HR Trend Lab
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これからの人材マネジメントの在り方 ~タレントマネジメント×AIで戦略人事に転換~

2020年07月13日更新


株式会社三菱総合研究所 研究理事 AIイノベーション推進室長 比屋根 一雄氏(右)
株式会社マイナビ 教育研修事業部 事業開発統括部 統括部長/HR Trend Lab所長 土屋 裕介(左)

働き方改革や経済の成熟、働く人の意識変化など、日本企業が置かれている環境は非常に複雑だ。今、企業が抱えるHR課題を解決する方策のひとつとして考えられるのがタレントマネジメントだ。2020年、マイナビは40年を超える人事ビジネスキャリアを生かし、三菱総合研究所と共同で新たなタレントマネジメントシステムを開発した。マイナビの土屋氏と三菱総合研究所の比屋根氏が、これからの人材マネジメントのあり方について語った。

※この記事は2020年5月22日に行われた「HRカンファレンス2020-春-」の講演レポートです。

目次

日本企業の課題解決に必要な「タレントマネジメント」の考え方
「タレントマネジメントシステム」は人事業務のDX化における中核インフラ
人事の現場から生まれ、人事の業務に特化したシステム「crexta」の機能

日本企業の課題解決に必要な「タレントマネジメント」の考え方

マイナビグループは1973年に創業し、学生の就職活動、企業の採用活動を支援し、総合情報サービス企業へと進化している。事業の一つであるマイナビ研修サービスは、採用力の強化、研修を通じた社員育成、人材マネジメントなど、クライアントの人事課題を解決に導くことによって、人と組織の良質な関係の実現を目指している。現在は人材開発、組織開発を支援するタレントマネジメントシステムの開発にも注力。教育研修事業部の土屋氏は、なぜ今タレントマネジメントが注目されるのか、その背景を語った。

土屋「タレントマネジメントは、1997年にマッキンゼーが提唱した『ウォーフォータレント』という概念が発端となっています。本書の調査から企業の業績差は『マネージャーとして企業を引っ張っていく優秀な人材の充実を最優先事項に置き、実践していることである』との見解が導かれています。ここから、優秀な人材(タレント)を適所に配置する人事戦略の重要性が広まっていきました」

なぜ、今の日本にタレントマネジメントが必要なのか。土屋氏は三つの理由を挙げる。一つ目は、多様な人材や働き方の中で成果を出すことの必要性だ。従業員の価値観も多様化しているため、一人ひとりに目を向ける必要がある。企業が継続的に成果をあげるために、多様な価値観を持つ人材を適材適所に配置するなどタレントマネジメントの考え方が必要となる。

二つ目は、サービスの差別化が進み、企業ごとに戦略上重要となる職務や人材(キーポジションやキーパーソン)が異なるためだ。たとえばタクシー業界では、英語が話せる運転手がキーパーソンになりうる。必ずしもマネジメント層がキーパーソンとなるわけではない。

三つ目は、専門分化が進み、均一的な人事施策(教育)が通用しない環境だ。企業は従業員一人ひとりを見ていく必要がある。

土屋「働き方改革や経済の成熟、働く人の意識変化など、日本が置かれている仕事環境は大変複雑です。そうした企業が抱えるHR課題を総合的に解決できる方策が、タレントマネジメントであるといえます」

そもそもタレントマネジメントの目的とは「タレントの戦略的活用を通じて、継続的に組織の利益を向上させること。ここにつながらないと意味がない」と土屋氏は語る。企業は利益をあげて存続する必要があり、その手法の一つとしてタレントマネジメントが存在するのだ。

タレントマネジメントに期待される効果

そのうえで、マイナビではタレントマネジメントを次のように定義している。「企業が成長し続けるために、一人ひとりのタレントとその能力に注目し、採用や育成、異動などを通じて、もっとも活躍できるポジションに絶え間なく人材を配置すること」。つまり、従業員一人ひとりの能力や状況をもとに適材適所に配置することにより、従業員が能力を最大限発揮できるようになり、組織の利益向上へとつながるのである。では、具体的にタレントマネジメントでどんな効果が生まれるのか。期待される効果は三つある。

土屋「一つ目は、集団的管理から個別的管理への移行です。従業員を年次や職種といった同じ属性を持つ集団として扱うのではなく、個々人を見るようになります。この変化を起こすことで、Employee Experience (従業員の経験)をデザインすることにつながり、エンゲージメントの向上に期待が持てます。

二つ目は、絶えずキーポジションを充足し、持続的な発展を果たせる点です。人が急に辞めてしまった場合でもすぐに後任を選抜し、抜けた穴をいかにフォローするかは大事です。

三つ目は、人材の『適者生存』から『適者開発』への切り替えができる点。『適者生存』は年代ごとに一律に出世し、組織に生き残った人材から要職に抜てきしますが、『適者開発』は要職に適した人材を教育や配置を通して育てていく考え方です。適者開発では、たとえば若年でも、能力や適性に応じて要職に抜てきされるようになり、人が常に挑戦し成長する組織へと変化します」

しかし、企業がタレントマネジメントを導入しようとすると、いくつもの課題に直面する。たとえば『なにから手を付けてよいのかわからない』『社内の人事データがばらばらになっている』『どんなデータをどのように活用したらよいかわからない』『どのような効果があるのかが見えにくい』などだ。では、どのように導入すべきなのか。

土屋「導入は決して難しくありません。基本は1)方針を決め、2)社員を知り、3)施策を実行する、の3ステップです。『1)方針を決める』では、戦略や将来を見据え、キーポジションやどんな社員がどの部署にどれくらい欲しいのか人材ニーズを考えます。『2)社員を知る』では、社員のスキル・能力 ・経験・キャリア志向・資格・評価履歴などの情報を可視化し、どんな社員がどの部署にどれくらいいるのかを知ります。『3)施策を実施する』では、ステップ1と2の需給ギャップを埋める施策を展開します。今いる社員で足りないのなら、採用や教育などで獲得し、育成します。
こうしたタレントマネジメントをスムーズにおこなうために必要となるのがタレントマネジメントシステムです」

働く人の豊かな経験をつくりだすマイナビのタレントマネジメントシステム

マイナビ研修サービスでは、タレントマネジメントシステム「crexta(クレクタ)」を開発し、2020年夏より提供を開始する。これは、人の成長・組織の活性化をサポートしてきたマイナビ研修サービスが「働きたいと思える組織を増やす」ために、そのノウハウを結集したシステムだ。crextaはcreate experience(with)talent managementの意味であり、「経験」が重要なキーワードになっている。

人と仕事の最適な掛け合わせを考え、人と組織の成長を支援するタレントマネジメントシステムを通じて、『働く人の経験』をよりよいものにつくり変えていく。人にとっての『働く』をよりよいものへという想いを、この「crexta」に込めている。

土屋「『crexta』ではマイナビの知見を活かし、実際の人事や現場に寄り添ったシステムを目指しています。たとえば、組織や人材情報を可視化するだけで終わってしまうことがないように、可視化したデータを組織開発、人材開発の施策にどう生かすかという観点で開発を進めています。また、多くの企業に安心して活用いただくために、日本有数の総合シンクタンクである三菱総合研究所(MRI)にシステム開発を委託しました」

「crexta」の開発には、「働きたいと思える組織が増えることで、いきいきと働く人が増え、日本全体の生産性もあがる好循環を生み出したい」という想いが、根底に存在している。


「タレントマネジメントシステム」は人事業務のDX化における中核インフラ

ここから三菱総合研究所の比屋根氏が、現状のデジタル革命とこれからの人材動向、HRテクノロジーの状況について語った。まず、比屋根氏が示したのは、2015年~2030年における職種別の労働需給ギャップ(2015年対比)のグラフ(出所:三菱総合研究所「内外経済の中長期展望 2018-2030年度」)だ。

注:図中の就業者数は、総務省「労働力調査」ベースの就業者である。
(出所:三菱総合研究所「内外経済の中長期展望 2018-2030年度」)

比屋根氏「現在は広く人手不足といえますが、この先はデジタル化、ロボット化により、人材が過剰になる職種があります。最初に顕在化するのは事務職です。20年代前半から『特化型AIによる自動化』により2030年で120万人の過剰と予測されます。遅れて顕在化するのは生産・輸送・建設職です。『AI・IoE・ロボットによる自動化』により2030年で90万人の過剰。逆に不足する職もあります。ITなどの専門職です。技術革新をリードしビジネスに適用する人材が不足し、2030年で170万人の不足が予想されています」

職種を幅広く分析すると、不足する専門職となるのは「ノンルーティン人材=創造的なタスクを担当する人材」が多い。デジタル技術革新の波を受けて、定型的なタスクであるルーティンの仕事は浸食されていく。そうした新たな生活に大きく関わるのが、デジタルトランスフォーメーション(DX)だ。これはITの浸透がビジネスや人々の生活をあらゆる面でよりよい方向に変革させるという概念であり、現在はHR領域のDX化に注目が集まっている。

比屋根氏「今のHRテクノロジーの中心は、求人や採用です。しかし、これから重要になるのは労務管理と人材活用の分野でしょう。なぜかというと、テレワークが普及すると労務管理がさらに重要になり、また、人材活用は人材戦略において最重要課題になってきているためです」

AIの活用が進むHRテクノロジー

HR テクノロジーでは、AIが大きな役割を果たすと比屋根氏は語る。AIの主な役割は「最適化、自動化、ノウハウの再現」だ。最適化とは需要を予測し、ムダを省き、製品・サービス・人の稼働率を最大化すること。自動化とは人の業務をAI・ロボットが代替すること。ノウハウの再現は、専門家の高度なノウハウをAI・ロボットで再現すること。AIによって創出される価値には、効率化、売上・品質・満足度向上、リスク低減がある。

次に比屋根氏は、HR テクノロジーにおける求人・採用でのAIの使い方について解説した。最適化の例はAI求人アプリだ。求職者が気に入った求人を選んでいくと、AIが徐々に自分好みの求人だけを表示するようになる。その仕組みは、本人の経歴やSNS投稿をAIが分析し、自分に合った求人を紹介していく中で求人マッチング確度が向上するものだ。これらは求職者の満足度向上につながっていく。

自動化の例はAI面接だ。AIが面接のヒアリングを代行し、AIとの対話ログから評価する。担当者の面接時間を削減し、求職者は全国どこからでも面接可能となる。ノウハウ再現の例はAI採用診断。前年実績をもとに、エントリーシートをAIが評価、優先的にみるべき人を抽出する。職務経歴書や適性検査からスキルや志向をAIが評価し、自社マッチング度を数値化。これにより採用担当者の判断のバラつきを抑え、書類選考を効率化できる。

しかし、人事戦略の中核である「人材活用」においては、まだHR テクノロジーの活用は進んでいない。なぜなら、人材のデータが不十分だからだ。

比屋根氏「つまり『デジタル化なくしてAI化なし』ということです。人材データを蓄積することが人事のデジタル業務改革の第一歩となります。それを実現するツールがタレントマネジメントシステムです。」
したがって、タレントマネジメントシステムはHR 分野のデジタル業務改革の中核インフラとなる。

比屋根氏「人材のことを知り、学ばせて、行動させ、その活躍を把握する。これを人材開発でおこなう際に重要になるのが、活躍したときにどのように活躍し、それでどのように人が変わったかというデータです。この点を把握することがタレントマネジメントシステムの大きな役割となります。長期的な人材育成にはこうした仕組みが欠かせません」


人事の現場から生まれ、人事の業務に特化したシステム「crexta」の機能

最後に土屋氏が「crexta」の機能について解説した。データベースや組織診断、e-ラーニングなどの機能が搭載されているのはもちろんのこと、中でも特徴的なのはペルソナ分析機能だ。

土屋「ペルソナ分析とは、たとえば営業で好業績な社員や高評価な社員といった特徴のある人材のデータをAIが分析し、特徴ある人材たちの“共通点”を見つけ出す機能です。共通点として見つけ出した特性を、仮想の人物像(ペルソナ)として表示し、他の社員と比較分析をおこなうことで、潜在的なハイパフォーマーの発掘や人材育成への示唆が得られます。分析結果は人材育成や人材配置の際に指標とすることができ、みんなが納得できるような指標となります」

ペルソナ分析機能には、人事業務に特化したAIエンジン「HaRi」が採用されている。「HaRi」は先にリリース済みの、企業の採用活動を支援する『AI優先度診断サービス (PRaiO)』の開発の中で三菱総合研究所が作り出した。採用に関わる実務を通じて収集したデータに対し、実績のあるAIアルゴリズムを活用している。

また、「crexta」は人事に寄り添ったシステムであるという観点から、大きな二つの特長を持つと土屋氏は語る。

一つ目の特長は、シンプルかつ直感的なUI(ユーザーインターフェイス)だ。システムにありがちな複雑さをなくし、「選択肢やデータをドラッグ&ドロップできる」「従業員の顔写真一覧を見ることができる」など、感覚的に操作できる設計となっている。各機能も視覚的にイメージできるアウトプットで構成され、誰もがわかりやすく手軽に利用できる。

二つ目の特長は、信頼性・妥当性のあるサーベイだ。「crexta」には、学術機関や専門機関との提携や助言を受けて開発された、人材データ分析のためのサーベイ機能が搭載されている。人事は、信頼性の高いサーベイから集めたデータをもとに信頼性の高い分析結果が得られることで、より適切な人事施策へとつなげることができる。

この「crexta」はすでにテスト導入が進んでおり、利用企業からは「人材の育成や活用の目標に向けて、無理のない操作ができ、効果的なデータが得られた」などの声が聞かれている。講演の最後に土屋氏は、次のような目標を語った。

土屋「私たちの目標は、組織にエンゲージメントを高めるよい循環を生み出し、本当に働きたいと思える組織を増やすことにあります。そのためにも、広くタレントマネジメントシステムが活用されることを願っています」
 

<プロフィール>
比屋根 一雄
株式会社三菱総合研究所 研究理事 AIイノベーション推進室長
1988年入社。第2次AIブームの後、数多くのエキスパートシステムを開発、経済産業省のAIプロジェクトで研究リーダを10年務める。公共ソリューション本部長等を経て、2018年よりAI活用・AI研究開発を主導するAIイノベーション推進室を率いる。またAI・デジタル変革(DX)の調査研究にも携わる。

土屋 裕介
株式会社マイナビ 教育研修事業部 事業開発統括部 統括部長/HR Trend Lab所長
大学卒業後、企画営業として研修やアセスメントセンターなどを多数導入。2013年に株式会社マイナビ入社。マイナビ研修サービスの商品開発責任者として「ムビケーション研修シリーズ」やタレントマネジメントシステムなど人材開発・組織開発をサポートする商材の開発に従事する。18年にHR Trend Labを設立。

<出展元:『日本の人事部「HRカンファレンス2020-春-」開催レポート』より転載>

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