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裁量労働制とは?メリットや残業代の仕組み、導入方法を徹底解説

2026年09月02日更新

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裁量労働制は、みなし労働時間制の一種で、労働時間ではなく成果に対して報酬を支払う制度です。時間に縛られない働き方を促し、企業の生産性向上を目的としています。この記事では、裁量労働制の基本からメリット、導入手順、運用のポイントについて解説します。適正に制度を運用し、裁量労働制の効果を最大限に得られるようにしましょう。

目次 【表示】

裁量労働制とは?基本的な意味と目的

はじめに、裁量労働制の定義と、なぜ柔軟な働き方が求められているのか、制度の目的を解説します。

裁量労働制とは

裁量労働制は、実際の労働時間にかかわらず、事前に労使間で定めた時間を労働時間とみなし、賃金を支払う「みなし労働時間制」の1つです。

一般的な制度では、タイムカードなどの記録にもとづき給与を支払いますが、裁量労働制は業務の遂行方法や時間配分を労働者に委ねる点が特徴です。そのため、実労働時間の長短にかかわらず、あらかじめ決めた時間は働いたものとして給与が支払われます。

なお、裁量労働制が適用される業務は法令によって定められています。

裁量労働制の目的

裁量労働制の主な目的は、時間に縛られない働き方を促し、企業の生産性を高めることです。専門性の高い業務では、1日8時間・週40時間という法定労働時間の制約が効率を妨げるケースがあります。

そうした職種に対し、時間配分を労働者自身に任せることで、成果に直結する働き方を実現し、企業の競争力を高めることが期待されます。

裁量労働制の対象となる2つの業務形態

裁量労働制には、対象となる業務の性質に応じて大きく分けて2つの形態が存在します。

専門業務型裁量労働制

専門業務型裁量労働制は、業務の性質上、遂行方法を労働者の裁量に委ねる必要がある特定の職種に適用されます。厚生労働省が指定する20職種(2026年6月時点)が対象で、導入には、対象となる業務の要件を満たし、労使協定などの法的手続きをおこなう必要があります。どの企業も自由に導入できるわけではありません。

具体的な職種は、新商品や新技術の研究開発、情報処理システムの分析や設計、新聞の取材・編集、デザイナー、大学における教授研究の業務、弁護士、建築士、税理士、公認会計士、銀行や証券会社におけるM&Aのアドバイザー業務などが該当します。

企画業務型裁量労働制

企画業務型裁量労働制は、企業の事業運営の中枢に関わる重要な業務を対象とする制度です。専門業務型とは異なり、特定の職種ではなく業務の性質によって判断されます。

具体的には、経営企画や人事の企画立案、広報の戦略立案など、事業運営に関する事項の「企画・立案・調査・分析」をおこなう業務が該当し、以下の4つの要件をすべて満たす業務が対象となります。

対象業務の要件

  • ●事業の運営に関する事項についての業務であること
  • ●企画、立案、調査及び分析の業務であること
  • ●当該業務の性質上これを適切に遂行するにはその業務遂行の方法を大幅に労働者の
    裁量に委ねる必要がある業務であること
  • ●当該業務を遂行する手段及び時間配分の決定などに関し、使用者が具体的な指示をしな
    いこととする業務であること

対象者は柔軟に時間配分をおこないながら、高度な頭脳労働に専念することが求められます。

裁量労働制のメリット・デメリット

企業側のメリット・デメリット

企業側は、労働時間ではなく成果にもとづく評価へ転換できるようになります。また、みなし労働時間によって人件費の予測が立てやすくなり、予算管理が容易になるほか、優秀な人材が実力を発揮しやすい柔軟な職場環境の提供も可能です。柔軟な働き方を実現できることで多様な人材の確保が期待でき、採用競争力の強化にも繋がるでしょう。

一方で、労働時間管理が疎かになりやすく、長時間労働による健康被害が発生した場合に安全配慮義務違反に問われるリスクがあります。また、企画型裁量労働制においては導入手続きの負担が大きいことも課題です。

労働者側のメリット・デメリット

労働者側は、業務の時間配分や進め方を自ら決定できるため、効率的に仕事に取り組むことができ、生産性を高めることが期待できます。また、仕事とプライベートのバランスも保ちやすいでしょう。

しかし、業務量が過大になると、みなし労働時間を超えて働いても給与に反映されず、不満を抱く可能性も。制度を成功させるには、企業による適切な業務量設定と、労働者の高い自己管理能力の双方が不可欠です。

裁量労働制の残業代と労働時間の仕組み

裁量労働制は、「残業代が出ない」と誤解されやすいですが、以下の2点では支払い義務が生じます。

みなし労働時間が法定労働時間を超える場合

労使間で定めたみなし労働時間が、法定労働時間である「1日8時間・週40時間」を超える場合、超過分に対しては法定労働時間外労働となり、残業代の支払い義務が生じます。

たとえば、みなし労働時間を1日9時間とするなら、毎日1時間分の残業代が発生します。この運用をおこなうには、36協定の締結と届出が必要です。一方、みなし労働時間を8時間以内に設定していれば、実労働が10時間でも原則残業代の支払いは不要です。ただし、みなし労働時間と実労働時間の乖離が大きいと、労働者の健康リスクや不満が生じる恐れがあります。

深夜・休日労働をした場合

みなし労働時間の枠内であっても、深夜や休日に業務をおこなった場合は、別途残業代の支払いが必要です。

  • ●深夜労働(22時~翌5時)
  • ●法定休日労働(法定休日:週1日または4週で4日以上)

なお、振替休日を事前に指定している場合には、休日割増賃金は発生しませんが、所定休日に仕事をした場合は、法定労働時間を超えた分に時間外労働としての割増賃金が発生します。

裁量労働制は働く時間を自由に選べる制度ですが、健康維持の観点から夜間や休日の労働については厳密な管理が必要です。企業側は出退勤記録を適切に管理し、労働者側も実績を正確に記録しておくことが大切です。

裁量労働制と他の労働時間制度との違い

ここでは、裁量労働制と似たような柔軟な働き方を実現する、他の労働時間制度との違いを解説します。

フレックスタイム制との違い

フレックスタイム制は、あらかじめ定められた総労働時間の範囲内で、労働者が始業・終業時刻を自由に決定できる制度です。大きな違いは、実労働時間で給与を計算するか否かです。

フレックスタイム制は、働く時間帯の自由度は高いものの、労働時間は厳格に管理され、総労働時間を超えた分には残業代が発生します。対して裁量労働制では、実労働時間にかかわらずあらかじめ定めた時間を働いたとみなし、仕事の進め方そのものに裁量を持たせる点が特徴です。

変形時間労働制との違い

変形時間労働制は、一定期間の法的労働時間を守ることを前提に、週・月・年単位で労働時間を調整できる制度です。季節性があったり繁忙期と閑散期の差が大きかったりする業務に適しています。企業が勤務時間をあらかじめ配分する点が裁量労働制と異なります。

高度プロフェッショナル制度との違い

高度プロフェッショナル制度は、年収1,075万円以上で高度な専門知識を持つ労働者を対象にした制度です。裁量労働制と同じく、対象業務の要件が定められています。

裁量労働制との違いは、労働時間や休憩、深夜、休日に関する規定が適用されない点にあります。裁量労働制は、みなし労働時間に応じて深夜や休日の割増賃金は支払われますが、高度プロフェッショナル制度は、これらの割増賃金が発生しません。より完全に成果のみで評価される、専門性の高い仕組みです。

裁量労働制を適法に導入するための手順

複雑な要件を満たし、適法かつスムーズに裁量労働制を導入するための具体的なステップを解説します。

専門業務型裁量労働制の手続きフロー

専門業務型を導入する際の流れを解説します。

  1. 対象職種やみなし労働時間、健康確保措置などの労使協定を、労働者の過半数代表者(または労働組合)と協議し、双方合意の上で締結する
  2. 労働契約や就業規則などを整備し、協定届を所轄労働基準監督署に届け出る
  3. 労働者本人の同意を得る
  4. 制度を実施する

労働時間の状況や健康・福祉確保措置の実施状況、同意および同意の撤回の記録は、協定の有効期間中および期間終了後3年間保存が必要です。

企画業務型裁量労働制の手続きフロー

企画業務型の導入は、専門業務型よりも手続きが厳格です。

  1. 使用者と労働者の代表からなる労使委員会を設置する
  2. 労使委員会で、対象業務やみなし労働時間、健康・福祉確保措置など決議すべき事項に、委員の5分の4以上の賛成を得て決議をおこなう
  3. 労働契約や就業規則などを整備し、決議届を所轄労働基準監督署長へ届け出る
  4. 労働者本人の同意を得る
  5. 制度を実施する

専門業務型裁量労働制と同様、労働時間の状況や同意および同意の撤回などの記録は、決議の有効期間中および期間終了後3年間保存が必要です。また、導入後も決議した日から6か月以内に1回、その後は1年に1回労働基準監督署へ定期報告をおこなう義務があります。継続的なモニタリングが求められる点に注意が必要です。

企業が裁量労働制を効果的に運用するポイント

ただ裁量労働制を導入するだけでなく、企業と労働者双方にとってメリットのある運用をおこなうための重要なポイントを紹介します。

業務効率化による長時間労働の防止

裁量労働制を成功させる鍵は、徹底した業務効率化と労働時間の管理です。労働時間で給与を計算しないからといって、業務量を個人の判断に丸投げしてしまうと、従業員の心身のバランスが崩れる恐れがあります。

企業は、不要な会議の削減やデジタルツールの活用を推進すると同時に、勤怠管理システムなどを活用して、実労働時間を正確に把握しましょう。マネージャー層が従業員の業務量を適切に把握し、一部の従業員に負担が偏らないように調整することも大切です。

健康確保措置の一環として、定期的な業務の棚卸しを実施し、一人ひとりが短い時間で最大限の成果を出せるサポート体制を築き上げましょう。

成果に対して正当に報いる人事評価制度の構築

労働時間ではなく、仕事の成果で評価するという制度の趣旨を活かすためには、納得感のある人事評価制度が不可欠です。評価基準が曖昧なままだと、従業員は評価に不公平感を覚え、モチベーションも低下しやすくなります。

どのような成果を出せば評価されるのか、事前に明確な目標設定をおこない、プロセスも含めて多角的に評価する仕組みを構築しましょう。評価結果は、給与や賞与にしっかりと反映させ、成果が正当に報われる環境を作ることが重要です。

労使間で定期的に評価制度の見直しをおこない、働き方と報酬のバランスが適切に保たれているか確認し続けることが、従業員のモチベーション維持に繋がります。

裁量労働制におけるよくある質問

最後に、裁量労働制におけるよくある質問をご紹介します。

36協定の締結が必要なケースは?

一般的に36協定の締結が必要とされるのは、法定労働時間を超えるときや休日労働をおこなう場合です。裁量労働制の場合、みなし労働時間を法定労働時間(1日8時間)超えで設定する場合、深夜・休日労働の可能性がある場合は、通常の労働制と同様に36協定の締結・届出が必要です。

裁量労働制の従業員に「朝9時からの会議」への出席を強制してもいい?

裁量労働制の従業員に対し、業務上必要不可欠な会議への出席を一時的に求めることは許容されます。しかし、裁量労働制は、業務の遂行方法や時間配分を労働者の裁量に委ねる制度です。会社側から細かい時間指定や過度な介入があると、裁量労働制の趣旨に反し、制度が無効になる恐れがあるため注意が必要です。

裁量労働制の仕組みを正しく理解し適切に活用しよう

裁量労働制の基本的な仕組みや残業代の考え方、導入方法について解説しました。みなし労働時間制である裁量労働制は、適法に運用することで企業と労働者の双方に大きなメリットをもたらします。

裁量労働制の効果を引き出すため、まずは対象業務の性質を見極め、労働者が自律的に働ける環境が整っているか確認することから始めましょう。そして、本人の同意や健康・福祉確保措置などを確実におこない、業務効率化を進めることが重要です。制度の形骸化を防ぐための定期的な見直しを怠らず、自社の課題解決や理想の働き方に向け、前向きに制度の活用を検討してみてください。

著者プロフィールHR Trend Lab編集部
タレントマネジメントやエンゲージメントなどの最新トレンドから、組織や人事にまつわる基本知識までマイナビ独自の視点でお届けいたします。
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