PM理論とは?リーダーシップの4タイプや活用方法を解説

リーダーには、目標達成に向けてチームを動かすことだけでなく、メンバー同士の関係性を良好に保ち、組織をまとめる役割も求められます。
こうしたリーダーに求められる役割を「P機能(目標達成能力)」と「M機能(集団維持能力)」の2つの側面から捉えるのが、PM理論です。P機能とM機能の発揮状況を整理することで、リーダーの強みや課題を整理し、4つのタイプに分類できます。
本記事では、PM理論の基本的な考え方や、4つのリーダーシップタイプについて解説します。さらに、P機能・M機能を発揮するための具体的な行動や、PM理論をリーダー育成や組織づくりに活用する方法も紹介します。
PM理論とは

PM理論とは、リーダーの行動を「Performance(目標達成能力)」と「Maintenance(集団維持能力)」という2つの機能から捉えるリーダーシップ理論です。Performanceの頭文字である「P」と、Maintenanceの頭文字である「M」から「PM理論」と呼ばれています。
PM理論は、日本の社会心理学者である三隅二不二(みすみ・じゅうじ)氏によって提唱されました。
Performance(目標達成能力)は「P機能」と呼ばれ、目標を設定したり計画を立案したりしながら、メンバーへ指示を出し、組織として目標を達成するための能力を指します。一方、Maintenance(集団維持能力)は「M機能」と呼ばれ、組織内のメンバー同士の人間関係を良好に保ち、集団をまとめ上げていく能力を指します。
PM理論では、P機能とM機能それぞれの強弱を、アルファベットの大文字(強い)と小文字(弱い)で表します。両者を組み合わせることで、リーダーシップを「PM型」「Pm型」「pM型」「pm型」の4つに分類できます。

このように、リーダーシップを目標達成能力と集団維持能力という2つの側面から捉えることで、リーダーの資質や現状の課題を把握・分析できる点が、PM理論の大きな特徴です。4つのタイプの中でも、目標達成能力と集団維持能力の両方が高い「PM型」が、リーダーが目指すべき理想的なリーダー像とされています。
PM理論におけるP機能とM機能

PM理論では、リーダーシップを構成する要素として、「P機能」と「M機能」という2つの機能が定義されています。それぞれの機能について詳しく見ていきましょう。
P機能(目標達成能力)とは
P機能とは、組織やチームが掲げた目標を達成するために発揮される機能のことです。目標達成までの道筋を描き、メンバーに役割や指示を与えながら、具体的な成果へと繋げていく機能を指します。
たとえば、リーダーが「なにを、いつまでに達成するのか」を明確にし、そのために必要な業務を整理してメンバーに割り振ることは、P機能の代表的な働きです。また、計画どおりに業務が進んでいるかを確認し、必要に応じて計画を見なおすこともP機能に含まれます。
【P機能の具体例】
- ●チームとしての達成目標を明確に定める
- ●目標達成に向けた計画を組み立て、メンバーに指示を出す
- ●業務の進み具合をこまめに確認し、遅れがあれば軌道修正する
- ●ルールや納期を守るよう、メンバーに働きかける
これらの行動を通じて、リーダーはチームの方向性を示し、メンバーの行動を目標達成へと導きます。その結果、組織の生産性を高め、成果に繋げていく役割を担います。
ただし、P機能が強いリーダーであっても、目標達成や業務の進捗ばかりを重視するとメンバーに負担がかかったり、人間関係が悪化したりする可能性があります。そのため、目標達成を促すP機能だけでなく、メンバーが継続して力を発揮できる環境を整えるM機能も重要になります。
M機能(集団維持能力)とは
M機能とは、チームやメンバー同士の関係性を良好に保ち、組織がスムーズに機能する状態を維持するための機能です。メンバーが安心して力を発揮できる環境を整え、チームの一体感を保つための機能を指します。
M機能は、単に良好な人間関係を築くことを意味するものではありません。メンバー同士が互いに信頼し、必要なときに協力しながら業務を進められる関係をつくることが重要です。
そのため、メンバーの状態を把握したり、意見の対立を調整したりすることも、M機能を発揮する行動に含まれます。
【M機能の具体例】
- ●メンバーの様子を気にかけ、日頃から声をかける
- ●メンバーが抱える悩みや不満に耳を傾け、必要に応じてフォローする
- ●メンバー同士の意見が食い違った際に、間に入って調整する
- ●風通しのいいコミュニケーションを心がけ、相談しやすい雰囲気づくりに努める
M機能によってチーム内の信頼関係が築かれると、メンバー同士が協力しやすくなり、チームとしての一体感も生まれます。結果として、メンバーが目標達成に向けて継続的に力を発揮しやすくなり、P機能による成果の実現も促されます。
P機能とM機能の両方が重要
上述した通り、P機能とM機能はそれぞれ独立した能力ではなく、互いに支え合う関係にあります。
P機能だけが強いと、目標達成を急ぐあまりメンバーへの負担が大きくなる可能性があります。一方、M機能だけが強い場合は、良好な人間関係を維持できても、目標達成に向けた具体的な行動が不足する可能性があります。
そのため、PM理論では、目標達成に向けてチームを動かすP機能と、メンバーが協力して活動できる状態を維持するM機能の両方が重要だと考えられています。
PM理論によるリーダーシップの4タイプ

PM理論では、P機能とM機能それぞれの強弱を、アルファベットの大文字(強い)と小文字(弱い)で表し両者を組み合わせることで、「PM型」「Pm型」「pM型」「pm型」の4タイプに分類しています。
以下では、それぞれのタイプがどのような特徴を持つのかを解説します。
PM型
PM型は、P機能とM機能の両方が強いリーダーです。目標達成に向けた具体的な計画や戦略を描きながら、メンバー一人ひとりの状況にも目を配ることができます。
チームの方向性を示してメンバーを動かすだけでなく、メンバー同士の信頼関係やチーム内の雰囲気にも配慮できるため、組織を一つにまとめながら、着実に成果へと導きやすい点が特徴です。
PM理論において、P機能とM機能の両方が高いPM型は、理想的なリーダーシップのタイプとされています。
Pm型
Pm型は、P機能が強く、M機能が弱いリーダーです。目標設定や計画立案、進捗管理などに長けており、チームを目標達成に向けて力強く動かせます。
業務の方向性を明確に示し、メンバーに具体的な指示を出せるため、短期間で成果を出すことに強みがあります。とくに、期限が決まったプロジェクトや、迅速な意思決定が求められる場面では、P機能の強さが活かされるでしょう。
一方で、メンバーへの気配りや関係性の維持が不足しやすい点が課題です。目標達成や業務の進捗を優先するあまり、メンバーの悩みや負担を見落とすと、時間の経過とともにチーム内の不満や疲労が蓄積する可能性があります。
pM型
pM型は、M機能が強く、P機能が弱いリーダーです。メンバーとの信頼関係を築くことが得意で、チーム内の人間関係や雰囲気を良好に保てます。また、メンバー同士の協力を促し、チームの一体感を高めることにも長けています。
一方で環境や役割の変化などにより、目標達成に向けた具体的な道筋を示すなど、P機能に関する行動が十分に発揮されない場合があります。メンバーとの関係性を重視するあまり、目標設定や進捗管理、必要な指示などが不十分になると、チームとしての成果に繋がりにくくなる可能性があるでしょう。
pm型
pm型は、P機能とM機能の両方が弱いリーダーです。目標達成に向けた働きかけも、メンバーとの関係づくりも十分に発揮できていない状態といえます。
P機能が弱いと、目標や方針が明確に示されないため、メンバーがなにを目指して行動すればよいのか迷いやすくなります。また、M機能が弱いと、メンバー同士の関係づくりが疎かになり、チーム内のコミュニケーションが不足しやすくなります。
その結果、組織としての方向性が定まらず、成果も人間関係も十分に築けない状態に繋がりやすいのがpm型のリーダーが陥りやすい状態です。
ここまで紹介したPM理論の4タイプは、リーダーの能力を決定づけるものではありません。たとえば、Pm型であればM機能を、pM型であればP機能を意識的に補うことで、リーダーシップのバランスを整えられる可能性があります。
自身のタイプを把握したうえで、不足している機能を意識的に伸ばしていくことが、より効果的なリーダーシップの発揮に繋がります。
PM理論の「P機能」「M機能」を発揮する方法

PM理論における「PM型」のリーダーシップに近づくには、自分に不足している機能を意識し、それぞれの機能を発揮する行動を増やしていくことが重要です。
ここでは、P機能とM機能を発揮するために、リーダーが意識したい具体的な行動を解説します。
P機能を発揮する方法
P機能を発揮するには、組織の目標達成に向けて、業務の方向性を示し、メンバーの行動を促すことが重要です。以下の2点を意識することで、目標達成に向けた組織的な行動を促しやすくなります。
目標と進捗を明確にする
P機能を発揮するには、リーダー自身が組織の上位方針を理解し、自組織で目指す方向性や目標を明確にします。そのうえで、目標達成に必要な行動や進め方をメンバーに共有することで、組織全体が同じ方向を向いて行動できるようになります。
また、定期的に進捗を確認し、課題があれば原因を整理して軌道修正をおこないます。こうした取り組みによって、業務遂行を促し、生産性の向上に繋げられます。
ここで重要なのは目標の高さではなく、「なぜその目標を目指すのか」という背景をリーダー自身が理解し、メンバーにも共有することです。目標の意義に納得できることで、主体的な行動に繋がります。
役割や優先順位を明確にする
目標を共有するだけではなく、「誰がなにを担当するのか」「なにから優先して取り組むのか」を明確にすることも重要です。
役割や責任範囲、業務の優先順位が整理されることで、メンバーは自分の役割を理解しやすくなります。その結果、メンバー一人ひとりの主体的な行動を促せます。
M機能を発揮する行動
以下の2点を意識することで、M機能を発揮する行動を増やすことができます。
メンバーの声に耳を傾け、関係性を築く
1on1やミーティングなどを通じて、メンバーの悩みや意見を把握し、日頃から積極的にコミュニケーションを取ることが大切です。また、メンバー同士の対立が生じた際には、リーダーが調整役となり、良好な関係づくりを支援することも重要です。
また、チームビルディングや社内イベントなど、業務以外でのコミュニケーション機会を設けることも関係構築に役立ちます。
心理的安全性を高める
心理的安全性が高まると、情報共有や意見交換が活発になり、チーム全体のパフォーマンス向上にも繋がります。
意見の違いがあっても頭ごなしに否定せず、建設的な対話を重ねることで、安心して発言できる雰囲気が生まれます。そのためには、特定の人だけが発言する状態を避け、メンバー全員に発言の機会が行き渡るよう配慮することが大切です。また、リーダーがあえて最後に発言することで、メンバーが自由に意見を出しやすくなります。
さらに、リーダー自身が過去の失敗を率直に語り、ミスをした際も原因追及より「次にどう活かすか」に焦点を当てることで、失敗を責めない雰囲気を醸成できます。
PM理論の活用方法

PM理論は、リーダーのタイプを分類するだけでなく、自社のリーダー育成や組織づくりにも活用できます。ここでは、押さえておきたい活用方法を3つ紹介します。
模範となるリーダーをお手本にする
PM理論を活用する際は、自社のリーダー層がP機能とM機能をどのように発揮しているのかを評価・確認することから始めましょう。その結果として、4タイプのうちどのタイプに近いのかを把握し、リーダーごとの強みや課題を整理します。
そのうえで、P機能とM機能をバランスよく発揮しているリーダーの言動を、育成対象者への模範として共有しましょう。たとえば、目標達成に向けた具体的な指示を出しながら、メンバーへの声かけやフォローもおこなっているリーダーがいれば、その行動をモデルケースとして示します。
社内に実在するリーダーの姿を参考にできるため、育成対象者も「なにを、どのように改善すればよいのか」を具体的にイメージしやすくなります。
現任リーダーの課題を把握する
PM理論は、現任リーダーの現状把握や育成計画を検討する際の指標としても活用できます。
たとえば、「チームの成果が思うように上がらない」という課題がある場合、まずはその原因を確認します。KPIや目標が不明確であったり、進捗管理が十分におこなわれていなかったりする場合は、P機能の発揮に課題がある可能性があります。この場合は、目標設定や進捗管理の方法を学ぶといった育成施策が考えられます。
一方で、メンバー間の連携不足や対立・衝突が多い場合は、M機能の発揮状況を確認する必要があります。原因に応じて、1on1の実施やチームビルディングなどを通じて、組織内の関係性を改善する施策を検討しましょう。
このように、表面的な課題だけでなく、その背景にあるP機能・M機能の発揮状況を確認することで、リーダーごとに必要な育成施策を検討しやすくなります。
組織内のコミュニケーション状況を可視化する
PM理論は、個々のリーダーの育成だけでなく、組織全体でP機能・M機能のどちらを強化すべきかを判断する材料としても活用できます。
たとえば、メンバー同士の対立や衝突が目立つ組織では、意識的にM機能を発揮し、1on1やチームビルディングなどを通じて関係構築に注力することが有効です。一方で、日頃のコミュニケーションは良好でも目標達成に向けた成果が思うように上がっていない組織では、P機能を強化し、目標設定や進捗管理の徹底を図ることが求められます。
このように、組織全体の傾向に応じてP機能とM機能のどちらの発揮を促すべきかを見極めることで、研修設計や1on1の運用ルールづくりなど、人事施策の優先順位を検討しやすくなります。
PM理論を理解しリーダーシップの発揮に役立てる

リーダーシップにおけるP機能とM機能の発揮状況を、その強弱に応じて「PM型」「Pm型」「pM型」「pm型」の4タイプに分類したものがPM理論です。
ただし、4タイプへの分類そのものがPM理論の目的ではありません。重要なのは、自身や自社のリーダーがP機能・M機能をどのように発揮しているのかを確認し、強みや課題を把握することです。不足している機能を発揮する行動を意識することで、リーダーシップの改善に繋げられます。
PM理論は、現任リーダーの育成や組織内のコミュニケーション状況の把握にも活用できます。リーダーごとの課題や組織全体の傾向を整理し、1on1やチームビルディング、研修などの施策に反映することで、より効果的な人材育成や組織づくりを目指せるでしょう。

















