修・講座の実施
課題解決力に必要な考え方やプロセスなどを一から学び、社員に基礎知識を習得してもらいたい場合には、研修会社などが運営している研修・講座などへ参加してもらう方法も有効です。
これらの研修や講座では、新入社員から管理職まで幅広い社員を対象としたカリキュラムが提供されています。そのため、それぞれの社員のスキルレベルや経験に合わせて論理的な課題解決を実現するための訓練ができます。
VUCA時代に求められる課題解決力を養成しよう
将来の予測が難しく変化が激しいVUCA時代においては、想定外の課題にぶつかることも多く、課題解決力をもった社員は企業にとって重要な存在です。
課題解決に向けては、今回紹介した4つのステップが基本となりますが、実際に意識して取り組んでみないとスキルを身につけることは難しいものです。
普段の業務の中で課題解決力を身につけるトレーニングを意識してもらうことはもちろんですが、外部の企業や機関が実施している研修や講座などに社員が参加できるよう、制度や環境を整備することも検討してみましょう。