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【研究員コラム】人生100年時代のキーワード「ライフシフト」とは?企業にも重要な理由

2021年01月27日更新


日本では、1950年代と比べて平均寿命が20歳以上伸び、男性の平均寿命は81.41歳、女性は87.45歳となっています。今後も日本の長寿化はさらに進み、人生100年時代が到来するといわれています。

あわせて、「教育を受け、仕事をし、引退を迎える」というこれまでの3ステージの人生から、多様な働き方や生き方を複数選択していくマルチステージの人生へとシフトする「ライフシフト」という言葉を最近では見聞きするようになりました。働き方や生き方が変わるということは、雇用する企業側にも影響が生じます

本コラムでは、今後ますますの注目を集めることが予想される「ライフシフト」とはなにか、またそれが企業にも重要である理由について解説します。

目次

ライフシフトとは?

まずは、「ライフシフト」とはなにかについて解説します。

ライフシフト=マルチステージへの転換

ライフシフトとは、図1のような「教育・仕事・引退」といった3つのステージの人生から、マルチステージの人生へとシフト(転換)していくことです。人生100年時代の人生戦略を示したベストセラー『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略』(リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット著、池村千秋訳/東洋経済新報社,2016)により提唱され、一躍有名になりました。

今までの人生80年時代、日本の終身雇用を前提とした年功序列制度のもとでは、20歳前後まで学校で教育を受け、仕事をし、60~65歳で定年を迎えて引退するという【教育→仕事→引退】という3ステージの人生が主流でした。

しかし、人生100年時代となると、生活のためにも働く期間が長くなっていくことが予測されます。年金の支給年齢は年々引き上げられ、平均寿命は延びています。もし60~65歳で定年退職・引退した場合、残りの約40年分の人生を賄えるほどの貯蓄を現役中にする必要がありますが、なかなか難しいのではないでしょうか。

そのため、60~65歳以降も健康で長く働き、充実した人生を歩むために、多様な働き方や生き方など、さまざまなステージを選択していくマルチステージの人生へとシフトする必要があるとリンダ・グラットン氏は提唱しています。

<図1:人生モデルのシフト(転換)>

マルチステージを生きるとは?

ライフシフトは、日本政府が設置した「人生100年時代構想会議(※1)」にも取り入れられ、リンダ・グラットン氏は有識者として招かれています。このことからも、日本政府も人生100年時代においてライフシフトは重要であると考えていることがうかがえます。今後ますます注目されていくでしょう。

では、ライフシフトにおける、マルチステージを生きるとは具体的にはどのようなことなのでしょうか?以下の図は、人生100年時代構想会議でリンダ・グラットン氏が提出した資料を参考に作成したものです。

(※1)2017年9月に人生100年時代を見据えた経済社会システムを創り上げるための政策のグランドデザインを検討する会議

<図2:3ステージからマルチステージへ>

今までの3ステージでは、教育から引退までの間に仕事がメインとなっていましたが、マルチステージでは、仕事一辺倒ではなくさまざまなステージが存在します。複数のキャリアを持ち、さまざまな経験をしたり、知識やスキルをアップデートしたりしながら100年時代を生き抜いていくのです。

マルチステージを生き抜くために必要な3つの無形資産

人生100年時代、マルチステージを生きるには、お金や土地といったような有形資産はもちろん大事ですが、それとは別に3つの無形資産も重要になるとリンダ・グラットン氏は指摘しています。

【3つの無形資産】
生産性資産:収入を得るためのスキルや知識、仕事の仲間や評判のこと
活力資産:バランスのとれた生活や家族・友人との良好な関係、肉体的・精神的な健康のこと
変身資産:社会の変化に柔軟に対応し、人生の途中で何度でも新しいステージへの移行を成功させる意思と能力

これらを高めることで、マルチステージを生きるためのさまざまな選択肢が生まれていく可能性も高まります。ただし、金銭面でゆとりがなければ、無形資産に投資する余裕もありません。有形資産と無形資産の両方をバランスよく形成していく必要があると言っています。

「ライフシフト」が企業に与える影響とは

従業員のライフシフトが進めば、雇用する企業側にも影響が生じると考えられます。企業によって、とるべき戦略はさまざまあるかと思いますが、ライフシフトについて知り準備しておくことは重要ではないでしょうか。

ここでは、研究員が考える企業が知っておくべきこと、検討しておくべきポイントについてご紹介します。

ライフシフト=人材流出ではない

そもそもライフシフトは、従業員個人の生き方のことであり、企業には関係ないと捉えたり、従業員がライフシフトすることにより、人材流出に繋がるのではないかなどと考えてしまうこともあるかもしれません。採用・投資をしてきた自社の従業員には、スキルや経験を蓄積して自社で長く働いてほしいという気持ちもあると思います。

一つ補足しておきたいのが、ライフシフトは人生100年時代を生きるために、さまざまな働き方・生き方を選択していくことであり、転職や独立を必ずしなければならないというわけではありません。知識やスキルをアップデートしながら、自社内でさまざまな活躍をするという選択肢ももちろんあるのです。

また、仮に自社から離れたとしても、さまざまな経験を積みパワーアップして再度自社で活躍したり、良好な関係性を持ち続け、外部で活躍することによって得た人脈や有益な情報をもたらしてくれる可能性もあります。

人材力の強化にも繋がる可能性がある

従業員のライフシフトが進むことは、前述の3つの無形資産(生産性資産・活力資産・変身資産)を高める努力をすることにも繋がります。

たとえば生産性資産を高めるためには、知識をアップデートするために自ら学びの姿勢を示したり、活力資産を高めることで心身の健康が維持され、より仕事に真摯に向き合えたり、変身資産を高めることで社会の動きに柔軟に対応していくスキルが磨かれることもあるかもしれません。

結果的には、主体的に意欲をもって活躍する人材が増え、企業の人材力強化にも繋がりうるといえるのではないでしょうか。

企業が検討しておくべきこととは

従来の3ステージの人生モデルの背景には、終身雇用を前提とした年功序列制度がありました。今後は、従業員のライフシフトにあわせて雇用や制度の見直しが必要になる可能性があります。

①柔軟な雇用・労働制度の検討
従業員のライフシフトにより働き方・生き方の多様化が進み、それに応じて雇用形態・就業時間も変化していく必要が出てくるのではないでしょうか。今までの正社員・フルタイム中心から、副業制度を認めたりするなど柔軟な働き方への対応が必要になるでしょう。

また、無形資産の形成を支援するような制度、たとえば学びに関する費用の補助や休暇制度、社内ベンチャー制度などを取り入れることなども有効だと考えられます。

②採用・育成モデルの見直し
従来の雇用モデルでは、新卒採用で一括して人材を育て、不足人員や専門スキルの持ち主を中途採用で補填していくという採用モデルが中心でした。

ライフシフトが当たり前の時代になると、「卒業後に海外で見聞を広めてから」「他の経験を積んでから企業で活躍をしたい」といったようなキャリアを描く学生が増えていく可能性もあります。日本独特の新卒採用は踏襲しつつも、通年採用も取り入れることを検討する必要があるかもしれません。

また、採用モデルの変化や働き方の多様化により、年次や年齢ごとの一括した研修では対応できなくなる可能性もあります。スキルや職務要件などに応じた育成計画を考えるのも一手ではないでしょうか。

まとめ

本コラムでは、企業が「ライフシフト」について検討すべきポイントについてお伝えしました。変化の激しい時代、自社の環境に合わせて取るべき対策はさまざまあるかと思います。「ライフシフト」が今後、自社にとってどのような影響がありそうか、どうしていくべきかについての一助となれば幸いです。

<執筆>
HR Trend Lab研究員(キャリア開発):永瀬、橋本

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