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なぜコーピングが必要なのか?従業員へコーピングの機会を作る方法も紹介

2021年06月09日更新

仕事や職場環境によってストレスを抱える従業員は少なくはなく、近年では、多くの企業で従業員のメンタルヘルス対策が求められています。そのメンタルヘルス対策の一つが「コーピング」と呼ばれる、従業員が自身でストレスとうまく向き合うことで対処する方法です。
本記事では、コーピングの概要や種類、企業が従業員に対してコーピングの機会を作る方法について解説します。

目次

コーピングとは

コーピングは「(困難なことなどを)うまく処理する・抑える」という意味の「cope」に由来する、心理学用語です。ストレス反応に対処するためにとる行動のことを「ストレスコーピング」と呼びます。

人間は、強いストレスを溜めつづけると、精神疾患をはじめとしたメンタル不調に陥ってしまう可能性があります。そのような中で従業員がコーピングの手法を用いると、ストレスと上手に付き合うことができたり、その影響を排除したりといった対処法を身につけられるようになります。

昨今では、企業で働く従業員のメンタルヘルス対策の一つとしてコーピングが広まりつつあり、職場のストレスマネジメントやメンタルヘルスマネジメントの手法として活用されています。

ストレス反応とストレスによる影響

人間のストレス反応は、心理面、身体面、行動面の3つに分類されます。

心理面のストレス反応:不安や気分の落ち込み、イライラ、意欲の低下など
身体面のストレス反応:寝つきの悪さ、不眠、頭痛、肩こり、腹痛、食欲低下など
行動面のストレス反応:飲酒量や喫煙量の増加、過度な食欲増進、ひきこもり、仕事でのミスの増加など

それぞれのストレス反応は、「ストレッサー」と呼ばれるストレス要因(暑さ、寒さ、公害物質、人間関係など)を人間が認知し、体内で解消しようとする防御反応として機能します。ストレッサーによって過剰なストレスが慢性的にかかると、上記のようにさまざまな悪影響が心身に現れます。

なぜコーピングが求められているのか

厚生労働省が発表した「平成30年 労働安全衛生調査」(※1)によると、『現在の仕事や職業生活に関することで、強いストレスとなっていると感じる事柄がある』と答えた労働者の割合は58.0%という結果となり、多くの労働者が仕事上でストレスを感じていることがわかります。

本調査におけるストレス要因(ストレッサー)の項目をみると「仕事の質・量」が59.4%ともっとも多く、「仕事の失敗、責任の発生等」が34.0%、「対人関係(セクハラ・パワハラを含む)」が31.3%と、業務や職場環境におけるさまざまな事柄がストレス要因として挙げられています。

このようなストレス要因による悪影響は、精神疾患だけではなく、脳梗塞や心筋梗塞などの身体疾患の発症にも影響することが分かっています。仕事に支障が現れてしまうケースや労災認定にまで至るケースなどもあり、職場のストレス要因は従業員の健康や生産性にも悪影響を及ぼすことが考えられます。

そこで「ストレスによる不調を未然に防ぐ」、「不調者を早期発見する」、「不調者に対して復職を支援する」などを含めたメンタルヘルス対策を取り入れる企業が増えています。あわせて、ストレスとうまく付き合っていくためのストレスコーピングの需要も高まっています。

企業にできる従業員のメンタルヘルス対策やそのポイントは、こちらの記事でご紹介しています。
「メンタルヘルス対策とは?企業に必要な4つのケアや取り組み方を紹介」/HR Trend Lab

コーピングの種類

ストレスコーピングにはどのような種類があるのでしょうか? 本項では、アメリカの心理学者であるラザルスとフォークマンが提唱した、「問題焦点型コーピング」と「情動焦点型コーピング」について解説します。

問題焦点型コーピング

問題焦点型コーピングとは、ストレスの要因となっている問題を解決することでストレスを軽減させる方法です。

たとえば、仕事で困難な場面に直面したとき、
・上司や同僚にサポートをお願いする
・勉強をして知識を身につけ解決方法を考える
などが、問題焦点型コーピングとして挙げられます。

また、問題焦点型コーピングには「社会的支援探索型コーピング」と呼ばれる、上司や同僚、家族などに悩みを相談する方法があります。問題を一人で抱え込まないようにすることはストレス軽減に効果的といわれており、親しい人以外にも、精神保健領域の専門家(産業医など)やカウンセラーに悩みを相談することも含まれます。

なんらかの方法によって解決できる問題に対してストレスを感じている場合には、問題焦点型コーピングが有効といえるでしょう。

情動焦点型コーピング

情動焦点型コーピングとは、ストレス要因そのものではなく、ストレス要因に対する自分自身の捉え方に着目してストレスに対処する方法です。

たとえば、仕事がうまくいかないときであれば、以下のような対処方法が考えられます。
・「誰にでも失敗はある」と自分に言い聞かせる
・「今は苦しくても、続けていれば軌道に乗るだろう」と気持ちを切り替える

また、情動焦点型コーピングの一つとして「認知的再評価型コーピング」と呼ばれる、ポジティブシンキングを積極的におこない、物事をポジティブに捉える対処法もあります。仕事でストレスを感じたときに「今回の仕事はうまくいかなかったけれど、失敗を通して成長できた」と、物事をポジティブに捉えることで、ストレスとうまく向き合うのが認知的再評価型コーピングです。

自分では解決できない・時間が経たないと解決しないといった問題に対してストレスを感じているケースでは、情動焦点型コーピングが効果的な対処法といえます。

従業員に対してコーピングの機会を作る方法

企業が従業員に対してストレスコーピングの機会を作るには、どのような方法があるのでしょうか?

ストレスチェック制度の導入

ストレスチェック制度とは、ストレスチェックシートを用いて従業員のストレス度合いを把握する制度のことです。労働安全衛生法が改正された2015年12月より、50人以上の労働者を使用する企業や事業所は、ストレスチェック制度の実施が義務化されています。

厚生労働省の「平成30年労働安全衛生調査」(※1)によると、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所のうち6割以上の事業所では、従業員へのストレスチェックが実施されていることがわかりました。ストレスチェックの実施により、企業は従業員のストレスの状況を把握し、メンタルヘルス不調のリスクが高い従業員には面談やカウンセリングなどの、ストレスコーピングの機会を提供することができます。

ストレスチェック制度についての解説や、実施方法については、こちらの記事で詳しくご紹介します。
「ストレスチェック制度とは?実施方法や注意点のまとめ」/HR Trend Lab

 

メンター制度やカウンセリングなどの支援の導入

企業内にメンター制度や心理カウンセリングなどの制度を導入し、従業員が抱えている悩みを話せるような場を提供することで、ストレスコーピングの機会を作ることへと繋がります。

メンター制度:主に新入社員や中途社員など社歴の浅い社員(メンティー)に対し、相談相手としての先輩社員(メンター)をつけ、メンティーの業務上の悩み相談から精神的なサポートまでをおこなう。とくに社歴の浅い社員は、慣れない職場環境や新しい業務など、さまざまなことに対してストレスを感じやすいと考えられるが、気軽に相談できるメンターがいることで、悩みをそのままにせず対処できる。

1on1:上司と部下の1対1のコミュニケーションを通じて部下のマネジメントをする方法。上司が部下の話や悩みを聞くことで、具体的な解決策を考えることができ、目標達成や部下の成長を促進できる。個別に話をするため、上司と部下の信頼関係が深まることで、職場内での円滑なコミュニケーションにも効果が期待できる。

心理カウンセリング:従業員の悩みに対して、社内や外部機関の公認心理師、産業カウンセラーなどの専門家が、心理学や精神医学の専門知識、技術を用いてサポートする方法。従業員自身が悩みやストレスに対しての理解を深め、ストレスへの対処方法を考える機会としても活用できる。

これらの制度の導入や取り組みは、ストレスコーピングの中でも、とくに問題焦点型コーピングに対して効果を期待できるでしょう。

メンタルヘルス関連の研修・講座の実施

メンタルヘルスに関する知識やストレスコーピングの実践方法などについて、研修や講義を実施して従業員に学習の場を提供することは、従業員自身がストレスとの向き合い方を考えるきっかけになります。

新入社員にストレス反応のセルフケアについての研修を実施したり、管理職向けに、マネジメントの一環として従業員のメンタルヘルスやコーピングについての研修を実施したりすることで、メンタルヘルス対策の重要さを意識してもらうことに繋がるでしょう。

まとめ

ストレスコーピングは、ストレスの影響によるメンタルヘルス不調、身体疾患を未然に防ぐために有効な方法です。企業が従業員のメンタルヘルス対策を検討する際には、ストレスチェック制度やメンタルヘルス研修を導入し、従業員へコーピングの機会を提供してみてはいかがでしょうか。

<出典>
※1. 厚生労働省:平成30年 労働安全衛生調査

一般社員向け、管理職向け、それぞれのメンタルヘルスケアを学習できるプログラム
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