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1on1の進め方とは?組織に与える効果と導入方法、運用時の注意点を紹介

2021年07月09日更新

ビジネス環境や働き方が変化している現代において、上司やリーダーには、マネジメント手法の見直しが求められています。メンバーの多様性に対処すべく、それぞれの事情や個性を考慮したうえで、パフォーマンスを発揮してもらう方法を考えなくてはなりません。

そのような状況下で注目されているのが、メンバーとのコミュニケーション頻度を高める「1on1」です。1on1は、ここ数年で急激に話題となっており、自社への導入に興味をお持ちの経営者や人事担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。1on1は組織にどのような効果を与えるのか? 導入するためにはどのような準備が必要なのか? 1on1に関する基本的な疑問にお答えします。

目次 【表示】

1on1とは?

1on1とは、上司と部下が二人きりで対話するミーティングのことです。部下が日々感じていることや上司に伝えておきたいことを伝えるなど、上司とコミュニケーションする場として活用されます。業務に関してうまくできたことや失敗したこと、仕事上の悩みなどを上司と共有します。

1on1での雑談をきっかけに業務に関する報・連・相もしやすくなる効果もあります。組織の規模や体制によっては、役職をもたないリーダーの立場にある社員が、チームメンバーとの間で実施するケースもあります。

1on1は、上司視点で部下の評価を伝える「評価面談」とは別物であるという認識が必要です。1on1を実施する目的は、上司が部下の求めるサポートをすることにあります。日々のコミュニケーションでは、目の前の業務に関する細かな確認や、目標達成に向けた進捗状況ばかりに気を取られがちです。そこで1on1の時間を設けることで、業務の進捗や成果から一歩離れた視点で、部下の状況を把握できます。

近年、1on1が必要とされている背景には、従業員を取り巻く環境が多様化・複雑化していることがあります。子育てや介護といった個人的事情、仕事に対する考え方の変化、メンタルヘルスの課題などがその一例です。現代のマネジメントには、より個人に寄り添ったコミュニケーションが求められているのです。

1on1のやり方

1on1は、定期的に継続して実施することが大切です。2週間に1回程度の頻度で実施している組織が多くみられますが、部下の人数が多いとなかなか難しい場合もあるかもしれません。それでも、最低月に1回は実施するのがおすすめです。1か月以上経過してしまうと、部下の状況が大きく変わり、タイムリーな情報をキャッチできなくなるためです。

1回の1on1にかける時間は30分程度が目安ですが、部下の状況によっては時間を長めにとるべきタイミングもあるため、臨機応変に対応します。

1on1を実施する前と、実施後の手順は、下記の通りです。1on1で中心となって話すのは部下ですが、時間の確保や調整は、上司主体で実施するようにしてください。そうすることで、部下は「上司が自分のために時間をとってくれている」安心感から、よりリラックスして話せる効果を得られます。

1.日程を調整する(事前に数回先まで調整しておくとよい)
2.他の人から話の内容を聞かれないよう、個室を確保する
3.上司は、話題に上る可能性がある情報を事前に収集しておく
4.1on1を実施する
5.対話の最後に、次回までにやるべきことや課題をまとめる
6.上司は、部下が話した内容を記録に取り、他の人に見られないよう保管する

1on1を実施する時、毎回共通して必要なのは、冒頭でテーマ・目的・ゴールなどを設定することです。その後は「部下が話したいこと」を話してもらうことを基本姿勢にして対応します。1on1の主役はあくまでも部下であることを忘れないようにしましょう。1on1でどのようなことを話せばよいのか、いくつかの具体例をご紹介します。

・業務上の成功体験/失敗体験を通じて、その要因分析や今後の目標を確認する
・現在の仕事に対して感じているやりがいや課題
・将来どのような仕事をしたいと考えているのか
・上司からの支援には、どのようなことを望んでいるか

1on1導入による組織への効果

上司・リーダーの立場からみた効果

上司・リーダーの立場からは、部下の困りごとをじっくりと聴けるため、表面上の問題だけではなく背景まで具体的に把握できるという効果があります。2週間に1回という短いスパンで1on1を実施し、状況を把握することにより、問題が大きくなる前に芽を摘むことができるのも大きなメリットです。

また回数を重ねるごとに、その部下が「どのような仕事に前向きに取り組めるのか」など、モチベーション向上のポイントもわかるようになり、業務を任せる際にも有益な情報として活用できます。このように、必要なタイミングで必要なサポートを継続していくことで、部下との間に信頼関係が築かれ、日々のコミュニケーションも円滑になるという効果が生まれます。

部下・メンバーの立場からみた効果

部下・メンバーにとっては、上司に伝えたいことを伝えられるタイミングが用意されていること自体が一つのメリットになります。業務上の支援に限らず、プライベートとの両立も含めた必要な支援も適切なタイミングで受けられる安心感は大きいです。

また、上司という第三者からフィードバックを受けることで、自分の強みと弱みの双方を客観視することができます。自身が取り組むべき課題が明確になったり、今後成長していくための道筋が見えたりもするでしょう。

組織・企業にとっての効果

1on1を通じて各社員の課題と必要な対応が明確になることで、社員の成長が加速していきます。企業全体にその流れが波及することで、生産性の向上や企業としての成長も見込めます。上司と部下、リーダーとメンバー間のコミュニケーションが円滑になることで、従業員エンゲージメントが向上し、離職率の低下といった副次的な効果も期待できます。

1on1導入に向けて準備するポイント

1on1導入の目的を明確にする

1on1の導入を成功させるには、経営層や人事部の責任者が本気で取り組む姿勢を示すことが不可欠です。「他社が実施しているから」といった安易な理由で導入するのではなく、「組織としてどんな姿を目指すのか」、「そのために1on1がどのような役割を果たすのか」といった目的を明確にすることから始めましょう。

社員の理解を得る

社員に対して、「1on1を導入することでどのような効果が期待できるのか」、「社員にとってどのようなメリットがあるのか」などを丁寧に説明します。

とくに上司の立場からすると、「ただでさえ忙しいのに、一人ひとりと話す時間なんて取れない」、「すでに日常的なコミュニケーションがとれているから不要」といった意見がでる可能性もあります。そのような意見にも真摯に向き合い、マネジメントの在り方などを丁寧に伝えていく必要があります。スムーズな導入のためには、経営層や人事部の責任者から直接1on1導入への思いを伝えていくことも重要です。

社員向けマニュアルを整備する

いざ1on1を実施しようと思っても、1on1のやり方が理解されていないと、ただの雑談の場になってしまう可能性があります。しっかりと効果を発揮するためには、マニュアルの整備が重要です。マニュアルは、上司に向けたものと部下に向けたものに分けて作成すると、それぞれの立場で必要な対応を理解しやすくなります。

上司の「聴くスキル」を向上する

1on1導入の肝となるのが、上司の「聴くスキル」です。実は、部下が本音を話せる環境作りや言葉がけは、簡単そうに見えて簡単ではありません。普段、上司として業務を遂行しているときとは異なるコミュニケーション方法をとる必要があるのです。

具体的には、観察力・傾聴力・承認力をベースとした「コーチング」「ティーチング」「フィードバック」といったスキルが必要になります。対応する上司によって効果にムラがでないよう、ロールプレイなどを交えた研修を実施することもおすすめです。

支援体制を検討する

はじめての1on1導入は、上司にとっても不安が大きいため、相談に応じられる体制を整えることが大切です。1on1の効果的なやり方は、社風や業務の特色によって異なるため、実際に導入してみて課題や改善点が挙がったら随時更新していく柔軟性も必要です。

1on1運用時の注意点

最後に、1on1を実施するうえで、上司がとくに注意したい内容をいくつかお伝えします。

上司は部下から求められたサポートには、なんらかの対応を取る

もっとも避けるべきなのは、1on1を実施しただけで満足してしまうことです。せっかく部下から意見や要望を聞き取っても、それに対してなにも対処されないと逆に信頼関係を壊す結果になってしまいます。さまざまな事情により要望に応えるのが難しい場合にも、必ず理由と合わせて真摯に伝えるようにしましょう。

1on1の中で聴いた個人的な内容を、安易に口外しない

1on1では、業務上の話以外のプライベートな話題にも話が及ぶ可能性が大いにあります。部下が安心して話せる場だと感じられるためにも、1on1の場で聴いたことは安易に口外しない旨を、しっかりと明示するとともに順守するようにしましょう。

上司は必ず1on1のログを取る

1on1は、一度きりの実施では意味をなさず、毎回の積み重ねが重要です。前回までの内容を踏まえた対話をすることが不可欠ですので、上司は話した内容や次回までの課題を必ず記録します。独自に記録用のシートを作成し、管理するのも有用です。

まとめ

1on1は、導入することで上司・部下・組織それぞれにメリットがある仕組みです。しかし、上司が部下への接し方や言葉がけを誤ると、逆効果になる可能性もあります。社員に、導入する目的や意味、期待される効果を丁寧に伝えることが第一歩です。1on1は一朝一夕に効果が表れるものではありません。1回や2回実施しただけで「意味がなかった」と判断されることのないよう、経営層や人事担当者が主体となって、定着まで継続的にサポートすることが不可欠です。

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