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確定申告と年末調整はなにが違う?企業の担当者が知っておくべき基礎知識

2021年10月13日更新

確定申告と年末調整は、いずれも所得税額を算出・確定させるという共通の目的があります。しかし、両者の明確な違いを知らない社員も少なくありません。また、社員が「会社員だから確定申告は不要」と思い込んでいたものの、実は確定申告をしなければならなかった、というケースもあります。

そこで今回の記事では、担当者として押さえておきたい確定申告と年末調整の違いを解説するとともに、どのような社員が確定申告の対象になるのかも具体例を交えながら紹介します。

※こちらの記事は2021年10月の情報をもとに作成しています。詳しい情報は国税庁のWebサイトにてご確認ください。

目次 【表示】

確定申告と年末調整の違い

多くの担当者にとって、年末調整業務は毎年恒例の業務になっていると思います。「会社員=年末調整」というイメージが定着し、自分は確定申告とは無関係と考える社員もいるかもしれませんが、必ずしもそうとは限りません。まずは確定申告と年末調整の基本を解説するとともに、両者はなに何が違うのかについても詳しく紹介します。

確定申告とは

確定申告とは、1月1日から12月31日までの1年間の所得に応じて所得税額を算出、確定し、所得税を納める手続きのことを指します。なお、源泉徴収などによって所得税を払いすぎていた場合には、その分が還付されることもあります。個人の場合、原則として翌年の2月16日から3月15日までの1か月間が確定申告の期間となり、この間に申告書類を作成し税務署へ提出しなければなりません。

ちなみに法人の場合は、企業ごとに定められた決算時期によって申告時期は異なります。今回の記事では、個人の確定申告を前提に解説していきます。

年末調整とは

年末調整とは、1月1日から12月31日までの1年間に「源泉徴収」として毎月の給与から天引きされた税額と、社員が納めなければならない税額を再計算し、過不足分を精算する手続きのことを指します。

源泉徴収によって毎月の給与から天引きされる税額はあくまでも概算です。実際には社会保険料や生命保険料などの支払い、扶養親族の変更などによって生じる控除も計算しなければならないため、正確な納税額は12月にならなければ確定できないのです。そのため、正確な納税額を算出し、社員に対して「払いすぎた税金を還付」または「不足分の税金を徴収」するために年末調整が行われます。

確定申告と年末調整の違い

確定申告と年末調整は、いずれも納める税金を確定したうえで税金を支払う、または還付を受けるという意味では同じ目的です。

しかし、年末調整で申請できるのは、あくまでも給与所得のみです。もし会社から得ている給与以外にも、家賃収入(不動産所得)を得ている場合や、株の取引によって収入(配当所得など)を得ている場合などには、年末調整とは別に社員自身で確定申告を行わなければならない可能性があります。

一方、給与所得のみの場合には、ほとんどの社員は確定申告が不要で年末調整のみを行います。確定申告は社員自身が個人で手続きをおこなうのに対し、年末調整は会社が自社の社員分を一括して手続きするため、社員にとっては負担が少なくて済みます。

確定申告をしなければならない社員とは

企業に所属している会社員であっても、ある一定の条件に合致する場合には年末調整だけではなく、確定申告も必要になる場合があります。社員から確定申告に関する問い合わせを受けた際に、人事担当者として的確な対応ができるよう、以下の条件を押さえておきましょう。

2か所以上から給与を得ている社員

年末調整は1名の社員に対して複数の企業が同時に手続きをすることはできず、社員が「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している企業のみが手続きを進めることが可能です。

そのため、2か所以上から給与を得ている社員がいる場合、たとえば本業として働いているA社には「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出しているため、年末調整をおこなうことができますが、副業先のB社には申告書を提出していないため、年末調整ではなく社員自身が確定申告をおこなう必要があります。

ただし、本業以外の給与所得が20万円を超えない場合には確定申告の必要はありません。

年間を通して給与以外の所得が20万円を超える社員

給与以外の所得が20万円を超える社員は、年末調整とは別に確定申告が必要となります。ただし、所得とは売上ではなく、売上から経費を差し引いた金額です。

たとえば副業として農業を営み、年間25万円の売上があったとしても、経費として10万円かかっている場合は15万円の所得となり、確定申告の対象とはなりません。

年収が2,000万円を超える社員

給与所得者は原則として年末調整によって納税額を確定しますが、給与の年間総額が2,000万円を超える場合、年末調整ではなく確定申告の対象となります。2,000万円とは手取り金額ではなく、税金や社会保険などが差し引かれる前の総額です。

そのため担当部署としては、年収が2,000万円を超えた社員に対し、あらかじめ確定申告が必要である旨を伝えておきましょう。

土地・建物を売却した社員

土地や建物などの不動産を売却した社員で譲渡所得が得られた場合は、確定申告の対象となります。売却した不動産を所有していた期間によって適用される税率は異なります。

ちなみに、マイホームを売った場合には特別控除が適用されるため、譲渡所得3,000万円までは課税対象になりません。また、マイホームを売って譲渡損失が生じた場合でも、一定の条件を満たすと確定申告することによって翌年以降節税できる可能性があります。

年金を受け取っている社員

嘱託社員など、年金を受け取りながら働く社員は原則として確定申告の対象となります。ただし、給与所得および公的年金などの収入合計額が400万円以下で、かつ「年金に係る雑所得以外の所得(※)」が年間20万円以下の場合に限り、確定申告は不要です。

※「年金に係る雑所得以外の所得」の例……生命保険や共済などの契約にもと基づいて支給される個人年金、給与所得、生命保険の満期返戻金 など

贈与を受け取った社員

個人から110万円を超える贈与を受け取った社員は、贈与税の対象となるため確定申告が必要です。ただし、贈与の目的と金額によっては控除が受けられるため、以下のケースに該当する場合などは非課税となり確定申告も不要となる可能性があります。

・住宅購入を目的としたもの
・教育資金を目的としたもの
・婚姻期間が20年以上の配偶者への土地や住宅取得を目的としたもの
・結婚・子育て資金を目的としたもの

確定申告をすることでメリットがある社員

上記で紹介したような「確定申告をしなければならないケース」以外にも、確定申告をすることによって社員がさまざまなメリットを得られるケースもあります。対象となる社員に対して有益な情報を提供できるよう、担当者として押さえておきたいポイントを紹介しましょう。

マイホームを購入した社員

住宅ローンを組んでマイホームを購入した社員は、住宅ローン控除によって税金の負担を軽減できる場合があります。社員による確定申告が必要なのはマイホームを購入した年のみで、翌年以降は年末調整によって控除を受けられます。

ふるさと納税をした社員

ふるさと納税は寄附金控除の対象となるため、確定申告によって所得税の還付が受けられるほか、翌年納める住民税額も控除される場合があります。ふるさと納税にともなう控除は年末調整では対応できないため、社員に対しては個別に確定申告をおこなうよう促しましょう。

ちなみに、「ふるさと納税ワンストップ特例」を活用すれば、確定申告が不要となり寄附金控除の適用を受けられます。ふるさと納税先の自治体が5団体以内で、それぞれの自治体に「ふるさと納税ワンストップ特例」の申請を行っていることなどが条件となります。

災害や盗難の被害に遭った社員

自然災害や火事による家屋の倒壊や損傷、金銭の盗難被害に遭った場合などは、雑損控除または災害減免のいずれかを適用でき、税負担が軽減されます。こちらも年末調整では対応できないため、対象の社員がいれば確定申告をおこなうよう促しましょう。

家族の医療費総額が10万円を超えた社員

怪我や病気の治療および入院などで年間10万円以上の医療費がかかった場合、確定申告をすることによって医療費控除を受けられる場合があります。年間10万円とは社員自身も含め、扶養家族全員分の医療費の総額です。

株取引で損失が発生した社員

1年間の株取引において損失が発生した場合、確定申告によって損失を翌年以降に繰越できます。損失の繰越をすると、翌年以降3年間にわたって利益から損失分を控除でき、税負担が軽減されます。

まとめ

多くの会社員は会社側が年末調整をおこなうため、個人での確定申告は不要です。しかし、さまざまな事情によって確定申告をしなければならない社員もいれば、確定申告をしたほうが税制上のメリットを受けられる社員も存在します。担当者は年末調整と確定申告の違いを正しく理解したうえで、社員に対して正しい情報を伝えることを心がけましょう。

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