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HRBPとは?人事との違いや求められるスキル、導入ポイントを解説

2025年08月19日更新

HRBPとは?

労働環境の急速な変化を背景に、昨今注目を集めている役割「HRBP」。HRBPとは「人事戦略の構築および実行を通じて事業成長を目指す、経営者・事業責任者のビジネスパートナー」です。

HRBPは人事機能の一つですが、人事とは明確に役割が異なります。この記事では、HRBPの役割や人事との違い、導入のポイントなどを解説します。

目次 【表示】

HRBP(HRビジネスパートナー)とは

HRBP(Human Resource Business Partner)とは、経営者・事業責任者のビジネスパートナーとして、両者と同じ視点に立って人事戦略を構築・実行し、人的資源の側面から事業の成長を実現する役割を指します。HRBPは、経営戦略と人的資源管理の連携・連動により企業の競争力向上を目指す考え方である「戦略人事」を実現するための人事機能の一つで、「HRビジネスパートナー」とも呼ばれます。

具体的には、事業成長の視点で人事課題を捉え、採用活動や人事制度設計、組織設計、現場社員の声を踏まえた職場改善提案などをおこなうのがHRBPの仕事です。

HRBPは事業の業績向上に必要とされる概念ですが、日本企業への浸透はまだ浅く、企業によって定義が変わるケースがみられるため、導入の際には概念の正しい理解が求められます。

HRBPと従来の人事との違いについて

従来の人事との大きな違いは「役割」です。従来の人事は、社員に関わる仕組みや制度の整備および運用管理など、主にオペレーション業務を担います。具体的には人事制度の設計や採用活動、労務管理、人材育成、人材配置などが主な業務になります。総じて人事の仕事は、既存の規則を管理・維持する「守り」の姿勢が強いといえるでしょう。

一方で、HRBPはオペレーション業務も担いつつ、主に経営者の視点を持って、人事戦略の立案およびその戦略に則った人材採用や育成、それに必要なタレントマネジメントなどを実行するのが仕事です。従来の人事と比較すると、新たな動き・取り組みを進める「攻め」の姿勢が強いといえます。

企業によっては「部門人事」を「HRパートナー」と呼ぶことがありますが、部門人事とは、従来の人事と同じく、事務作業を中心とした人事を指すものです。HRBPは、人事戦略や経営戦略の視点から、部門の問題解決を目指すコンサルティング的な立ち位置であり、根本的に役割が異なります。

同様に、混同されがちな役割として、職場環境の改善を担う「労務管理」があります。HRBPの中に労務管理の業務が含まれる場合はありますが、HRBPが労務管理を指すわけではありません。

CHRO/CHOとの違いは?

HRBPとCHRO/CHO(Chief Human Resource Officer)との違いは「立場」です。HRBPがあくまでビジネスパートナーという立場で業務を遂行する一方で、CHRO/CHOは日本語で最高人事責任者と訳され、一般的な人事部長とは異なり、経営陣の立場から人事領域を統括する役割を持ちます。

つまり、コンサルタントのような立ち位置であるHRBPに対して、CHRO/CHOとは人事領域における執行責任を持つ人材を指し、経営の意思決定にも携わる立場という違いがあるのです。

ウルリッチの定義におけるHRBP

HRBPの概念は、1990年代に米国ミシガン大学のデイビッド・ウルリッチ教授により提唱されました。ウルリッチ教授は、著作『MBAの人材戦略』の中で、「人事部は管理業務のみにとどまらず、経営層のパートナーとして意思決定に影響を与える存在であるべき」としています。

ウルリッチ教授は、経営にも深く関わる「戦略人事」に必要な機能を示しました。主な3つの機能は以下の通りです。

  • ・CoE(Center of Excellence)……卓越したスキルで人事の制度設計をおこなう
  • ・HRBP(Human Resource Business Partner)……CoEの設計制度を活用し、経営層のビジネスパートナーとして積極的に経営に参画する
  • ・HR Ops……(HR Operation Services)……従来の人事業務をおこなう
    • HRBPが必要とされる背景とは


      日本でHRBPが求められている背景には、社会の変化にともなう「労働を取り巻く環境の急速な変化」と「人事獲得競争の深刻化」が挙げられます。

      社会環境の変化

      HRBPが必要とされる最も大きな背景は、さまざまな社会環境の変化です。新型コロナウイルス感染症で発令された緊急事態宣言の際には、迅速に対応できず事業継続が困難になった事例も多くみられました。

      従来の人事では、変化の激しい社会環境や企業の動きに対応しながら人事戦略まで踏み込むことは難しいでしょう。しかし、テクノロジーが急速に進化し、AGI(Artificial General Intelligence 人工汎用知能)やASI(Artificial Superintelligence 人工超知能)がビジネスに変革をもたらし始めています。将来のビジョンが読めない先行き不透明なVUCA社会においては、組織にも個人にも、スピーディーかつ柔軟な対応が迫られるシーンが多く存在します。

      そのため、人事が時代の先を読み、課題に対して機動的に対処するHRBPの概念が求められるようになったのです。

      人材獲得競争の深刻化

      生産労働人口の減少による人材獲得競争の激化も、HRBPが必要とされる背景の一つです。

      昨今は、グローバル化やDX推進の急速な流れによって、AGIやASIなど進化した人工知能の台頭が進み、労働環境にも著しい変化がみられます。グローバル人材やデジタル人材の需要の増加にともない、企業においてもスキルや経験など求められる人材要件が変化し、企業の成長や経営目標達成における人材の重要性も増しています。

      優秀な人材の獲得が深刻化する中、変化の激しい労働環境や企業の動きに柔軟に対応して、必要な人事戦略を実行することが求められています。

      HRBPの役割と任命について

      HRBPの役割は、時代の変化に速やかに、かつ柔軟に対応して、人事システムの面から事業の弱点改善を目指すことです。HRBPを、企業の成長および経営目標の達成につながる組織開発や人材開発、人材採用といった企業戦略に活用するためには、事業戦略と人材マネジメントが連動していなければなりません。

      HRBPを任命する際は、担当する社員に対して、人事領域にとどまらない広い視野と経験、スキルが求められます。

      HRBPに必要なスキルや能力は?

      HRBPの任命では適した人材の選定が重要です。求められる専門性の高さから、HRBP人材を社内で育成する企業も多いでしょう。HRBPに必要とされるスキルや能力を解説します。

      経営者の視点で経営を考える力

      経営者や事業責任者のビジネスパートナーとなるHRBPには、高い経営センスや経営スキルが求められます。
      経営の意思決定に関わり、自社の業績アップを目指すために必要な人材の傾向を理解し、獲得する役割を担います。

      コミュニケーション能力

      HRBPに欠かせない能力の一つが、コミュニケーションスキルです。HRBPには、一般的な人事の知識や経験に加えて、「現場経験が豊富で、現場の実情をどれだけ理解できているか」が重要といわれます。なぜなら、現場の実情と目標のギャップを正確に把握し、より効果的で実現可能な戦略を構築し、実行できるからです。

      日頃からオープンなコミュニケーションを実践し、経営者や現場の従業員らと広く信頼を構築できるコミュニケーションスキルの高さが求められます。

      課題分析力

      HRBPは、課題に対する高い分析力を求められるため、論理的思考(ロジカルシンキング)や批判的思考(クリティカルシンキング)といったスキルが必須です。

      HRBPに資格の取得は必須ではありません。あえて挙げるならば、分析力につながるロジカルシンキングに関する資格などを所持することで、人事としての立場における調査・分析力や人事戦略スキルを証明するサポートとなるでしょう。

      また、米国ハーバード大教授・経営学者であるロバート・L・カッツ(Katz, Robert L.)が提唱した「カッツモデル」も、参考になるスキルを提示しています。

      カッツモデルでは、職位を「トップマネジメント(経営者・幹部クラス)「ミドルマネジメント(中間管理職クラス)」「ロワーマネジメント(主任・リーダークラス)」の3階層に分け、役職に応じて求められるスキルを以下のように示します。

      • ・テクニカルスキル……業務遂行能力。業務知識や関連技術、資格など、仕事の方向性を決める力
      • ・ヒューマンスキル……対人関係能力。ビジネスマナーやコミュニケーション能力など、人間関係を円滑に構築する力
      • ・コンセプチュアルスキル……概念化能力。物事の本質を捉える力

      HRBPは広い視野を持つことを求められる職務です。各スキルをバランスよく身につけることで、洞察力を深め、優れた課題分析へとつながるはずです。

      HRBP導入のためのポイントは?

      続いて、HRBPの導入を成功させる3つのポイントを解説します。

      人事戦略を立てる

      HRBP導入の準備として、まず人事戦略の検討をおこないます。自社の環境や経営戦略を検討し、必要となる人材要件や組織体制を明確にするためです。

      具体的には、採用活動による人材の確保と人材育成の検討です。さらに、人材ポートフォリオを作成し、経営戦略の達成に必要な人材が、社内のどこに、どれだけ存在するかといった情報を構造化して把握できると良いでしょう。人事戦略の効果が可視化されるまでには時間がかかるため、2〜3年計画にして検討事項をまとめていきます。

      他部署と協議、連携する

      HRBPは、従来の人事部門とは異なる独立した存在であり、かつ人事部門と対等な立場であることが重要です。その上で、CoEやHR Opsと連携します。HRBPの失敗パターンは他部署との連携が進まないケースに多くみられ、孤立化を避ける必要があります。

      HRBPは現場を理解したうえで、現場視点と経営者視点の双方から戦略構築を提案する役割を担うため、各部署と信頼を構築し、協議、連携する姿勢を強く持つことが求められます。

      トライアルを設定し段階的に導入する

      HRBPの実装は、以下の流れを踏まえ、部分的なテスト導入から始めるのがポイントです。

      <導入の全体の流れ>

      1. 人事戦略の明確化
      2. 実行体制の調整
      3. トライアル
      4. 実行

      先述のとおり、HRBP人材は社内で育成する企業が多くなるでしょう。

      とはいえ、HRBPの専門性や担当領域の広さから、任命された社員がいきなり結果を出し、機能することは難しいことが予想されます。導入後は、HRBPが自社で機能しているのか、機能していない場合はなにを改善すればいいのかなど、逐次運用の修正・改善が必要になっていきます。

      そのため、設置する部門が決定したら、チームや人材を配置して実行体制を調整し、トライアルを実施します。ここで、HRBPを設置する必要性について、導入部署の理解を得るステップを踏みましょう。小規模での運用であれば、適宜運用の修正・改善をしつつ、各部門の小さな悩み事からヒアリングをしていき、現場社員との信頼関係を構築しやすくなります。

      部門ごとのトライアルを経ながら段階的に導入し、協力体制を築いていくことで、徐々に大きな課題に向かうことができます。

      HRBPの課題解決力を高める機会を設ける

      HRBPは経営者や事業責任者へ、現場社員の声を踏まえた職場改善提案をおこなう役割を担います。そのため、「顧客との商談にHRBPが同行する」「HRBPも部門会議に参加する」など、HRBPが現場の知識をアップデートできる機会や、深い知識を学ぶ機会を意図的に設ける必要があります。

      このような機会は、HRBPと現場との信頼関係構築にもつながり、現場の声がHRBPに届きやすくなって、課題の把握と問題解決へ向けたアイディアへつながっていくでしょう。HRBPの課題解決力を高める機会をいかに整えるかが重要なポイントです。

      HRBPの導入企業事例

      最後にHRBPの導入企業事例を2社紹介していきます。

      株式会社ディー・エヌ・エー

      株式会社ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)は、2014年にHRBPを導入しました。DeNAのHRBPは、人材の登用やマネジメント強化、チームビルディング、事業課題解決のための壁打ちなど、人事と経営をつなぐ戦略人事としての役割を担っています。

      「戦略人事を実践するHRゼネラリスト」とも呼ばれるDeNAのHRBPは、チームで戦略人事をおこなうことでアウトプットの質を高める工夫をしている点が特徴です。

      LINE株式会社

      LINE株式会社(以下、LINE)のHRBPチームは、LINEの人・組織に関する課題解決に向けた企画立案・マネジメントをメインの役割としています。組織開発を主な役割としつつも、業務範囲を限定しすぎずに、課題解決に向けてできることはすべておこなう点がLINEのHRBPの特徴です。

      HRBP導入を検討しよう

      HRBPとは経営視点で人事戦略の立案・実行をおこない、事業成長を実現する役割のことです。

      本記事で見てきたとおり、生産労働人口の減少やDX推進、テレワーク普及による労働観の変化など、日本における労働環境は現在、大きな転換点にあります。

      そして、このような労働環境の変化に伴い、今後もHRBPを導入する企業が増えてくることが予想されます。本記事を参考にHRBPの理解を深め、HRBP導入に向けた検討を始めてみてはいかがでしょうか。

      著者プロフィールHR Trend Lab編集部
      タレントマネジメントやエンゲージメントなどの最新トレンドから、組織や人事にまつわる基本知識までマイナビ独自の視点でお届けいたします。
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