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人材評価手法の一つ「アセスメントセンター」とは?実施の流れやメリット

2020年01月23日更新

管理職(マネージャー)の能力開発などで用いられるアセスメントセンターを重要視する企業が増えてきました。アセスメントセンターはマネジメント能力の客観的な評価や、管理職としてのあるべき姿を正しく理解するための取り組みです。企業を取り巻く環境が変化する中、ますます重要性を増している管理職のマネジメント能力向上。管理職のマネジメント能力向上のために、有効な手法のひとつとされるアセスメントセンターの意味や実施の流れ、メリットを紹介します。

目次 【表示】

アセスメントセンターの意味は

マネジメント能力を高める手法

アセスメントセンターとは、管理職やその候補者などを受講対象としてマネジメントの実践的な能力を公平に評価する手段を指します。

具体的には、研修などで実際の職務を想定した演習(ビジネスシミュレーション)を実施。演習中の受講生の行動や言動などを、アセッサーと呼ばれる評価を専門とする人が管理職として必要な能力や条件を満たしているかの判断や、啓発点の抽出などをおこないます。

シミュレーションからの客観的な評価をおこなうことで、管理職に期待される役割や能力、その期待についての現状や課題が明確になります。

日本では一般的に研修を指す

アセスメントセンターの歴史は古く、1930年代にドイツの心理学者が軍の士官登用に開発したという説や、第2次世界大戦中のアメリカでスパイの選抜、養成に使われたという説もあります。民間企業への定着は第二次世界大戦後からで、アメリカ最大の通信会社、AT&T社がプログラムを導入。マネジメント職を育成する手法として一般的になりました。

アセスメントはもともと、環境への影響度の評価や税額決定のための評価を指す言葉。ビジネスシーンでヒューマン・アセスメントという場合は、企業が従業員に対して職務の適性に対する事前査定、または能力や勤務評定をおこなうことを差します。日本では研修の中で数種のエクササイズを課し、そのプロセスを観察することによって職務適性や管理能力を評価することを指す場合が多いようです(※1)

管理職の昇格試験にも利用

アセスメントセンターは研修のほか、マネジメント能力の客観的な評価を可能とする特徴から昇格試験にも活用されています。とくに多いのが課長などの中級管理職が対象のケース。課長クラスは将来の会社を担う期待人材でもあり、適正な評価や課題発見の精度を高めるために、アセスメントセンターは積極的に利用されているようです。部長以上の上級管理職の研修にも使われる場合もあり、人材採用や人事異動、人材育成などのシーンでも用いられています。

アセスメントセンター実施の流れは

アセスメントセンター実施の一般的な流れを紹介します。能力要件や演習、評価項目の設定から始まり、実施後は結果検証や人材選抜をおこなうことになります。

①ディメンション(評価項目)を設定する

アセスメントセンターを導入する際は、まず「ディメンション」を設定します。ディメンションとはアセスメントセンターを実施する上での評価項目のこと。これはアセスメントセンター実施において核となるものです。設定にあたっては、管理職などの候補者が実際の職務に就いた時、どのような能力が求められるのか明確にしておく必要があります

②演習(ビジネスシミュレーション)を設計する

ディメンションに沿って、演習の内容を決めていきます。インバスケット演習やグループ討議、部下面談など、実際の職務で遭遇するような場面を想定してシミュレーションをつくります。この際、求めるスキルが行動や言動に表れやすいシチュエーションづくりや、アセッサーの認識に左右されるようなものを避け誰もが公平に評価できるディメンションづくりも、大切なポイントです。

③演習(ビジネスシミュレーション)を実施する

研修や昇格試験などで、ビジネスシミュレーションを実施します。シミュレーションでの管理職やその候補者である受講生の行動や言動を、アセッサー(評価者)が人材要件やディメンションと照らし合わせながら評価します。

④結果検証・人材選抜をおこなう

演習終了後はアセッサーが結果を検証し、受講生の強みと弱みを抽出してフィードバック。アセスメントセンターを研修に活用した場合は受検者の能力開発に役立てます。受講生はフィードバック内容について上司と面談するなどして、通信教育やeラーニングを受講などの課題改善を目指すプログラムをこなしていくことになります。昇格試験に活用した場合、アセッサーは結果をふまえ、該当する職務にふさわしい人物を選抜します。

アセスメントセンターのメリットは

アセスメントセンターの実施によって、受講生(管理職やその候補者)は自身に期待される行動を理解しやすく、かつ自己啓発課題も明確になります。受講生は同じ演習を実施するため、他の受講生や自身を比較することで「気づき」を得ることもできるでしょう。評価にも公平性があるアセスメントセンターのメリットはたくさんあります。

能力開発につながる

アセスメントセンターを通して受講生は、組織の問題を解決するためのプロセスや自身に求められる能力や行動を体験的に学習できます。グループ討議や部下面談など、他者と接するシミュレーションでは自らの気づきを得たり、アセッサーからのフィードバックで自身のあるべき姿の再確認もあるはず。期待の人材が自己啓発に向けて、さらに積極的になる期待が高まります。

評価が客観的で公平になる

アセスメントセンターは評価の実施を第三者(アセッサー)が行い、同一の環境下と同一の評価項目にもとづいているため、公平性と客観性を担保することができます。また受講生の言動や行動は、複数のアセッサーでチェックするので、評価の信頼性や妥当性も高まり、受講生にとっては納得感を得やすいものになるでしょう。

今後の活躍を予測しやすい

アセスメントセンターを実施せずに、マネジメントの経験がない人を管理職に昇格させたり、採用したりする場合、候補者がどのくらいの能力を持っているかは推測に頼ることがほとんどとなります。その点アセスメントセンターは、候補者が管理職として働くという想定で演習がおこなわれるため、候補者の現時点の能力が把握しやすく、将来の活躍も予測できます。適材適所の人材登用を目指す上でも、アセスメントセンターの実施はメリットがあると言えるでしょう。

アセスメントセンターを成功させるには

アセスメントセンターをよりよく活用するためには下準備が大切。ディメンション(評価項目)や演習(ビジネスシミュレーション)の設計や、アセッサー間のディメンションの認識合わせが重要になってきます。

求めるスキルを明確に

アセスメントセンターの精度を高める重要なポイントは、受講生に求めるスキルを明確にすることです。これから会社の中枢を担っていく管理職やその候補者に求めたいものを意識し、ディメンションや演習をしっかりと設計しましょう。求めるスキルは企業によって違いもありますが、例としては積極性や巧話力などのヒューマンスキル、計画性や意思決定力といったコンセプチェアルスキル、ストレス耐性や完遂志向などのビジネススタンスなどが挙げられます。

アセッサー(評価者)の訓練が必要

アセッサーにあたる人材は専門的な知識を持ち、評価者トレーニングを受けた人が複数人であたるのが効果的です。アセスメントセンターの実施にあたっては、評価や判断にバラつきが出ないよう、多岐に渡るディメンションなど評価や判断に関する認識は事前にそろえておくことも大切なポイント。企業内で客観的で適切な評価が可能なアセッサーを育成するには相当な時間を要するので、人材サービス会社や専門家など外部にアセッサーを依頼するケースも多いようです。

受講対象者が納得できる風土をつくる

アセスメントセンターの受講案内を受け取った受講対象者の中には、昇進や昇格への人材選別などと受け取り、不安感を持つ人もいるかもしれません。それでもアセスメントセンターは第三者の客観的な評価が判断材料となるので、誰にも公平で受講者には新しい気づきをもたらします。自らの強みや弱みを知り、能力開発に結びつけることがいかに大事か、社内でメッセージを送り伝えることが重要でしょう。アセスメントセンターが単なる合否判定のような誤解を解き、対象者が納得し、安心して受講できる風土づくりが必要です。

アセスメントセンターは有能な管理職を生む

アセスメントセンターをうまく活用できれば、管理職やその候補者のマネジメント能力向上・公平で客観的な評価による適切な人材配置の実現が見込めます。ディメンション設定などの土台をしっかりと築き、受講した対象者が積極的に能力開発に取り組む風土をつくれば、将来は輝きを放つ管理職が、社内に多数存在しているかもしれません。

※1 「ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典」

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