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心理的安全性とは?チームや組織に与える効果や高める方法を解説

2020年10月30日更新

チームや組織内の人間関係を示すキーワードとして注目されている「心理的安全性」。組織行動学の研究者・エイミー・エドモンドソン教授が1999年に論文「Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams」で提唱した心理学用語「psychological safety」が訳された言葉です。

「人の心を傷つけずに安心して過ごせる状態」のように解釈されがちですが、実は本当の意味は少し異なります。心理的安全性を高めることで、チームや組織にはどのような効果があるのでしょうか? また心理的安全性を高めるためには、どのような方法があるのでしょうか? チームで仕事をするすべての人に知っておいていただきたい、心理的安全性の基本を解説します。

目次

心理的安全性とは?どんな状態のこと?

エドモンドソン教授によると、心理的安全性が高いということは「チームにおいて、『他のメンバーが自分の発言を拒絶したり、罰をあたえたりしない』という確信を持っている状態。対人関係にリスクのある行動をとったとしても、メンバーが互いに安心感を共有できている状態」と定義されています。

端的に言えば、チームのメンバー全員が臆することなく発言・行動できる状態を指します。「こんなことを言ったら否定されるのでは」「能力が低いと思われるのでは」といった不安や恐怖を感じずに、仕事に取り組める状態とも言えます。

その状態をつくるために重要な意味を持つのが、メンバー同士の関係性です。心理的安全性は、単なる良好な人間関係や、問題が起こらない状態を示すわけではありません。問題や課題も含めてなんでも言い合え、一人ひとりが自分をさらけ出せる関係を築くことが必要なのです。

心理的安全性が高まることによる効果

チームメンバーにとっての効果

チームを構成するメンバーにとって、心理的安全性が高まることによるもっとも大きな効果は、コミュニケーションに関わる余計なストレスを感じることなく仕事ができることです。

チームで仕事を進める上で、メンバー間の対話は欠かせません。心理的安全性が高いチームにおいては、メンバーに話しかけるときに「いま話しかけても大丈夫かな」「こんなことを聞いてもいいのかな」といった心配をする必要がなくなります。すると、対話を通じて協力しながら業務を進めるのが日常となるため、パフォーマンスの向上につながるのです。

メンバーは、自身の存在意義を認識することによって、チームや組織への愛着を持ち、精神的に安定した状態で仕事に取り組むことができます。

組織にとっての効果

メンバーの心理的安全性を高めることは、組織にとっても利点があります。メンバー間のコミュニケーションが活発で意義あるものになることで、チームの課題を早期に発見・解決できます。

たとえば、顧客からクレームを受けたとしましょう。心理的安全性の高い組織では、クレームを受けた本人を責めることはなく、上司や同僚が一丸となってカバーします。しかし、心理的安全性がない組織ではクレームを受けたとしても「周囲に相談しづらい」と一人で抱え込んでしまうかもしれません。営業担当者の方は自信を持って営業活動をできなくなり、ストレスフルな状態に陥ります。結果的に組織全体の売上が下がり、生産性を下げてしまう恐れもあります。

心理的安全性の高い組織は、解決に向けた前向きな議論が生まれやすく、自発的に発展していく特性があります。発展する組織には、やりがいや愛着を持つメンバーが増え、退職率の低下にもつながるでしょう。組織の雰囲気がポジティブだと、入社希望者が増加し、優秀な人材を確保しやすくなる好循環も生まれるのです。

心理的安全性が低いとどうなるか

エドモンドソン教授は、心理的安全性が低いことで引き起こる4つの不安と、その不安をもととする行動の特徴にも言及しています。4つの不安とは、「無知だと思われる不安」、「無能だと思われる不安」、「邪魔をしていると思われる不安」、「ネガティブだと思われる不安」です。

「無知だと思われる不安」があると、メンバーはわからないことを質問・相談できなくなります。それによって、対応の遅れやミスにつながる可能性が高まります。

「無能だと思われる不安」があると、メンバーはミスを報告せずに隠すようになります。それによって問題が隠蔽され、大きなトラブルに発展するまで周囲が気付けない可能性があります。

「邪魔をしていると思われる不安」があると、メンバーは会議などの場で議論が長引いたり脱線したりすることへの批判を恐れて、自発的な発言をしなくなります。それによって、新たなアイデアや有意義な意見が出る機会を逃す可能性があります。

「ネガティブだと思われる不安」があると、メンバー間で指摘や否定を避けるようになります。それによって、改善目的の指摘すらされなくなり、抱える課題が解決されないままになる可能性があります。

チームの心理的安全性を測るには

メンバー側の視点から測る7つの質問

心理的安全性の度合いを測る手法として、エドモンドソン教授が提唱している7つの質問をご紹介します。これらの質問に対してポジティブな回答をするメンバーが多いほど、心理的安全性が高いチームと評価できます。この7つの質問は、アンケートなどの形で定期的に実施することで、メンバーの置かれている状況の変化を把握することもできます。

質問①:「チームの中でミスをすると、たいてい非難される」
質問②:「チームのメンバーの間で、課題や難しい問題を指摘し合える」
質問③:「チームのメンバーは、自分と異なることを理由に、他者を拒絶することがある」
質問④:「チームに対してリスクのある行動を取っても安全である」
質問⑤:「チームの他のメンバーに助けを求めることは難しい」
質問⑥:「チームメンバーは誰も、他人の仕事を意図的におとしめるような行動をしない」
質問⑦:「チームメンバーと一緒に仕事をするとき、自分のスキルと才能が尊重され、活かされていると感じる」

①③⑤については、度合いが低い(Noが多い)ほどポジティブと捉えられる設問、②④⑥⑦については度合いが高い(Yesが多い)ほど、ポジティブと捉えられる設問です。

リーダーの視点からチームの状態を測る3つのサイン

エドモンドソン教授は、チームの心理的安全性が高い場合に現れる3つのサインについても言及しています。リーダーの立場からは、チームの状態をセルフチェックするポイントとして、これらの視点を意識することをおすすめします。

サイン①:チームメンバーが次のような言葉を口にする。
「私たちはみな互いに尊敬し合っている」
「誰かがあることを気掛かりに思うと、みんなでそれに取り組むことができる」
「グループの誰もが、プロジェクトに対して責任を持っている」
「職場で仮面をかぶる必要がない。ありのままの自分でいられる」
サイン②:メンバーが、成功だけでなく、失敗や問題についても話をする。
サイン③:職場が笑いとユーモアを促しているように思われる。

心理的安全性を高める方法

心理的安全性を高めるための方策としては、対話の機会を増やすための「1on1」、主体的に業務へ取り組むための目標管理手法である「OKR」、チームの協力やポジティブな反応を促すための「ピアボーナス」といった取り組みをしている企業もあるようです。心理的安全性が低い場合に陥りがちな状況を回避するために、下記のようなポイントを意識し、チームの心理的安全性を高めましょう。

・メンバーの発言機会を均等にすることで、意見を伝える恐怖を払拭する
・メンバー間の協力を促し、全員で一人ひとりをサポートし合う雰囲気づくりをする
・課題や問題には、チーム全員がポジティブな反応を示すようにする
・メンバーの発言や行動を否定したり批判したりせずに、存在自体を尊重する
・役職や年齢など、組織構造を取り払った対話の機会を増やす
・評価方法を変える(ミスによる減点方式ではなく、成果に対する加点方式へ)

上記の対応がうまく機能しない場合は、メンバー間の相性に課題がある可能性も考えられるため、最終的にはチーム編成の変更を検討すべきケースもあります。

心理的安全性の向上に取り組む際の注意点

心理的安全性の向上に取り組むのは、決して「居心地のよいぬるま湯」をつくるためではありません。「心理的安全性がある=ラクをできる」と捉えられないよう注意しましょう。そのためには、各メンバーに適切な責任や目標を与えたり、チームが一丸となって目標達成を目指したりするような雰囲気づくりも、並行して実施することが不可欠です。

また上司やリーダーの立場では、「優しいだけの人」にならないよう注意します。組織やチームが進むべき方向に向かえるよう、メンバーへの指導や助言をする役割があることに変わりはありません。上司やリーダーの立場から、心理的安全性の向上のために取り組めることとしては、メンバーの意思や意図を否定せずに尊重し、意見を述べやすい雰囲気をつくることが挙げられます。

まとめ

心理的安全性を高めるためには、「自分自身が職場環境を構成する一員だ」という主体的な意識をメンバー全員に持ってもらうことが大切です。経営層や管理職ばかりが尽力するだけでは、心理的安全性の向上には繋がりません。ストレスが少なくパフォーマンスの高いチームをつくるため、今回ご紹介したような対策を中心として、メンバーの意識改革に取り組みましょう。

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