コーピングとは?意味と種類、やり方をわかりやすく解説

仕事や職場環境によってストレスを抱える従業員は少なくありません。近年では、多くの企業で従業員のメンタルヘルス対策が求められ、メンタルヘルス対策の一つとして、「コーピング」と呼ばれる方法が注目されています。コーピングは従業員自らがストレスに対処する方法を見つけることができるやり方で、業務へのパフォーマンスを取り戻すためにも必要な手法といえます。
本記事では、コーピングの概要や種類、企業が従業員に対してコーピングの機会を作る方法について解説します。
コーピングとは
コーピングは「(困難なことなどを)うまく処理する・抑える」という意味の「cope」に由来する、心理学用語です。
人間は、強いストレスを溜めつづけると、精神疾患をはじめとしたメンタル不調に陥ってしまう可能性があります。コーピングは、外部から受ける刺激「ストレッサー(ストレスのもと)」と上手に付き合ったり、その影響を排除したりといった対処を身につけられるようになる手法です。
コーピングはアメリカの心理学者R・S・ラザルス(Richard S. Lazarus)が提唱し、昨今では、企業で働く従業員のメンタルヘルス対策の一つとして活用されています。
なぜコーピングが求められているのか
厚生労働省が発表した「令和5年 労働安全衛生調査 」 によると、 『現在の仕事や職業生活に関することで、強いストレスとなっていると感じる事柄がある』と答えた労働者の割合は
82.7%という結果となり、多くの労働者が仕事上でストレスを感じていることがわかります。
本調査におけるストレス要因(ストレッサー)の項目をみると 「仕事の失敗、責任の発生等」が39.7%ともっとも多く、「仕事の質・量」が39.4%、「対人関係(セクハラ・パワハラを含む)」が29.6%と、業務や職場環境におけるさまざまな事柄がストレス要因として挙げられています。
このようなストレス要因による悪影響は、精神疾患だけではなく、脳梗塞や心筋梗塞などの身体疾患の発症にも影響することが分かっています。仕事に支障が現れてしまうケースや労災認定にまで至るケースなどもあり、職場のストレス要因は従業員の健康や生産性にも悪影響を及ぼすことが考えられます。
そこで「ストレスによる不調を未然に防ぐ」、「不調者を早期発見する」、「不調者に対して復職を支援する」などを含めたメンタルヘルス対策を取り入れる企業が増えています。あわせて、ストレスとうまく付き合っていくためのストレスコーピングの需要も高まっています。
ストレスコーピングとは?
ストレスの原因に対処するためにとる行動のことを「ストレスコーピング」と呼びます。ストレス反応への対処法を広く含む「コーピング」と、ほぼ同じ意味合いで用いられます。ストレスコーピング理論の基礎は、ラザルスとフォークマン(S. Folkman、米国心理学者)によって築かれました。
適度なストレスは意欲や気力の向上につながりますが、強いストレスを溜め続けることは重圧となり、心身の不調を引き起こします。ストレスコーピングでは、外部から受けるストレスの刺激に対し、ストレッサーが何であるか、どのようなストレスを自分が受けているかをしっかり認識して対処法を考えます。
ストレスを構成する要素について
ストレスを構成する要素は、3つあるといわれています。
- ■ストレッサー……ストレスの原因
- ■認知……ストレッサーを見る、聞く、感じることによる評価・解釈
- ■ストレス反応……体や精神状態にあらわれる、さまざまな症状
ストレッサーは、仕事上のものから人間関係、物理的、心理的など、多岐にわたります。ストレッサーによって過剰なストレスが慢性的にかかり、重圧に耐えきれなくなったとき、さまざまな悪影響が心身に現れます。
またストレッサーの主な4つの種類は以下のとおりです。
- [ストレッサーの種類]
- ■物理的ストレッサー……温度や湿度、騒音や光の強弱といった物理的環境による刺激
- ■化学的ストレッサー……公害物質やタバコ、アルコール、室内の酸素欠乏など、化学物質による刺激
- ■生物的ストレッサー……花粉などによるアレルギー反応や、ウイルスや細菌による咳や痰といった免疫反応を引き起こす刺激
- ■心理・社会的ストレッサー……職場や家庭などで生じる、人間関係や職務上の葛藤、責任、将来への不安など
コーピングの種類は?
ストレスコーピングは、「問題焦点型コーピング」と「情動焦点型コーピング」「ストレス解消型コーピング」の3つに大きく分類することができます。
問題焦点型コーピング
問題焦点型コーピングとは、ストレスの要因となっている問題を解決することでストレスを軽減させる方法で、いくつかのタイプがあります。
たとえば、職場の人間関係が原因である場合は、以下のような対処法が考えられます。
[回避型]
・仕事や部署を変えてもらう、転職するなど、ストレッサーと物理的な距離を取る
[社会的探求支援型 (接近型)]
・上司や同僚などにサポートをお願いする
「社会的支援探索型」は、上司や同僚、家族などに悩みを相談する方法です。問題を一人で抱え込まないようにすることはストレス軽減に効果的といわれており、親しい人以外にも、精神保健領域の専門家(産業医など)やカウンセラーに悩みを相談することも含まれます。
問題焦点型コーピングは、問題に焦点を当てて積極的に解決を目指す手法で、職務上の課題で悩んでいる場合には、「勉強をして知識を身につけ解決方法を考える」という対処法もコーピングの一つといえます。
問題焦点型コーピングは、なんらかの方法によって解決できる問題に対してストレスを感じている場合に有効といえるでしょう。
情動焦点型コーピング
情動焦点型コーピングとは、ストレス要因に対する自分自身の捉え方を変えるアプローチ方法です。一度冷静になり、気持ちを切り替えて対処する方法で、「情報処理型」と「認知的再評価型」の2つに分類されます。
たとえば、仕事がうまくいかないときであれば、以下のような対処法が考えられます。
[情報処理型]
・感じたストレスを同僚や親しい友人に話すなどしてガス抜きをする
[認知的再評価型]
・「誰にでも失敗はある」と自分に言い聞かせる
・「今は苦しくても、続けていれば軌道に乗るだろう」と気持ちを切り替える
認知的再評価型コーピングでは、ポジティブシンキングを積極的におこない、物事をポジティブに捉えます。仕事でストレスを感じたときに「今回の仕事はうまくいかなかったけれど、失敗を通して成長できた」など、物事をポジティブに捉えることで、ストレスとうまく向き合うやり方です。
自分では解決できない・時間が経たないと解決しないといった問題に対してストレスを感じているケースでは、情動焦点型コーピングが効果的な対処法といえます。
ストレス解消型コーピング
ストレス解消型コーピングとは、ストレスを感じた後におこなうやり方です。
おいしい食事を楽しむ、スポーツやカラオケで発散する、旅行へ行くといった「気晴らし型」と、アロマテラピーや瞑想、ヨガやピラティスなど、心身をリラックスさせる行動で解消を目指す「リラクゼーション型」の2つに分類されます。
効果的なコーピングのやり方は?

コーピングを効果的に実践する望ましいやり方を2つ紹介します。
コーピングリストを作成する
コーピングリストとは、自分にとってストレスの解消・改善となる対処法を書き出してリスト化したものです。
ストレスの要因はさまざまで、その解消・改善方法も人によって変わります。方法は多いほど良いといわれていて、元気な時に、なるべくたくさん、思いつくままに書き出していきます。リストには、相談できる人の名前もあげておきます。
実際にストレスを感じたら、どのようなストレス反応が出たのかを書き出すなどしてモニタリングします。たとえば「手や声がふるえた」「頭痛がした」「気分が沈んで食欲がなくなった」などです。それに対し、コーピングリストの方法を実践して、どの方法が効果的かを検証します。
この方法を繰り返すことで、自分にとって適したストレス対処法が見えてきます。
輪ゴムテクニック
輪ゴムテクニックは、輪ゴムを使って誰もが簡単にできるコーピングの手法の一つです。あらかじめ輪ゴムを腕にはめておいて、ストレスを感じたときに輪ゴムを弾きます。痛みの刺激によってストレス対象から気を逸らし、思考を切り替えるように習慣づけていきます。
輪ゴムは一例で、他のものを使っても構いません。習慣が定着すると効果が増すため、身近なもので繰り返し実践することが大切です。
企業におけるコーピングの導入施策
企業においてコーピングを導入する際の施策を紹介します。導入の際には「ストレスチェックシート」を用いて従業員のストレス度合いを把握する制度を整えましょう。労働安全衛生法が改正された2015年12月より、50人以上の労働者を使用する企業や事業所は、ストレスチェック制度の実施が義務化されています。
厚生労働省の「令和5年 労働安全衛生調査 」 によると、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所のうち6割以上の事業所では、従業員へのストレスチェックが実施されていることがわかりました。ストレスチェックの実施により、企業は従業員のストレスの状況を把握し、メンタルヘルス不調のリスクが高い従業員には面談やカウンセリングなどの、ストレスコーピングの機会を提供することができます。
紹介する2つの対策以外にも、メンタルヘルスケアに関する研修や講座の開催、リラクゼーションサービスの提供なども有効な施策とされています。
メンターや1on1の導入
主に新入社員や中途社員など社歴の浅い社員(メンティー)に対し、相談相手としての先輩社員(メンター)をつけ、メンティーの業務上の悩み相談から精神的なサポートまでをおこないます。とくに社歴の浅い社員は、慣れない職場環境や新しい業務など、さまざまなことに対してストレスを感じやすいと考えられ、気軽に相談できるメンターがいることで、悩みをそのままにせず対処できます。
また、上司と部下の1対1のコミュニケーションを通じて部下のマネジメントをする1on1も有効です。上司が部下の話や悩みや課題をすくい上げて具体的な解決策を考えることができ、目標達成や部下の成長を促進できます。上司と部下の信頼関係が深まることで、職場内での円滑なコミュニケーションにも効果が期待できます。
心理カウンセリングの導入
従業員の悩みに対して、社内や外部機関の公認心理師、産業カウンセラーなどの専門家が、心理学や精神医学の専門知識、技術を用いてサポートする方法です。従業員自身が悩みやストレスに対しての理解を深め、ストレスへの対処法を考える機会としても活用でき、労災の未然防止にもつながります。
コーピングで従業員のメンタルヘルスケアを
ストレスコーピングは、ストレスの影響によるメンタルヘルス不調、身体疾患を未然に防ぐために有効な方法です。企業が従業員のメンタルヘルス対策を検討する際には、ストレスチェック制度やメンタルヘルス研修を導入し、従業員へコーピングの機会を提供してみてはいかがでしょうか。

















